16代目クラウンの誕生を機に、各世代のカリスマ性を彩ってきた「はじめて」をあらためて紐解く特別連載企画。第5回は、1974年に誕生した第5世代「MS8#/9#/10#型」をご紹介しよう。ロイヤルサルーン、4ドアピラードハードトップという新たな個性を加えて、高級車としての理想を追求していく。(Motor Magazine Mook 「TOYOTA CROWN 13th」より)
わずか3年9カ月でのフルモデルチェンジ。背景にあったものとは・・・
Lクラス首位の座を奪い取られて危機感を抱いたトヨタは、予定を繰り上げてクラウンのフルモデルチェンジを断行する。5代目のMS80系とMS90系がベールを脱ぐのは、74年10月のことだ。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
ワイドバリエーションを誇り、新たに4ドアビラードHTを設定した。安全性を考慮してセンターピラーを残し、サッシュレスのドアを組み合わせている。
スタイリングは4代目の失敗に懲りてかオーソドックスなデザインに改められた。3サイズは4690×1690×1440mmで、ホイールベース2690mm(2000・4ドア・スーパーサルーン)で、旧モデルに較べると全長が10mm、全幅20mm拡大されている。ボディのサイズ・アップのうち居住性にプラスしているのは全幅の拡大のみで、全長の延長はその90%までが、エンジンルームの拡大に消化されている。
スタイリングはストレート主体のボクシーなフォルムで、HT系はエレガントな角型ヘッドランプとホップアップしたコークボトルラインが特徴だ。2ドアHTはドア後方のCピラーにオペラ・ウインドーがつく。
シャシ関係での注目点は、トップ・グレードのロイヤルサルーンに4輪ディスク・ブレーキの採用、5人乗りハードトップ系スーパーサルーン以上のグレードのフロント・ブレーキに4ポッド式ベンチレーテッド・ディスクと、速度によって適切な操舵力が得られる新設計の速度感応型パワーステアリングの採用などがある。
直6ユニットの進化は、排出ガス規制との「闘い」でもあった
5代目クラウンが登場したのは排出ガス規制がグッと厳しくなった時期だ。ペリメーターフレームのユニット・ボディは、予定される排気ガス規制に対応するべく、フロア形状の変更、フレームのフロント・サイドレール間隔が拡大されている。さらに排ガス対策に奔走し、エンジンを絞り込んでいる。
直列6気筒は2LのM型エンジンと2.6Lの4M型を用意している。75年からは排出ガス対策に本腰を入れ、5月にトヨタ触媒方式のTTC・Cで50年排出ガス規制を乗り切った。翌76年6月には51年排出ガス規制をクリア。
77年6月には、排気系に三元触媒方式による53年規制適合のM-EU型エンジンが発表された。以後、この三元触媒とEFI(電子制御燃料噴射装置)システムが、排気規制クリアの本命システムとなる。
さらに77年11月にはディーゼルエンジン搭載車も加わった。4M-EU型エンジンが53年排出ガス規制を乗り切ったのは78年2月だ。140ps/21.5kgmと、51年規制適合車(
安全対策としては、ESC(電子制御式スキッドコントロール)の改良、連続ウェビング・タイプのシートベルト(スーパーデラックス以上はオートロック・リトラクター)、ロイヤルサルーンに6点ウォーニングの附いたOKモニターを採用している。
第5世代クラウンは順調に販売台数を伸ばし、74年12月には1万台を超える販売記録を達成する。
■トヨタ・クラウン2ドアHT 2600スーパーサルーン(78年式・53年規制適合車) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4740×1690×1415mm●ホイールベース:2690mm●車両重量:1415kg●エンジン:直6SOHC●総排気量:2563cc●最高出力:140ps/5400rpm●最大トルク:21.5gm/3800rpm●トランスミッション:4速AT+オーバードライブ●駆動方式:FR●当時の車両価格(税込):202.0万円
