お洒落で乗りやすくて維持しやすいお勧めモデル
クラシックカー人気が続く中でこれまで以上に注目されるようになったのが、昭和なクラシックカーに乗っている「旧車女子」たちだ。
これから輸入旧車ライフを始めるならアルファロメオ・ジュリア! プロが1点指名するワケは?
彼女たちがチョイスしているのは、ショップがたくさんあり、パーツの供給状況が良好で、見た目も内装もオシャレなクルマということになる。これから昭和なクラシックカーに乗ろうと思っている男性陣や、アガリの一台を探しているオジサン世代にもオススメできる定番車が多いので、代表的なモデルをピックアップしてみた。
その1:クラシックミニ(1959~2000年)
まずご紹介するのは、「クラシックミニ」だ。小型車の歴史に革命をもたらした傑作車「ミニ」が登場したのは1959年8月26日のことだった。オースチンとモーリスの合併により誕生し、英国最大の自動車メーカーとして君臨したBMC(ブリティッシュ・モーター・カンパニー)からリリースされたミニは、それぞれのブランド・イメージを活かすために、デビュー当初は「オースチン・セブン/モーリス・ミニ・マイナー」と呼ばれていた。
「ADO15」というコードのもとで開発が進められたミニの全長は3m強ほどしかなく、モノコックにより形作られたボディの四隅に愛らしい10インチタイヤが配されていた。短いノーズのなかにはエンジンやトランスミッションをはじめとする駆動系が収められたが、少ないスペース内にすべてを詰め込むためにエンジンとミッションが2階建て構造になっていた点が特徴だ。
トランスミッションはデフごとエンジンのオイルパンのなかに漬けられており、エンジン、トランスミッション、デフが一体となったこのパワートレーンを横置きで搭載。それが前輪を駆動するという、画期的なメカニズムを採用していた。
エンジンルームをコンパクトにできたことが幸いし、ミニには驚くほど広い室内空間が備わっていた。また、走りのよさも特筆もので、そのポテンシャルの高さはモータースポーツ・シーンでもいかんなく発揮された。
現在もアフターマーケットパーツの流通量の多さがハンパないので、コストをかければ完調を保つのが容易なクルマの代表選手である。ハンドルやペダル類はそれほど重くないため、操作するのが難しくない点も魅力だ。
その2:フィアット・ヌォーヴァ500(1957~1975年)
続いて紹介するのは「フィアット・ヌォーヴァ500」だ。「ルパン三世」の愛車としても知られる2代目フィアット500(チンクエチェント)は、イタリア語で新型を意味するヌォーヴァ(Nuova)を車名のアタマに付けて1957年に登場した。第二次世界大戦前後に生産された初代フィアット500(トポリーノという愛称でも呼ばれている)が存在しているので、ヌォーヴァになったわけだ。
現行型の「フィアット500」がモチーフとした曲面主体のモノコックボディで剛性を保っていたヌォーヴァ500は、車体の後部に排気量479ccの空冷2気筒エンジンを搭載しているRR(リヤエンジン・リヤドライブ)車で、広くはないが大人4人が移動できるスペースがしっかり確保されていた。
先んじて1955年に排気量633ccの水冷4気筒エンジンを車体の後部に積んだ「フィアット600(セイチェント)」が登場していた。だが、より多くの人に四輪車をという想いから、ボディを600よりもさらに小型化し、エンジンの排気量も小さくした500が生まれたのだ。価格が抑えられていた点も特徴だった。
空冷2気筒エンジンの最高出力はわずか15psだったが、90km/hという最高速をマークできた。「600」の100km/hには負けてしまうものの実用上は十分だったといえる。スクーターをおもな移動手段としていたイタリア国民に、四輪車のメリットを強くアピールして販売台数を増やし、その後、販路をヨーロッパ全土に拡大。バリエーションを増やしながら1975年まで造られ、その総生産台数は367万8000台に達している。
クラシックミニと同じように専門店がたくさんあり、アフターマーケットパーツの流通量が多いので、それなりの総額となるが、買ってから仕上げるという楽しみ方をしてもいいだろう。ハンドルやペダル類は軽いが、クラシックミニほどブレーキが強力ではないので、スムースに走らせるためには少しばかりのテクニックが必要であることをお伝えしておく。
その3:フィアット・パンダ(初代/1980~2003年)
ジョルジェット・ジウジアーロがデザインを担当し、彼の傑作のひとつとして数えられている初代「フィアット・パンダ」は1980年にデビュー。斬新なコンパクトカーで、平面ガラスと曲面を見つけるのが難しいボディパネルで構成されたスタイルが特徴だ。
日本へは、まず排気量902ccの水冷4気筒エンジン搭載車が1982年に上陸した。ちなみに、ヨーロッパでは、排気量652ccの空冷2気筒エンジン搭載車もラインアップされていた。ウェーバーのシングルキャブを備えたエンジンは、当時の日本車と比較するとやや非力だったが、エンジンを思い切り回すと元気よく走ってくれた。そういうところもイタリア車の魅力のひとつである。メーカー発表値の最高速は140km/hで、十分な性能を与えられていた。
