■ハイブリッド化にともない「排気量を拡大」した理由とは
スバルは2024年10月17日、クロスオーバーSUV「クロストレック」の新たなラインナップとして「ストロングハイブリッド」モデルを発表しました。
これまでの「e-BOXER」に対し、燃費や動力性能を大幅に向上させたといいますが、どのように進化したのでしょうか。
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噂の「ストロングハイブリッド」を積んだ新型クロストレックがついに姿を現しました。
スバルはこれまでもハイブリッドモデルをラインナップしていましたが、北米の一部地域で販売されたプラグインハイブリッドを除き、マイルドハイブリッドだけの展開でした。
そのため「ハイブリッドの割には燃費がいまひとつ」と感じていた人もいるかもしれません。
しかしもう大丈夫。最高出力160ps・最大トルク209Nmのエンジンに、119.6ps・270Nmと力強いモーター(マイルドハイブリッドとなる現行のe-BOXERは13.6ps・65Nm)を組み合わせ、モーターが担う範囲の大きい“ストロング”なハイブリッドが追加されるのです。
正式発売に先立ってプロトタイプに試乗してきたので、その印象と“意外だったポイント”をお伝えしましょう。
●驚きその1:「2.5リッター」に拡大した排気量
何を隠そう、このハイブリッドシステムは、トヨタの「シリーズパラレル式(旧称:THS)」の技術を活用したもの。
ですが、エンジンはスバルオリジナルもので、したがってエンジン形式はスバルのこだわりである水平対向です。これならスバルファンも安心ですね。
そんな新型クロストレックのストロングハイブリッド車に乗って驚いたのは、加速の良さ。かねてより展開していたマイルドハイブリッド車と加速を比べる明らかに速いのです。
線が太いというか、力強い。0-100km/h(停止状態から時速100キロまで)の全開加速タイムは、現行のe-BOXERに対して2.1秒も短縮。たとえアクセルを全開にしなくても、力強くトルクが立ち上がるので勢いを感じます。
そのうえ“伸び感”も明らかに増しているのがいいですね。
そんな元気のいい加速の理由は、単にモーターが高出力・高トルクになったからだけではありません。なんと、エンジンが違うのです、エンジンが。
現行e-BOXERのエンジンは排気量2リッター。いっぽうで新たに投入されるストロングハイブリッドの排気量は2.5リッターです。
従来の2.5リッターエンジンに対し、アトキントンサイクル化など燃費向上のための改良を施しつつも、最高出力は2リッターの145psから160psへとアップしているのでした。
最大トルクも188Nmから209Nmへ拡大。モーターによるアシスト効果が強い立ち上がりだけでなく、アクセルを踏み込んでからの伸び感があるのはその恩恵でしょう。
エンジニアによると2.5リッターエンジンとした理由はふたつあり、ひとつは「力強さ」のゆとりのため、もうひとつは「燃費最適化」のためとのこと。
このハイブリッドは北米でも販売されますが、かの地で重視される発進や高速道路合流での加速性能を高めることを狙ったのです。
そして“燃費最適化”とは、高速巡航時に燃費の伸びしろが少ない傾向にあるシリーズパラレルハイブリッドのウィークポイントに対する対策と考えれば納得。高速巡航時に必要なトルクを発生しつつなるべくエンジン回転数を下げることで、高速燃費を高めるという理屈です。
かつてトヨタ「プリウス」のエンジン排気量が、2代目から3代目へフルモデルチェンジした際に1.5リッターから1.8リッターへ拡大されたことがありましたが、それと同じ理由というわけです。
■「燃費向上」&「タンク容量もアップ」で驚異の航続可能距離を実現
●驚きその3:燃費は「20%増し」の約19km/Lか
注目の燃費は、現時点ではまだ細かい数値が発表されていませんが、資料によると「約2割の向上」とのこと。
現行e-BOXER(4WDモデル:スバルの呼び方は「AWD」)のWLTCモード燃費値は15.8km/Lですから、新型ストロングハイブリッドのAWDモデルでおよそ19km/Lほどでしょうか。
燃費番長のプリウスにはかないませんが、とはいえAWDでこれだけ走ればもう十分ですよね。
もう「スバル車は燃費が悪い!」なんて言わせません。
「加速性能が高まり、燃費もよくなった」。それがスバルのストロングハイブリッドなのです。
●驚きその4:まさかの「ガソリンタンク容量拡大」
何を隠そう、ストロングハイブリッド車の資料を見ていてもっとも驚いたのがコレ。なんと燃料タンク容量が「増えている」のです。
ハイブリッドカーや低燃費車で時々あるパターンが、燃料タンク容量を「減らす」というもの。
燃費が良くなったことで、燃料タンク容量を減らしても航続可能距離が減らなければ問題ではないですが、クロストレックのストロングハイブリッドはそんな慣例とは逆に、燃料タンク容量が増えたのだから驚きました。
容量は48リッターから63リッターへと約3割も増え、クラス最大となりました。
メリットは航続距離の延長。燃費向上と燃料タンク拡大の相乗効果により、航続距離は現行e-BOXERから約5割もアップし、こちらもクラストップです。
開発者によると「スバル本社(東京・恵比寿)から本州の端までワンタンクで行ける」と自信満々で、これは足の長さが求められる北米では大きなアドバンテージ。
いっぽう日本では関係ないかといえば決してそんなことはなく、給油サイクルが伸びてガソリンスタンド行く手間を減らすことができるというわけです。素晴らしい!
