現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 実はかなりの意欲作!? マツダ クロノスは「悲運の佳作」だった!! 【偉大な生産終了車】

ここから本文です

実はかなりの意欲作!? マツダ クロノスは「悲運の佳作」だった!! 【偉大な生産終了車】

掲載 更新
実はかなりの意欲作!? マツダ クロノスは「悲運の佳作」だった!! 【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

【12月発表&先行予約開始!】新型ヤリスの走りはどう変わったのか!?

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はマツダ クロノス(1991-1995)をご紹介します。

●【画像ギャラリー】 海外では高い評価も獲得!! マツダ クロノスの画像をギャラリーでチェック!!!

文:伊達軍曹/写真:MAZDA

■3ナンバー車税制改正に活路を見出したマツダ新体制の旗艦モデル

 マツダ カペラの後継車種ではあるものの、曲面を多用した流麗かつ美しいデザインを身にまとい、世界最小クラスの新開発V型6気筒エンジンを搭載。

 しかし当時のマツダの「5チャネル戦略」という無茶な戦略の犠牲者として、ごく短期間で静かに消えていった悲運の佳作。それが、マツダ クロノスです。

ファミリアとともにマツダの主力車種だったカペラの後継機種として誕生したクロノス。マツダ5チャンネル体制の中核を担うモデルでもあったため、その要因に数えられてしまうことも多い


 マツダ クロノスは、それまでのマツダの主力セダンだった「カペラ」に代わって1991年に登場した3ナンバーサイズのセダン。

 いわゆる3ナンバー税制が1989年に改正されたことと、同時期に沸き起こっていたバブル景気を背景に、当時は三菱ディアマンテなどカペラの競合車種が軒並み「3ナンバー化」を果たしていました。

 それに続けとばかりに、マツダはカペラより1ランク上となる3ナンバーサイズのボディをクロノスに与えたのです。

 クロノスに搭載されたエンジンは、前述のとおり新開発された世界最小クラスの2L V型6気筒DOHCエンジンで(このほかにオーソドックスな1.8L直4エンジンもライナップしていましたが)、なかなかの一品でした。

 そしてクロノスはデザインも、これまた前述のとおり従来の国産セダンとは大きく一線を画す、曲面を多用したボリューミーかつセクシーなものでした。

リアビュー。直線的なフォルムが一般的だった日本車の中にあって、クロノスの持つ流線的なデザインは一線を画していた(写真は海外仕様の「626」)


 デザインだけでなく実際に走らせてみても、マツダ クロノスはなかなかのものではありました。

 オールアルミ製の軽量な2L V6エンジンのフィールはきわめてシルキーで、どこかヨーロッパ車的なものを感じさせる「やや硬めだが、しなやかでもある」という乗り味も、乗る者を納得させるだけのものはありました。

 そのように「なかなかステキな新型3ナンバーサイズセダン」であったマツダ クロノスでしたが、当時は今と違ってセダンの人気が高かったにもかかわらず、その販売は超低空飛行が続きました。

 1994年10月にマイナーチェンジを行うなどの各種テコ入れは行ったのですが、結論として功は奏さず、1995年にはあえなく国内販売終了となったのです。

■マツダ迷走と時代の逆境の中を走り抜いたミドルセダンの佳作

 もちろん好みは人それぞれですが、基本的には「けっこういい感じのデザインだった」と言えるはずのマツダ クロノス。

 前述の基本エンジンである2L V6を中心とするその走りも、決して悪くはありませんでした。

 しかしなぜ、マツダ クロノスはあっという間に廃番となってしまったのでしょうか?