シートはパイプフレームをベースとしたハンモックタイプで、シンプルながらホールド感と座り心地のよさを両立。4×4という名の4WD車もラインアップされており、予想を超える走破性を持つコンパクトカーとして日本でも数多くのファンを獲得した。
1986年にリリースされた後期型は、フロントグリルのデザインが変わっているのですぐさま判別でき、水冷4気筒エンジンの排気量が999ccへと拡大された。最終型のパンダ・スーパーieはキャブをインジェクションに代え、より一層のパフォーマンスアップが図られている。
1991年に無段変速機(CVT)を備えた「セレクタ」と呼ばれる2ペダルのグレードが登場しており、パワーアシストが無いハンドルが少し重いものの、セレクタであれば免許を取り立ての女性であっても容易に運転することができる。セレクタに採用されたベルト式CVTは、富士重工業(SUBARU)から供給されたECVTで、これがトラブルを起こすと厄介。購入時は必ず試乗し、ギクシャクしないで走れることを確認していただきたい。
その4:フォルクスワーゲン・ゴルフII(1983~1992年)
スタイリングとパッケージングをジョルジェット・ジウジアーロが手がけ、世界の大衆車のベンチマークとなった「VWゴルフ」は、1983年のフルモデルチェンジで2代目へと進化。「ゴルフII」と呼ばれる2代目のデザインは初代を踏襲したもので、これはVWの社内でデザインされたものだ。ボディ形状は3ドアと5ドア。
グレードは、Ci、CLi、GLi、GLX、GTI、GTI 16Vというラインアップで、Ciがベーシックグレード、GLiが上級グレード、グリルやバンパーなどに赤いストライプが入るGTIが走りに特化したホットバージョンということになる。
1974年に登場したゴルフIが1983年にゴルフIIへとフルモデルチェンジした際に、オープンモデルの「カブリオ」は初代のボディを持つ仕様がそのまま継続販売されるかたちとなった。モデル末期の1991年に最終限定車の「クラシックライン」が発売され、初回の販売時にグリーンメタリックとダークブルーメタリック、2度目の販売時にグリーンメタリック、ダークブルーメタリック、ワインレッドメタリックがリリースされた。
ゴルフIIはサイズ的にも性能的にも「ちょうどいいクルマ」で、なおかつ丈夫なので長く付き合うことができる点がポイントだ。いまでも、バランスがいい、ボディが軽い、剛性が高い、構造がシンプル、ヘンな電子制御が入っていない、走らせて楽しい、室内が広い、使い勝手がいい、足まわりがしっかりしている……などなど、ゴルフIIを紹介する際の褒め言葉は山ほどあるので、クラシックカー界においてもベンチマークなのであった。
買って失敗しないといえるが、1983年にデビューしたクルマなので、日常の点検や転ばぬ先の杖的な整備などをきちんとする必要があることをお忘れなく。
番外編:アルファロメオ2000GTV(1971~76年)
往年のアルファロメオなので「昭和なクラシックカー」というよりも「バリバリの旧車」と記したほうがいいような気がするが、「アルファロメオ2000GTV」を愛用している旧車女子もいるので、最後に紹介しておこう。
初代「ジュリエッタ」の後継モデルとして1962年に登場した「ジュリア」は、当初ベルリーナ(イタリア語でセダンのこと)のみが新しいボディでラインアップされた。完全なる新型車として先行登場した4ドアセダンは、コンパクトな車体にスポーツカー並みのDOHCエンジンを積んだ高性能サルーンとして人気を博し、アルファロメオは後に大人気モデルとなる2ドアクーペ仕様をその好況下で市場投入した。
2ドアクーペのエクステリアのデザインを担当したのはカロッツェリア・ベルトーネで、若き日のジョルジェット・ジウジアーロが手腕を発揮。現在も彼の代表作のひとつとなっているこの新しい2ドア4座クーペは1963年に登場し、「ジュリア・スプリントGT」という車名が与えられた。
ベルリーナやスパイダーと同じように2ドアクーペもつねに進化発展していったが、ジュリア・スプリントGTは1964年にカロッツェリア・トゥーリングがオープン化した「ジュリア・スプリントGTC」が追加設定された。そして、高性能版の「ジュリア・スプリントGTヴェローチェ」(GTVとも表記。ヴェローチェ=イタリア語で、速い、の意味)が1965年に登場した。
このパワーアップ・バージョンの登場により、オリジナルのジュリア・スプリントGTは1966年に生産終了となり、1967年には段無しボディに4灯式ヘッドライトを組み合わせた「1750GTV」が登場。そして、1971年に1750GTVが「2000GTV」へと発展した。
アルファロメオ・ジュリア・シリーズの最終バージョンである2000GTVには、3速AT仕様も用意されており、この仕様(1975年式2000GTV)を筆者の古くからの知人であるTさんが2011年から愛用している。
「オートマですけど、めちゃくちゃ速く、加速もイイです。北海道を一周してきたことがあり、今度は九州を走ってきます」とはTさんの言葉で、旧いアルファロメオのある生活を日々満喫しているのであった。
とにかく丈夫で理不尽な壊れ方をしないジュリア・シリーズは、輸入車ビギナーも安心して買うことができる。毎日乗れる旧車として、いま人気が再燃している最中だ。
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