Volvo V90 Recharge Plug-in hybrid T8 AWD Inscription
ボルボ V90 リチャージ プラグインハイブリッド T8 AWD インスクリプション
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北陸の地でボルボの新世代“リチャージ”をテストドライブ
V90のプラグイン ハイブリッドモデルを金沢の地で走らせた。普段は曇り空も多いという北陸の空は絵に描いたような快晴だった。日本海を有する豊かな自然環境と、区画整理の進んだ都市部や広い道路。この地でV90を走らせているとなぜだか自然とボルボの故郷であるスウェーデンを思い起こしたのだが、どうやらお互い似ている部分は多いらしい。貴重な陽の光をサンルーフから取り入れながら、しなやかな足取りで一路千里浜を目指した。
さていまいちど、昨年10月にマイナーチェンジが施された「V90 Recharge Plug-in hybrid T8 AWD Inscription」の概要を説明しよう。端的に言ってしまえばそれは、内外装のデザイン変更が行われた以外、機関的には従来の「ツインエンジンAWD」と同じ内容だ。ボルボはピュアEVを含めた外部充電が可能なモデルに“リチャージ”のグレード名を今後は与えるため、今回その名称が改まったというわけである。
またグレード全体としては、昨年全てのモデルをハイブリッド化したことを機に、このMY21モデルからはガソリンエンジンの「T5」「T6」、ディーゼルユニットの「D4」が廃止された。そして今回試乗した「T8」は第二世代のままだが、「B5 AWD」と「B6」シリーズには第3世代の気筒休止エンジンが採用されるに至っている。
直4ツインチャージャーに電動モーターを加えたユニークなT8
話を「T8」に戻すとT8のツインエンジンは、直列4気筒ガソリンエンジンとモーターのふたつで構成されている。2.0リッターの排気量を持つ直列4気筒エンジンは、低回転領域をスーパーチャージャーで過給し、高回転域はターボ過給とすることで、318ps/400Nmの高出力を発揮。そしてこれがフロントタイヤを駆動する。対して65kW(87ps)/240Nmの出力を発揮するモーターはリヤタイヤを駆動。ドライブシャフトを介さない4WD制御となっている。
トランスミッションは、インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター・モジュール(ISGM)を内蔵する8速ATギヤトロニック。センタートンネルに内蔵されるリチウムイオンバッテリーの容量は34Ahで、その重さは113kgだ。
電気のみでの航続可能距離はフルマラソン分に匹敵
充電時間は普通充電(200V/16A)で2.5~3時間を必要とし、ピュアEVによる航続可能距離は最大42.1km。その燃費は13.8km/L(WLTCモード総合)となっている。数値だけを見れば国産の最新P-HEVには敵わないが、果たしてその乗り味と醸しだされる雰囲気はどこまでプレミアムなものとなっているのか? そこがこのV90 リチャージ プラグインハイブリッド T8 AWDにおける、ひとつの見所だと思われる。
実際その走りは、快適を通り越して大きな癒やしを筆者にもたらしてくれた。嬉しくなるのは静粛性の高さだ。まずはデフォルトのハイブリッドモードで走行したが、そのエンジンサウンドが抑え込まれており、驚くほどに快適である。これには低中速トルク型のエンジン特性に加え、積極的にモーターだけで走らせる制御が効いているのはもちろんなのだが、マイナーチェンジ後のV90がその遮音性を大幅に引き上げていることが功を奏していると感じた。
騒音を相殺するANCは効果絶大
また「アクティブ・ノイズ・コントロール」(ANC)の効果も、相当に高いのではないかと思う。ANCは車内のバズスピーカーからノイズ低減音を発生し、バルクヘッド越しに伝わるエンジン音にぶつけてこれを相殺するシステムだ。かつダイナミックモード選択時にはエンジン回転数が2000rpmを超えると、増幅したサウンドをバズスピーカーから流すのだという。
だからエンジンは確かに回っているのに、ピュアEVと遜色ないほどV90の室内は静かなのである。そしてアクセルを踏み込めばエンジンがスカッ!と回る。その出足はスーパーチャージャーとモーターのトルク、そして4WDのトラクションが加わることによって、全方位的にリニアだった。
ソフトな足まわりはゆったり走らせることを推奨するセッテイングか
ただせっかくのツインチャージャーにもかかわらず、ターボが制御する高回転領域までこれを回しきろうと思わなかったのも事実だった。エンジンは前述の通り、レスポンシブでとても気持ちが良い。しかし高速巡航におけるそのハンドリングは若干ナーバスで、アクセルを踏み込んで積極的に走らせる気持ちにならなかったのだ。いや、もっと正しい言い方をするならば、ゆったり走らせている方が遙かに幸せだったのである。
