もくじ
どんなクルマ?
ー 最大のライバルはミニ
どんな感じ?
ー ライバルを研究したデザイン
ー 余裕の出た後部座席とラゲッジルーム
ー ホットハッチとまではいえない
「買い」か?
ー 直球勝負の文法でも一味違う
スペック
ー アウデイA1スポーツバック30TFSI Sラインのスペック
ジムニー×ランドクルーザー 英国で、比較試乗 優れた走破性とキャラ評価
どんなクルマ?
最大のライバルはミニ
最新のアウディA1が登場した。しかし、メインストリームを構成するモデルかと聞かれれば、A2もA1も、違うといえるだろう。むしろ両車ともに、どちらかといえばニッチモデル。今回のモデルチェンジでは唯一で最大のライバルを猛追するべく、洗煉性を増している。そのライバルの名前は、5ドアのミニ・ハッチバック。
2代目になったA1は、5ドアのみの設定となる。先代のA1オーナーのうち、3ドアを選択したひとは20%程度だったとのこと。フォルクスワーゲン・グループのMQB -A0アーキテクチャを採用するが、小型で比較的廉価な設定となるモデルということで、収益性も高くはないから、仕方ないかもしれない。
エンジンは小排気量のガソリン仕様のみで、最高出力は166psから199psまでの設定となる。トランスミッションはマニュアルとデュアルクラッチATから選択でき、すべてのグレードで前輪駆動となる。スポーツバージョンのS1も追って登場するであろうことは、想像に難くない。
アウディの現行モデルには、エンジンの最高出力に応じて数字を割り当てる、グレード名を決めるルールがあるが、最新のA1には3種類のグレードが存在する。A1 30には116psを発生する1.0ℓユニットが搭載され、35には149psの1.5ℓユニットが、40には199psの2.0ℓユニットが搭載される。今回の試乗では30から40まですべてのグレードを試したが、ほとんどの時間は35を運転することになった。
また英国の場合、95psを発生する1.0ℓユニットを搭載したA1 25も2019年2月に登場する予定。25の場合は1万8000ポンド(266万円)以下になる見込みで、30は2万ポンド(296万円)前後となる。もちろんミニのように、3万ポンド(444万円)に届くグレードも選べる。
BMWミニとどのように伍するのか、早速見ていこう。
どんな感じ?
ライバルを研究したデザイン
最新のA1のボディサイズが先代よりも大きくなっていることには、驚きはないが、遂に全長は4mを超えてしまった。先代では後部座席が狭いという意見が多かったようだ。その反面、全幅、全高ともにやや小さくなっており、アウディらしいスタイリッシュなアピアランスを与えている。
アウディによれば、エクステリアデザインはモータースポーツを想起させるものに仕上げたという。フロントグリル上の3本のスリット状のエアインテークは、スポーツ・クワトロのラリー仕様車をイメージさせるし、ヨットや水中翼船をモチーフにした部分もあるらしい。私感としてはとても良い仕上がりだと思う。またリアビューミラーで目にするような斜め前、フロント・クオーターアングルの雰囲気は、かなり迫力があるように思う。
このエクステリアデザインのテーマは、エアベントが水平に並ぶ、ドライバー・オリエンテッドな車内空間にも反復している。恐らくアウディの開発チームは、ミニの5ドアをワークショップに持ち込んで、何がこれほどまでに魅力的な存在に高めているのか、検討したのだろう。エクステリア、インテリアともに自由にカスタマイズできるようになっており、複数のデザインテーマから組み合わせられるだけでなく、ボディ色やホイール、ルーフの色なども選べ、その組み合わせは100万通り以上にも及ぶそうだ。
インテリアのデザインテーマは、アウディとしても新しい挑戦をしており、なかなか魅力的。触感以上に、視覚的にも注力しているようだ。ただ、ライバルモデルと比較して仕立ての良いアウディのインテリアに見慣れているひとにとっては、ドアパネルやダッシュボードにプラスティックが露出していることに、驚くかもしれないけれど。
余裕の出た後部座席とラゲッジルーム
手や肘で触れるような部分の仕上げも良くなく、正直、少しがっかりさせられる。ダッシュボードの上面は、柔らかく加工された素材が用いられており、防音効果やフロントガラスへの映り込みの軽減には繋がっているとは思うが、触れることはない部分だったりする。
