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「わずか3秒」でもEVを訴求? ホンダが新型SUV「プロローグ」を発売3年前に告知した訳

掲載 更新 10
「わずか3秒」でもEVを訴求? ホンダが新型SUV「プロローグ」を発売3年前に告知した訳

■「約3年遅れのスタート」からどう対抗する?

 ホンダは2024年初めに北米で発売するSUVの新型EV(電気自動車)「PROLOGUE(プロローグ)」を2021年6月28日に発表しました。とはいっても、公開された動画はたった3秒。デザインコンセプトモデルなど、はっきりとした形がしたものもありませんでした。画面に、HONDAのロゴマークとPROLOGUEという文字だけが映し出されました。

なぜホンダの技術はマネされない? 他社が採用しない理由

 なぜ、ホンダは発売まで3年もあるこのタイミングで新型EVの名称だけを公開したのでしょうか。

 プレスリリースに記された発信骨子によると、車名は、 、2021年4月にオンラインでおこなった三部敏宏氏の社長就任会見で公表した「2040年までにグローバルでEV/FCV(燃料電池車)の四輪販売比率100%」という目標達成に向けた、幕開け(プロローグ)であることを示しています。

 既に公開している電動化ロードマップの通り、プロローグはGMのEVプラットフォーム「アルティウム」を使い、またアキュラブランドでも2024年中にEVの新型SUVを導入すると明らかにしました。

 この分野は、いわゆるプレミアムEV市場であり、いわずと知れたEVの巨人テスラが君臨し、それをGM「GMCハマーEV」やフォード「マスタングマッハE」などのアメ車軍団、ポルシェ「タイカン」を先頭としたジャーマン3が次々とEV量産化を実現している段階で、プロローグは約3年遅れのスタートとなります。

 3年の空白期間はあまりにも長いため、ホンダ独自のEVプラットフォーム「e:Architecture(イーアーキテクチャー)」を使った新型モデルを2020年後半に北米で投入するといいます。

 となれば、時期的にイーアーキテクチャーの新型EVの情報が、プロローグより先に出てきてもおかしくないはずですが……。

 いずれにしても、ホンダとしては自社のグローバル売上のうち約半分の収益を稼ぎ出している北米市場で、EV市場でのライバルたちとの対向姿勢を明確にするため、「まずはモデル名称を」というマーケティング手法に打って出たものと考えられます。

 結果的に、ホンダは北米EV市場で出遅れた印象があります。

 ただし、これまでの動きが遅くて出遅れたのではなく、市場動向があまりにも急に変わったことへの対応が遅かったといえると思います。

■ESG投資の拡大が与えた影響とは

 北米でのEVの歴史を振り返りますと、大きな転換期となったのはカリフォルニア州大気保全委員会が立案したZEV法(ゼロエミッションヴィークル規制法)が施行された1990年です。

 ZEV法はEVのみならず、燃費が良く有害廃棄物量が少ないLEV(ローエミッションヴィークル:低公害車)の対する規制が段階的に強化されてきました。

 LEVの研究開発には若き日の三部社長が関わっていますので、三部社長はZEV法を含めた北米での燃費や電動化に関する規制動向については肌感覚で理解していると思います。

 また燃料電池車についても、トヨタやGMとともに、カリフォルニア州フューエルセルパートナーシップ(CaFCP)に参画しており、筆者(桃田健史)も「FCX」などホンダ初期型燃料電池車をロサンゼルス周辺で何度もテストドライブしています。

 その後、「FCXクラリティ」、「フィットEV」などがリース販売されましたが、当時の福井威夫社長や伊東孝紳社長に直接話を聞くと「FCVもEVも、あくまでも規制ありき。補助金頼みでは普及しない」という姿勢を崩しませんでした。

 その頃、テスラはまだ小さなベンチャー企業でしたが、ホンダは2000年代後半にZEV法をクリアするため、当時はまだ生産量が少なくZEV法への参加義務がなかったテスラからZEVクレジット(CO2排出枠権利)を購入しています。

 当時、テスラ幹部に直接取材したところ「ホンダにはかなり高額でZEVクレジットが売れた。その収益によって我々の財務状況が大きく改善した」と発言しています。

 その後、2010年代にテスラが「モデルS」以降の事業拡大路線に乗ってきても、ホンダとしては電動化はハイブリッド車を基盤としてグローバルで国や地域の社会情勢や規制を加味して段階的におこなう、という戦略を維持してきました。

 とくに、プレミアムEVという電池容量が100kWh近いモデルについては、「FCVがカバーする領域」という解釈で、これはトヨタも同じでした。

 ところが、2010年代後半になり、環境対応策を主体とする企業への投資動向が大きく変化します。

 従来の財務諸表だけではなく、環境・社会・ガバナンスを重視するESG投資がグローバルで急拡大し、その大波に乗ったテスラは時価総額で日系メーカー全社を足した分よりさらに大きくなるという、ホンダにとってまったく予期せぬ出来事が起こりました。

 規制ではなく、投資によってEV市場は劇的に変化したのです。

 まさに、ESG投資はEV/FCVにとってのゲームチェンジャーでした。

 こうした状況で、日米欧韓、そして中国の自動車メーカーは、国や地域でのEV/FCVに対する規制への対応をベースとしながら、ESG投資を強く意識した商品戦略が必須となっています。

 そのため、テスラが今後もプレミアムEV市場で独り勝ちすることは極めて難しくなる一方で、ホンダとしては他社協業も重視しながらスピード感を持ったEV/FCV量産戦略を進めなければなりません。

 ホンダは「プロローグ」の2024年発売の前に、さまざまな電動化戦略を次々と打ち出すことになりそうです。

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みんなのコメント

10件
  • ホンダに限らず2025年のEV化に備えて各メーカーが
    アピールし始めただけでしょ。
    GMはホンダのHV技術が目当てでホンダはGMと組むことで
    コストの削減が出来る。ホンダが売れないGMの車を押し付け
    られない事を祈るだけ。
  • イーロンマスクが水素を叩く理由はただ自社の株価を食われない為。以上。
    電気は増えるが最終的には他と領域を分散して1カテゴリーに成り下がる。
    それを本人が良くわかっているから認めさせないように時間稼ぎをしている。
    わかりやすい事を言えばテスラはローカルなものの延長線で事業していてそれが時流を味方につけてるだけなので転換点を迎えたとき迄に展開が無ければ脱落する。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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