歴史のなかには、光だけではなく影もある
トヨタ・ソアラと日産レパード。かつて刑事ドラマにも登場していたクルマたちだが、互いに四世代のモデルを輩出した歴史のなかには、光だけではなく影もある。新車当時、筆者が生で感じたことも本稿に折り込み、コラムとして2車の歴史を振り返ってみたい。なおこの記事では、初代&二代目ソアラと二代目レパードを中心に総括することをお断りしておきたい。
【画像】今も根強い人気! トヨタ・ソアラと日産レパードの歴代モデルを振り返る 全131枚
『光と影』。ソアラとレパードの歴代モデルを思い浮かべるとき、この言葉が脳裏をよぎる。それはまるで華やかさと危険な匂いが交差する、横浜のベイサイド地区のように……。特に二代目レパード(1986年~)は、横浜を舞台としたTVドラマと映画『あぶない刑事』シリーズで活躍していたから、よけいにその印象が強い。
初代ソアラ(1981年~)も、刑事ドラマ『太陽に吠えろ』シリーズに登場した。『あぶない刑事』もそうだが、現実社会において人目につく高級パーソナルクーペに刑事が乗ることは考えられない。まさに映画やドラマの世界ならではの特別な配車と言えよう。ちなみに初代レパード(1980年~)は、手塚治虫原作の連続ドラマ『加山雄三のブラック・ジャック』(1981年)で主人公の愛車として登場していたのをご存知だろうか。
初代ソアラのキャッチコピーは『未体験ゾーンへ。』
初代ソアラが誕生したのは1981年のことで、キャッチコピーは『未体験ゾーンへ。』、または『SUPER GRAN TURISMO』であった。とにかく凄いクルマが発売されるという前情報が、自動車雑誌を中心とした各媒体に溢れていたのを覚えている。
事実、高性能モデルの『2800GT』と『2800GTエクストラ』は、170psを絞り出す5M-GEU型2.8L直6DOHCエンジンを搭載し、極めて高い走行性能を持っていた。発売前に行われた海外試乗会では、余裕で200km/h巡航が可能だったという。
ところで筆者はその頃はまだ高校生だった。高校の隣家のご主人が発売して間もないスーパーホワイトの『ソアラ3000GT』を洗車していたので見とれていたら、「少しドライブする?」と言われて乗せていただいたことがある。それはまさに未体験ゾーンで、夢のような出来事であった(昭和ならではの大らかなエピソードだ)。そんな初代ソアラは、名車と言われる輸入車の多くがそうであったように、頻繁にアップデートし熟成されていった。
実際に二代目ソアラ後期モデルを購入
そして何を隠そう、筆者は20歳代で二代目後期モデル(1988年~)の『3.0GT』を手に入れたのである。残念ながら後に手放したが、今でも中古車で程度のいい最終モデルに出会うと欲しくなってしまう。二代目ではメタルトップの『エアロキャビン』も限定500台で登場。さすがに購入できなかったが、レアで素敵なクルマだった。
三代目ソアラ(1991年~)はデザインを大幅に変更して世に送り出された。最上級モデルの『4.0GTリミテッド』(アクティブサスペンション仕様車)の乗り味には光るモノがあったが、それ以外、とくに『3.0GT』系は走っても印象の薄いクルマになってしまった。ところが後期モデルの『2.5GTツインターボ』はスポーツカーそのもので、運転が愉しかった。本気で煮詰めればいいクルマが完成する一例に思えたものだ。
四代目ソアラ(2001年~)は、いきなり全車オープンカーであった。リアシートは大人が乗るには狭く、戸惑ったファンは多かったが、ゆったりした乗り味で良好な舗装路面を走れば悪くないクルマだった。悪路ではランフラットタイヤのせいで乗り心地が悪く、ボディ剛性も足りなく感じたが、後に出る姉妹車の『レクサスSC』はそういう荒さ、弱さはなかった。
ということで、ソアラは初代と二代目に尽きるというのが筆者の見解。ただし、三代目後期型2.5GTツインターボは『これぞソアラ』ではないが、本物のスポーツカーであったことは強調しておきたい。
レパードがどの店舗にも置いていない
二代目レパードは、前期と後期で外観もインテリアも随分とイメージが異なる。『あぶない刑事』シリーズには前期型も後期型も登場するが、筆者が大好きなのは前期型の『アルティマ』で、フロントスタイルもスリットの入ったテールランプも独特のデジタルメーターも、とにかく内外装のデザインがたまらなかった。
ここからは筆者の体験談。大学時代、友人のお父様が某日産ディーラーの社長で、「白いレパード・アルティマが、何らかの事情でキャンセルになって困っている」と聞いた。具体的な価格は書けないが、当時かなりの値引き額を提示された。
カタログで見た白いアルティマはいかにもカッコ良かった。筆者は当時学生で、もちろんそんな高級車は買えないので父に相談したところ、すんなりと購入しようと話が進んだ。そこでまずはディーラーに行って実車を見てみようと、レパードが展示してある近所のディーラーを探した。
しかし10店舗くらいを巡っただろうか。どの店舗にも置いていない。そこで日産のお客様相談室で調べてもらったら、東京都と神奈川県で展示車がある店舗は1件だけ。しかもその場所が凄く遠い……。そこで、「実車も置いていないクルマは買わない方がいい!」と父の雲行きが怪しくなり、レパードを探しに出た帰り道で、違うクルマをフルオプションで買ってしまうというオチがついてしまった。
二代目レパードはクルマとして完成度が高かった
筆者の実話のとおり、二代目レパードはデビュー当時から大人気だったわけではない。『あぶない刑事』で話題になり、発売開始から遅れて人気が出たのだ。そもそも二代目レパードは、クルマとして完成度が高かった。なんと言ってもR31/R32型スカイラインなど、名車の開発主管を務めた伊藤修令さんが開発を担当していたのだから。
次は三代目(1992年~)で、車名は『レパードJ.フェリー』となった。これは『インフィニティJ30』の日本仕様で、二代目シーマのきょうだい車ともいえるクルマだ。上級モデルはVH41DE型4.1L V8(270ps)エンジンを搭載していた。ゴージャスなクルマで、残念ながらそこに二代目レパードの面影はなかった。
四代目(1996年~)でモデル名称が再びレパードに戻るが、クルマの中身はY33系セドリック/グロリアのグランツーリスモとほぼ同じだった。「売るクルマが欲しい」という販売会社の意見が勝ったようだ。もはやクルマのデキが云々という話ではなかった。そんな四代目は2000年に販売を終了し、レパード20年の歴史に幕を閉じる。
冒頭に『光と影』と書いたが、レパードもソアラも、その多くのモデルは今も筆者の眼に光り輝いているのであった。
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みんなのコメント
全ての面でソアラに後塵を拝していたが、「あぶ刑事」人気で未だにマニア人気が衰えないレパード。
どちらも名車だ。