2006年はアウディのスポーツモデルが数多く日本に上陸した年だった。S8、S6/S6アバント、そして秋には2代目TTクーペもやってきた。これらスポーツモデルは高性能であると同時に先進テクノロジーを満載していることが大きな特徴だった。そこでMotor Magazine誌ではそのテクノロジーに注目、上陸したばかりの2代目TTクーペを技術的側面からチェックしている。ここではその試乗の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年12月号より)
ライバルたちの一歩先を行くアルミハイブリッドボディ
新しいTTクーペは1998年にデビューをした初代の延長線上に位置するモデル。「車輪から始まるデザイン」を再び採用した新型のルックスを目の当たりにすれば、誰もがそうした見方をするのは当然のことだろう。
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しかし、実際にはそもそも「TTの開発は若い人々をターゲットとしたカジュアルなクーペという発想からスタートした」という。8年前にイタリアで開催された初代モデルの国際試乗会の場で聞いたものだが、当初搭載を予定していたエンジンはもっとアンダーパワーな4気筒の自然吸気で、価格ももっと安価なものを想定。実はこれこそが、初代TTというモデルの真のコンセプトであったのだ。
だからこそ今、こうして新型の姿を目前にすると、そうした初代モデルのコンセプトは「今は昔」のものという印象がひと際強くなる。アウディはTTというモデルに「今度こそブランドきってのスポーティさをアピールするための、明確なイメージリーダーとしての位置づけを与えようとしている」と実感させられるのだ。
従来型に対してボディサイズをひと回り(全長を120mm、全幅も75mm)拡大した新しいTTクーペは、ちょうどそのモデルチェンジにタイミングを合わせるかのようにクーペを追加したBMWのZ4シリーズ、あるいはポルシェのケイマンと並べても、まずはその見た目上で同格と思える車格感を手に入れている。そしてそれと同時に、そこに採用のハードウエアに関しても、従来型以上に先進性を訴える内容を投入してきたのが大きな特徴だ。
例えば、そのボディ構造。新しいTTクーペは、「アルミニウムが重量の69%を占める」というスチールとアルミによるハイブリッドボディを新たに採用している。
そもそもアウディがアルミ製のボディ骨格づくりに熱心であることは、すでにA8やA2に採用のオールアルミ製ボディでも知られるところ。「206kgというボディシェル重量のうち66kgがスチール、63kgがシートアルミ、45kgが鋳物アルミ、32kgが押し出しアルミ」という新型に採用したボディは、アルミボディの弱点とされたコスト上の課題を克服することにも、これまで以上に積極的に取り組んでいると考えられる。
そんな特徴的な構造をより詳細に検証すると、押し出しアルミ材で作られたクラッシュBOX以降のフロントサイドメンバーや、Aピラーとサイドシルやウインドウクロスメンバーの接続部位、フロントサスペンションの取り付け部などには、特に高強度である鋳物アルミ材を採用。サイドシルやクロスメンバーには押し出しアルミ材、キャビンまわりはシートアルミ材……と、やはりコストダウンにも配慮をした巧みな使い分けが行われていることが判明する。
同じスチールとアルミによるハイブリッドボディであっても、BMWのように50:50の前後重量配分を達成すべくフロントセクションのみをアルミ化するのではなく、重量バランスを図りながら、ボディ全般を軽量化しようとする意図も読める設計とされているのが特徴でもある。
ちなみに、「新型TTのボディすべてをもしもスチール構造としていたら、重量は48%増加していたはず」とアウディでは試算する。現在のボディシェル重量は206kgとされているから、仮にスチールボディであればそれは300kgを超えていた計算になる。
こうした軽量化効果と同時に、先進の接合技術を用いることによって、高剛性を達成することができたことを謳うのもまた、新型TTの特徴だ。
手馴れたリベット締めや打ち曲げ固定法などによるスチールとアルミの接合に加え、ルーフとサイドセクションのレーザー溶接の際に採用している「アルミニウム・ゼロ・ジョイント」も革新的なテクノロジーであるとアピールする。
それらの成果は、従来型をおよそ50%も上回る静的ねじれ剛性の値に代表されるという。これもまたハイブリッドボディを採用することによるメリットであるというのだ。
かくして、新型TTクーペ3.2クワトロの車両重量1470kgという数字は、3.2Lの6気筒エンジンに4WDシャシを組み合わせたモデルとしては確かになかなかの軽量ぶりだ。ちなみに、BMW Z4クーペ3.0siは1425kgで、ポルシェ・ケイマンSは1380kgと発表する。
相対的には3車中で最も重いということにはなるものの、このTTクーペはクワトロであり、曲がりなりにもリアシートが装着されている点は考慮する必要があるだろう。2Lターボエンジンを搭載するTTクーペ 2.0TFSIの重量は1340kgだ。
トランスミッション技術で世界最先端を走る
DSG改め、Sトロニックとその名称を変えたデュアルクラッチ式2ペダルMTも、もちろんライバルに対するハードウエア上の大きなアドバンテージ。実際、Z4クーペやケイマンのトルコン式ATに比べると、アクセルワークに対するダイレクトな駆動力伝達感や燃費面でのメリットは、もはや「雲泥の差」と評していいものだろう。
トランスミッション技術に関しては、疑うことなく、アウディは世界の最先端を走る。クワトロシステムを含め、駆動系に凝るというのが、昨今のアウディのテクノロジーオリエンテッドの特徴的な姿でもある。
ところで、初代モデルでは「空力付加物(=スポイラー)の類は絶対に付けたくない」というデザインセクションの声が優先され、そうしたスタンスを意固地なまでに押し通したために、結局のところ最終的には後付けリアスポイラーを装着し、サスペンションセッティングまでもを変更して高速時の安定性を増強させる必要に迫られたが、新型では電動リアスポイラーが採用されるなど、当初からデザインと機能の妥協点を探る設計が採り入れられたことがうかがえる。
ちなみに新型TTクーペの空気抵抗係数(Cd値)は0.30で、これは従来型の0.34を大きく凌ぐデータ。風洞が異なるとそこで得られる計測データも微妙に変わるためあくまで参考値ということにはなるが、ポルシェ・ケイマンSは0.29~0.30とほぼ同等の値。Z4クーペ3.0siは0.34、Mクーペは0.35と発表されている。
冒頭に触れたように、初代TTクーペの開発コンセプトは実は生粋のスポーツモデルではなく、もっとカジュアルな、ルックス優先の「若者向けクーペ」というものだった。
しかし、新型TTは今や「ハナからZ4シリーズや(ケイマンを含む)ボクスターシリーズまでをライバルと想定した」、名実ともにアウディを代表するスポーツクーペとして開発されていることが明らか。そうした点では、アウディならではの「完璧主義哲学」が初代モデルよりも遥かに強く盛り込まれている。(文:河村康彦/Motor Magazine 2006年12月号より)
アウディ TTクーペ 3.2 クワトロ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4180×1840×1390mm
●ホイールベース:2465mm
●車両重量:1470kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3188cc
●最高出力:250ps/6300rpm
●最大トルク:320Nm/2500-3000rpm
●トランスミッション:6速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:4WD
●車両価格:574万円(2006年)
アウディ TTクーペ 2.0TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4180×1840×1390mm
●ホイールベース:2465mm
●車両重量:1340kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:200ps/5100-6000rpm
●最大トルク:280Nm/1800-5000rpm
●トランスミッション:6速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:FF
●車両価格:440万円(2006年)
[ アルバム : 2代目アウディ TTクーペ はオリジナルサイトでご覧ください ]
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