それは、初期ロールスピードの速いソフトな足まわりが理由だろう。ボルボとしては街中で快適な乗り心地と回頭性の良さを実現するために初期ダンピングを抑えているのだと思う。そしてパイロットアシストを働かると電動パワステがグッと座り、その操舵感は落ち着きを取り戻す。つまり高速巡航においてはACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を使って走ることが、安全面も含め、前提とは言わないまでもボルボの推奨なのだと思われた。
街中での快適さと制限速度180km/hから見えるボルボの安全思想
この考え方には筆者も賛成である。可変ダンパーを付ければ済むという話ではあるが、V90を活発に走らせたいなら足腰を引き締めたR-Designという選択がある。ボルボがこのT8で表現したいのは、平和で安全な走りなのだ。180km/hの速度リミッターを全車に採用したことから考えても、彼らは本気でスピードを抑えようとしているのだと思う。
制限速度の低い日本だとそのチャレンジは伝わりにくいのだが、スピードに慣れ親しんだ欧州でこれを実施することによって、彼らは本気で「ビジョン・ゼロ(交通事故による死亡者や重傷者をゼロにするビジョン)」を実現しようとしているのである。
知性を刺激する多彩なドライブモード
出発地である金沢駅から街中を通り、国道60号線を通って千里浜へ。往復約100kmのドライブは極めて快適で、そして実に穏やかな旅路だった。ハイブリッドモードで走りながらも割と早くから“電欠”してしまったことはちょっと驚いたが、チャージモードで充電しながら走らせると、これまた割と回復が速かった。ちなみにインジケーター上で電池残量がゼロになったとしても後輪を駆動する電力は常に残されており、その駆動がFWDのみに限定されることはない。
そしてT8やT6に乗るオーナーたちはこのチャージモードやパワーホールドモード(エンジンのみを始動させ、バッテリーの使用を禁止するモード)を使い分けながら、どれが一番効率的な走りなのかを探して楽しんでいるのだという。参考までに筆者が約100km走った燃費は15.8km/L。別段燃費走行をしたわけでもないのだが、カタログ以上の数値をマークしたこともお伝えしておこう。
「自分で運転できる電車」の如き乗車感覚が新鮮
総じて筆者はこのV90 リチャージ プラグインハイブリッド T8に「自分で運転できる電車」のようなワクワク感を覚えた。数値だけを見るとやっぱり国産P-HEVには敵わなかったのだが、そこにはどこまでも走らせていたくなる、効率化だけでは図れない癒やしの走りがあった。
電車は電車でも、グリーン車気分というところだろうか。V90 リチャージ プラグインハイブリッド T8 AWDは、旅をしたくなる一台だ。
REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
PHOTO/ボルボ・カー・ジャパン(Volvo Car Japan)
【SPECIFICATIONS】
ボルボ V90 リチャージ プラグインハイブリッド T8 AWD インスクリプション
ボディサイズ:全長4945 全幅1890 全高1475mm
ホイールベース:2940mm
車両重量:1980kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ+スーパーチャージャー
総排気量:1968cc
ボア×ストローク:82.0×93.2mm
エンジン最高出力:233kW(318ps)/6000rpm
エンジン最大トルク:400Nm/2200–5400rpm
電気モーター最高出力:65kW(87ps)
電気モーター最大トルク:240Nm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
バッテリー形式:リチウムイオン
バッテリー容量:34Ah
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ディスク
タイヤサイズ:前後245/40R20
車両本体価格(税込):1139万円
【問い合わせ先】
ボルボ・カスタマーセンター
TEL 0120-922-622
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みんなのコメント
走りも燃費も静粛性も想像以上だった。
金額が下がって補助金が潤沢に出ればいい選択になりそうだ。
ボルボのワゴンにこんな金額を出すマニアがどれくらいいるのか気になる