ご当時インプレダイジェスト──75年式クラウン2600ロイヤルサルーン TTC・C
トヨタから新しい低公害車が登場した。センチュリーとクラウン2600シリーズである。
新しい触媒方式のクラウン2600は、極めて高価であり、一般のユーザーから少々、縁遠い存在であるが、極めて近い将来にコロナやカリーナ、セリカなども、このTTC・Cに身を固めて登場することが必須とあらば、このクラウンの走りっぷりも気になるというものだ。
結果からいうと、このモデルに関してはまるで従来の未対策車と遜色なかろうと思われる。
数あるクラウン・シリーズの中でも、このロイヤルサルーンは最高位にランクされ、その装備の充実ぶり、フィニッシュの高さでは、クラス随一と自他共に認める高級車である。価格もそれだけに高く、このTTC・C仕様は244.3万円と、これまたトップクラスである。
この車に乗ると、ドライバーはたちまち怠け者になる。なにしろ、ドライバーはステアリングを動かすこと、時折ブレーキを踏むこと以外、必要な動作はいらない。動力性能についても充分であるという表現しかできない。
テスト車の3スピード・オートマチック(フロアセレクター)は、ややセカンドへのキックダウンが敏感すぎて、スロットルを少し深く踏むと、セカンドヘシフトダウンしてしまう。だが、これは高速道路で前に立ちはだかる大型トラックを追い抜くには大いに活用できた。キックダウンでエンジン音も一瞬高まるが、シフトアップと共に、本来の静粛なキャビンに戻る。
最高スピードは、カタログデータで160km/h。だが、この数値は、この車に関してはあまり意味を持たない。むしろ100-130km/hぐらいの加速と、そのスピードレンジでの静粛性であろう。130km/h位のエリアでもエンジンを含めたメカニカル・ノイズは極めて低い。ただ、ボディの風切音が気になった。
ステアリングは、パワーアシスト付きであるが、そのフィーリングはややアメリカ車に近く、極めて軽い。しかし、高速でコーナーの連続する道を80km/hぐらいで飛ばしても不安なく、むしろクイックな感じすらする。(杉江博愛)
■トヨタ・クラウン2600ロイヤルサルーン(75年式・50年規制適合車) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4765×1690×1440mm●ホイールベース:2690mm●車両重量:1495kg●エンジン:直6SOHC●総排気量:2563cc●最高出力:135ps/5400rpm●最大トルク:20.5kgm/3600rpm●トランスミッション:3速AT●駆動方式:FR●当時の車両価格(税込):244.3万円
オマケ情報──第5世代クラウンが「走った」時代
■1974年(昭和49年)の出来事
パレスチナ・ゲリラがクエートの日本大使館占拠(2月)。東アジア反日武装戦線による三菱重工ビル爆破事件(8月)。ニクソン大統領辞任(8月)。朴韓国大統領が狙撃される。夫人死亡(8月)。日本赤軍、ハーグの仏大使館を占拠(9月)佐藤栄作、ノーベル平和賞受賞(10月)。巨人・長嶋茂雄、現役引退(10月)。小野田元少尉、フィリピン・ルバング島で発見(3月)。原子力船「むつ」放射能漏れ(9月)。東京国立博物館で「モナリザ展」。150万人が入場(4月)。セブン・イレブン1号店が東京・豊洲にオープン(5月)。宝塚歌劇「ベルサイユの薔薇」上演。ユリ・ゲラーの登場で超能力ブーム。『文芸春秋』11月号に、立花隆「田中角栄研究」を掲載。
■1975年(昭和50年)の出来事