 ……これはもう「当時のマツダが採っていた5チャネル戦略の犠牲になった」としか言いようがありません。

エクステリアと同じく流線形のデザインが取り入れられたインパネ。マツダの5チャンネル体制とその失敗は、中核を担ったクロノスの名を冠して「クロノスの悲劇」とも呼ばれている

 今と違って日本国内での人気が今ひとつだった1980年代後期のマツダは、国内販売網を強化することで販売台数を増やし、その結果としてトヨタや日産に対抗する――というプランを立てました。

 その背景にはもちろん、当時の異常な好景気(今にして思えばバブル)がありました。

 で、マツダはそれまでの旗艦チャネルであったマツダ店に加えて、アンフィニ店(スポーツモデル中心)とユーノス店(欧州車イメージ)、オートザム店(小型車中心)、オートラマ店(フォードブランド取り扱い)という計5つの販売チャネルを構築し、それでもって「年間販売台数100万台を目指す!」とぶち上げたのです。

 ……それはそれでいいのですが、当時のマツダにとって「5つのチャネルそれぞれに、それぞれ用のモデルを供給する」というプランにはやはり無理がありました。

 なぜならば、トヨタや日産のような超巨大自動車メーカーと違い、当時のマツダはそんなに何種類ものプラットフォーム(車台)を持っていなかったからです。

 そして車台の種類が少ないですから、5チャネル戦略を遂行するためには同じ車台を使って「外側を少々変えました」というモデルを乱造せざるを得なくなりました。

 具体的に言うと、本筋のマツダ店向けに作られた「クロノス」の兄弟車には、下記の数多くの派生モデルが存在していました。

●MX-6|マツダ店向けの2ドアクーペ
●アンフィニMS-6|アンフィニ店向けの5ドアハッチバック
●アンフィニMS-8|アンフィニ店向けの4ドアハードトップ
●ユーノス500|ユーノス店向けの4ドアセダン
●オートザム クレフ|オートザム店向けの4ドアセダン
●フォード テルスター|オートラマ店向けのクロノス
●フォード テルスターTX5|オートラマ店向けのMS-6
●フォード プローブ|オートラマ店向けの2ドアクーペ

 ……自分で書いていても、もはや何がなんだかよくわかりません。そして「よくわかりません」というのは、当時の消費者にとっても同じでした。

 「何やらカタカナとか数字やらの似たような車名がたくさんあって、どれを買えばいいのかわからん。わからないから、トヨタ車を買おう」と当時の消費者が思ったかどうかは知りませんが、まあ当たらずといえども遠からずでしょう。

内装。悪名ばかりが語り継がれる「5チャンネル体制」ではあるが、一方でRX-7、ユーノス・ロードスター、AZ-1といった数々の名車たちも生み出した面も持ち合わせている

 結果としてマツダ クロノスは、いや、本家クロノスを含むクロノス兄弟は、「兄弟全員を合わせても月販1万台に届かない」という体たらくでした。

 そして1991年には崩壊したバブル経済のあと、本格的な低迷期に入る日本経済とともにクロノスも崩壊(販売終了)。マツダ自体もその後、深刻な経営難に苦しむことになりました。

 このようにいろいろあったクロノスですが、その車自体は「なかなかよくできたサルーン」だったと思います。時代のめぐり合わせに翻弄されてしまった佳作……と言えるでしょう。

■マツダ クロノス 主要諸元
・全長×全幅×全高:4695mm×1770mm×1400mm
・ホイールベース:2610mm
・車重:1220kg
・エンジン:V型6気筒DOHC、1995cc
・最高出力:160ps/6500rpm
・最大トルク:18.3kgm/5500rpm
・燃費:9.0km/L(10・15モード)
・価格:220万5000円(1991年式20VG 4速AT)


●【画像ギャラリー】 海外では高い評価も獲得!! マツダ クロノスの画像をギャラリーでチェック!!!

◎ベストカーwebの『LINE@』がはじまりました!
(タッチ・クリックすると、スマホの方はLINEアプリが開きます)