オーディオ関連の操作はすべてセンターのタッチモニターで行うようになり、オプションでモニターのサイズは一回り大きくすることも可能。操作を補助する物理的なコントローラーは備わらないから、モニターは大きい方が良いかもしれない。ただ、小さな画面でも手持ちのスマートフォンと連携すれば、さほど問題になならないかもしれない。
先代よりも94mm長くなった、2563mmのホイールベースのおかげで、後部座席も広くなり、普通の大人が腰を掛けても快適だ。ラゲッジスペースも後部座席を活かした状態で335ℓ、折りたためば1090ℓと、充分な容量が確保されている。ちなみにこれはミニよりも大きい。サスペンションも、コンパクトさが売りのトーションビーム式がリアには採用されている。フロントは、ストラット式となる。
SEグレードかスポーツグレードを選択すれば、ダイナミクス・サスペンションが装備され、Sラインにはスポーツ・サスペンションが組み合わされる。2.0ℓエンジンを搭載する40には、アダプティブダンパーが標準装備となる。今回試乗した1.0ℓと1.5ℓのふたつのグレードには、オプションとなるスポーツサスペンションが装備されていた。
ホットハッチとまではいえない
エクステリアを引き締めるアルミホイールは、15インチから18インチまで選べる。今回の試乗車では、30と40は17インチを、35は18インチのホイールを履いていたが、明確な乗り心地の違いは感じられなかった。
A1は、たとえアダプティブダンパーを柔らかいセッティングにしても、優れたボディコントロール性を備えている。ただ、乗り心地は快適とはいい難く、ボディは終始落ち着かず、路面状態によってはかなりの音量のロードノイズも聞こえてしまう。
ほかにもドライビングに関わる設定として、ATの変速レスポンスやステアリングホイールの重さなども変更できるし、アダプティブダンパーの硬さも調整が可能。しかし、最終的にはパワートレインは最も活発に、サスペンションとステアリングホイールは最も穏やかな状態が、わたしはベストだと感じた。
ミニがゴーカート・フィーリングと呼ばれる、クイックな味付けにしている中で、このクラスメイトも似た味付けを狙ったかのようにすら思える。A1のステアリングフィールはレスポンスに優れ、シャシーも鋭いコーナリングで応えてくれる。しかし、コンパクトなボディで俊敏な回頭性を持っていても、2.0ℓエンジンを選択しない限り、ホットハッチに乗っているという感覚は薄い。1.5ℓエンジンでは加速の面で物足りなさがあるし、1.0ℓでは約束の時間に遅れそうな時に、ヤキモキしそうだ。
「買い」か?
直球勝負の文法でも一味違う
アウディはコンパクトカーを欲しいと考えるひとの嗜好を、しっかり考察したのだろう。ややアグレッシブなエクステリアデザインに魅力的なインテリアデザインを組み合わせ、カラーやオプションの設定もふんだんに用意してある。反面、メカニカルな部分では、おなじみの設定となっており、不安感も少ない。
アウディA1は、小さなアウディに期待する通りの、見た目と中身を備えている。しかし、ドライブトレインに目新しさはなく、運転にこだわりを持つひとにとっては、物足りないかもしれない。インテリアに用いられているプラスティックの雰囲気や乗り心地は褒められないが、最近のアウディの中では白眉の旋回性能を持っている。
アウディA1は、コンパクトカーの文法としては直球勝負しながらも、内に秘めた驚きも持ち合わせた、一味違うクルマだと思う。すべてを褒めることは難しいとしても、決して否定だけで終わるクルマではないといえる。
アウデイA1スポーツバック30TFSI Sラインのスペック
■価格 2万1660ポンド(320万円)
■全長×全幅×全高 4029×1740×1409mm
■最高速度 202km/h
■0-100km/h加速 9.5秒
■燃費 20.3km/ℓ
■CO2排出量 111g/km
■乾燥重量 1180kg
■パワートレイン 直列3気筒998ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 116ps/5000-5500rpm
■最大トルク 20.4kg-m/2000-3500rpm
■ギアボックス 6速マニュアル
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