サイゴン陥落。ベトナム戦争終結(4月)日本赤軍、クアラルンプールの米大使館占拠(8月)。超法規的措置で過激派釈放。仏ランブイエで第1回先進国首脳会議(サミット)開催(11月)。山陽新幹線(岡山~博多間)開通(3月)。このとし広島東洋カープ初優勝。エリザベス女王来日(5月)。沖縄国際海洋博覧会開催(7月)。国際婦人年。田部井淳子、女性として初のエベレスト登頂(5月)。沢松和子、英ウィンブルドン・テニス女子ダブルス優勝(7月)。報知新聞社より「Made in U.S.A.カタログ」発売。アグネス・ラム、初代クラリオンガールに。紅茶キノコがブーム。村上龍「限りなく透明に近いブルー」で芥川賞受賞。天皇・皇后、初の訪米。バイキング1号、火星に着陸。
■1976年(昭和51年)の出来事
米上院公聴会でロッキード事件表面化(2月)。田中角栄前首相逮捕(7月)。河野洋平ら新自由クラブ結成(6月)。ソ連のミグ25戦闘機が函館空港に強行着陸(9月)。ソ連、200カイリ漁業専管水域設定を布告(12月)。モントリオール・オリンピック開催。日本女子バレー、金メダル獲得。鹿児島で5つ子ちゃん誕生。具志堅用高WBA世界ジュニアフライ級チャンピオンに。富士スピードウェイにて、日本で初めてのF1クランプリ開催。51年排出ガス規制。10モード燃費公表制始まる。『ポパイ』創刊。南北ベトナム統一で、ベトナム社会主義共和国誕生(7月)。周恩来首相死去(3月)。天安門事件(4月)。毛沢東主席死去(9月)。江青ら四人組逮捕(10月)。VHSビデオテッキ登場。ピンクレディー『ペッパー警部』でデビュー。
■1977年(昭和52年)の出来事
赤軍派日航機ハイジャック。ダッカ空港に強行着陸(9月)。超法規的措置で6人釈放。中山千夏ら革新自由連合発足(4月)。日本が領海12カイリ、漁業専管水域200カイリを実施(7月)。巨人・王貞治、756本のホームラン世界記録を樹立。国民栄誉賞の第1号に(9月)。樋口久子が全米女子プロゴルフ選手権で日本人初優勝(6月)。国民の90%が中流意識と発表。外貨準備高が史上最高と大蔵省発表。青酸入リコーラ事件。マイルドセブン発売。平均寿命世界一に。米、惑星探査衛星ボイジャー1/2号打ち上げ。静止気象衛星ひまわり1号打ち上げ。池田満寿夫『エーゲ海に捧ぐ』で芥川賞受賞。日劇ダンシングチーム、最終公演(4月)。大阪・千里に国立民俗学博物館開館(11月)。レコード大賞は沢田研二『勝手にしやがれ』。新人賞こは清水健太郎『失恋レストラン』。
■1978年(昭和53年)の出来事
成田空港管理塔に過激派乱入、開港延期(3月)。新車京国際空港開港(5月)。福岡で深刻な水不足(6月)。東京・両国の花火大会復活(7月)。沖縄で道路通行の切り替え実施。「人は右、クルマは左」に(7月)。日中平和友好条約、北京で両国外相が調印(8月)。キャンディーズ解散、普通の女の子に(4月)。植村直己、犬ぞりを使い世界初の単身北極点到達(4月)。サザンオールスターズ「勝手にシンドバッド」でデビュー(6月)。青木功、英のコルゲート世界マッチプレー選手権で優勝(10月)。ドラフト会議前日の「空白の1日」に巨人と江川卓が契約(11月)。『スターウォーズ』『未知との遭遇』、日本公開。池袋に起高層ビル・サンシャイン60誕生。VAN倒産。原宿には竹の子族が出現。
※編集部註:掲載本文は1975年~のモーターマガジン誌から抜粋しています。技術的表現などは、当時の表記を優先しています。画像の一部(トヨタ博物館所蔵の黒いスーパーデラックス)は、写真:早川俊昭。
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みんなのコメント
静かに走る車だった。
ラジオのアンテナが外には無くて、フロントガラスにプリントされていたのに驚いた。
ワイパーもボンネットのところに隠してあって作動させるときにだけ出てくる。
走り始めると自動でロックがかかるのも、当時としては珍しい装備だった。
当時、小学生だった自分には異次元の車だった。