こんな記事も読まれています

F1復帰を諦めるつもりはないと主張するシューマッハー。一方でシート獲得に向けて戦うのは「消耗する」と明かす
F1復帰を諦めるつもりはないと主張するシューマッハー。一方でシート獲得に向けて戦うのは「消耗する」と明かす
AUTOSPORT web
元国民的アイドルが500万超の「国産カスタムカー」を購入! 加護亜依が“即決買い”する姿に「びっくり!」「センスいい~」と話題
元国民的アイドルが500万超の「国産カスタムカー」を購入! 加護亜依が“即決買い”する姿に「びっくり!」「センスいい~」と話題
くるまのニュース
狂気の空力マシンで300馬力 スターリング・モスが395km/hを記録した日 歴史アーカイブ
狂気の空力マシンで300馬力 スターリング・モスが395km/hを記録した日 歴史アーカイブ
AUTOCAR JAPAN
高橋巧筆頭に3連覇狙うTeam HRC。「誰が乗っても速く走れると思っていた」新加入の名越と荒川が感じた課題/鈴鹿8耐テスト
高橋巧筆頭に3連覇狙うTeam HRC。「誰が乗っても速く走れると思っていた」新加入の名越と荒川が感じた課題/鈴鹿8耐テスト
AUTOSPORT web
RB代表「リカルドが結果を出せるよう努力している」必要とするものを与えるのはチームの責任だと語る
RB代表「リカルドが結果を出せるよう努力している」必要とするものを与えるのはチームの責任だと語る
AUTOSPORT web
ベントレーがゴージャスな「大人エレベーター」を手掛けたら…「How do you Bentley?」で「B世代」にアピールしたかったものとは
ベントレーがゴージャスな「大人エレベーター」を手掛けたら…「How do you Bentley?」で「B世代」にアピールしたかったものとは
Auto Messe Web
リバティ・グローバルがフォーミュラEの経営権を取得へ。保有比率65%の主要株主に
リバティ・グローバルがフォーミュラEの経営権を取得へ。保有比率65%の主要株主に
AUTOSPORT web
トヨタ新型「“タフ”ミニバン」発表! 斬新“大口顔”が超カッコイイ! MT&アンダー320万円設定ありの「プロエース“シティ”」墨に登場
トヨタ新型「“タフ”ミニバン」発表! 斬新“大口顔”が超カッコイイ! MT&アンダー320万円設定ありの「プロエース“シティ”」墨に登場
くるまのニュース
「南海フェリー」がトラック乗りの強い味方に! 始発便の「早乗り」がドライバーに優しいサービスだった
「南海フェリー」がトラック乗りの強い味方に! 始発便の「早乗り」がドライバーに優しいサービスだった
WEB CARTOP
愛車の履歴書──Vol41. 大黒摩季さん(後編)
愛車の履歴書──Vol41. 大黒摩季さん(後編)
GQ JAPAN
テインから『ギャランフォルテス』用車高調「ストリートアドバンスZ」が発売
テインから『ギャランフォルテス』用車高調「ストリートアドバンスZ」が発売
レスポンス
わがままを叶えてくれるプレミアムSUV──新型レクサスNX350“F SPORT”試乗記
わがままを叶えてくれるプレミアムSUV──新型レクサスNX350“F SPORT”試乗記
GQ JAPAN
なぜ「ペダル踏み間違え」起きる? 原因はどこにある? 相次ぐ「重大事故」は“高齢者”特有の問題ではない! 有効な「対策法」はあるのか
なぜ「ペダル踏み間違え」起きる? 原因はどこにある? 相次ぐ「重大事故」は“高齢者”特有の問題ではない! 有効な「対策法」はあるのか
くるまのニュース
カーメイト、新型ワイドリアビューミラー発売…ホンダ WR-V などに対応
カーメイト、新型ワイドリアビューミラー発売…ホンダ WR-V などに対応
レスポンス
ミック・シューマッハー、来季F1復帰の可能性はあるのか?「それが僕の目標だけど……僕がコントロールできることじゃない」
ミック・シューマッハー、来季F1復帰の可能性はあるのか?「それが僕の目標だけど……僕がコントロールできることじゃない」
motorsport.com 日本版
神奈中の赤い「連節バス」ついに横浜へ登場 箱根駅伝ルート経由で駅 団地結ぶ
神奈中の赤い「連節バス」ついに横浜へ登場 箱根駅伝ルート経由で駅 団地結ぶ
乗りものニュース
エンジン車が生き残れる夢の燃料【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】
エンジン車が生き残れる夢の燃料【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】
グーネット
便利な「ベンリイ号」に見るホンダのチャレンジ精神! 1955年にアールズフォーク採用!?
便利な「ベンリイ号」に見るホンダのチャレンジ精神! 1955年にアールズフォーク採用!?
バイクのニュース

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

194.2233.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索
クロノスの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

194.2233.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村