■上位モデルにしかなかった高度運転支援システム「アイサイトX」を初搭載!
●驚きその4:高度運転支援システム「アイサイトX」を新搭載
ハイブリッドシステム以外にもトピックはあります。たとえば高度運転支援システム「アイサイトX」の搭載、そしてメーターの全面液晶化です。
アイサイトといえば、スバルが誇る先進安全&運転支援機能ですが、「アイサイトX」はその上位タイプ。
運転支援機能として高速道路渋滞時(50km/h以下)において、ハンドルから手を離した状態で運転できる「ハンズオフ機能」が使えるのが大きなメリットでしょう。もちろん速度調整のアクセル・ブレーキ操作もクルマが担います。
これまでアイサイトXは、「レヴォーグ」や「WRX」「アウトバック」など上位モデルだけの装備で、クロストレックには設定がありませんでした。
しかし、ストロングハイブリッドを積むクロストレックの“上位グレード”となる「Premium S:HEV EX(プレミアム ストロングハイブリッド イーエックス)」にはナビゲーションなどと並んで標準装備されます。
なお同グレードには、同じくこれまでクロストレックには展開がなかった12.3インチの全面液晶メーターも採用される予定です。やりました!
それが意味するのは「ストロングハイブリッド搭載車は、従来のクロストレックよりも上級ポジション」ということに他ならないでしょう。
●驚きその5:優れた「悪路走破性」も継承
スバルのSUVといえば、悪路走破性は欠かせません。それはストロングハイブリッドとなっても同じこと。
たとえば四輪駆動は、昨今ではFFベースのハイブリッドパワートレインを持つ多くの車種が採用する後輪(もしくは全輪)モーター駆動ではなく、従来ながらのドライブシャフトを活用したメカニカル式のAWDを採用しています。
その実力は、今回の試乗会でもしっかり実感できました。
■ストロングハイブリッドでも悪路走破性に妥協なし!
当日の試乗コースのひとつがスキー場のゲレンデで、シーズンオフなのでもちろん雪はなく、路面はところどころ土が出ている芝生。しかも、時折雨が降って極めて滑りやすい状態です。
そのうえ何台も通過したことで、泥はしっかりこねられて「ドロドロ」となってかなりひどいコンディションでした。
したがって、簡単に足を取られる環境なのは言うまでもありません。
もしもスタックして誰かが助けてくれる状況でなければ、走るのを躊躇するような路面でした。
にもかかわらず、ストロングハイブリッドの新型クロストレックは、涼しい顔をして走り抜けるのだからさすが。
速度さえしっかり管理し、急な動作さえしなければ、特別なテクニックなど必要ありません。
普通のタイヤよりは悪路に強い「M&S(マッド&スノー)」規格のタイヤを履いているとはいえ、新車装着タイヤでの走行ですよ。トラクションのかかりが素晴らしいですね。
ストロングハイブリッドとは言え、悪路走破性に妥協なし。今回の悪条件走行で、それがよくわかりました。スバルらしいですね。
※ ※ ※
そんなクロストレックのストロングハイブリッド仕様の正式発表は年内(2024年中)を予定しています。
価格も気になるところですが、ベーシックタイプの「Premium S:HEV」で現行の「Limited」(344万8500円)に対して約38万円アップの383万円程度。
アイサイトXや全面液晶メーター、そしてナビが追加される上級タイプの「Premium S:HEV EX」でそこからさらに22万円ほどアップの405万円程度になりそうです(価格はすべて消費税込み)。
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