■新車の納期遅れが極めて深刻なのは「トヨタ」だった
新車の納期遅れが深刻な状況になっています。
なかでも国内TOPシェアを誇るトヨタ車の相次ぐ生産休止が大きく響き、2022年8月度の販売登録台数ランキングではこれまでTOP10をほぼ独占していたトヨタ車の銘柄が5モデルしか入っていない事態に。
9月時点でのトヨタをはじめとする各メーカーの状況と、今後の新車販売について探ります。
ここにきて新車の納期が大きな問題になってきているようです。身近なケースを紹介しましょう。
筆者(国沢 光宏)の場合、今年2022年3月にトヨタの新型「ノア」を注文しています。
当時の納期を購入店に聞くと「半年まではかからないと思います。夏が終わる頃には何とか納車出来ます」。
2ヶ月ほど経過した頃、別件で連絡があり「申し訳ありません。納車は年内くらいを想定して頂けますか?」。
そして直近では、来年2023年の春という話になってしまいました。
トヨタのWebサイトでは最新の納期目安(「工場出荷時期目処」)を案内していて、そこには驚きの結果が載っています。
2022年9月13日時点での情報では、トヨタの乗用車および商用車36モデルのうち、半年待たないで買えるのは10モデルのみ!
しかも10モデルのうち半分くらいがハイエースのような商用車か、ダイハツで生産しているモデル。
純粋なトヨタの乗用車だと、旧型からキャリーオーバーされたビジネス向けモデルの「カローラ アクシオ」「カローラ フィールダー」と、あとは「ヤリス」(SUV「ヤリスクロス」は除く)のみ。さらに17車種は納期が全く見えないという状況です。
どうなっているのかといえば、半導体不足に代表される部品供給遅れによる生産ラインの休止が多かったからです。
人気の高いSUV「ハリアー」や「RAV4」を生産しているトヨタ高岡工場など、7月は半分以上生産ラインを動かせなかったといいます。
ここにきて少しずつ状況も良くもなってきているようですが、いまだフル生産にほど遠い状況にあります。
納期半年以上となっているコンパクトカー「アクア」の場合、2022年8月の登録台数は前年同月の47.2%。半分しか造れていないのです。
トヨタ車以外はどうかというと、非常に興味深い状況になっています。
ホンダも納期情報を出しているのだけれど、トヨタほど厳しくはありません。
コンパクトSUV「ヴェゼル」や軽の「N-BOX」、ミニバンの「ステップワゴン」に代表される人気車の納期は半年以上となっています。
けれどトヨタと比べ、納期が短い車種がググッと多くなります。ヤリスの競合車である「フィット」ですら納期1ヶ月と短く、オーダー入れたら割とすぐに納車されると考えてOKです。
同じく納期を発表しているスバルといえば、納期4ヶ月を超える車種はありません。
日産はというと、相変わらずユーザー視点の配慮が無いようで、公式サイト上で納期を公表していません。
調べてみると「ノート」や発売したばかりの新型「エクストレイル」、電気自動車の「SAKURA」「ARIYA」は半年以上待たなければならないようです。
納期3年とも言われるフェアレディZは受注停止中で、それ以外は常識的な納期を考えれば良い模様です。
■トヨタ車の納期長期化も競合各社には追い風! 対策は急務の課題だ
このように、全般に納期が長いといわれる車種の上位は、基本的にトヨタ車が占めていることがわかります。
考えてみたら、今や国内シェアの半分はトヨタなので、大半のトヨタ車の納期が遅れていれば社会的な問題になって当然かもしれません。
もっというと、トヨタの生産状況回復により、国内シェアは大きく変わる可能性も大きいでしょう。
2022年8月にフルモデルチェンジした新型「シエンタ」を例に挙げてみましょう。
7年前に出た従来型だと、衝突被害軽減ブレーキ(いわゆる自動ブレーキ)に代表するADAS(先進運転支援機能)の性能でライバルのホンダ「フリード」に勝てませんでした。
当然ながら販売台数の面でフリードが圧勝となっています。
しかし新型になって商品力が逆転し、新型シエンタ優位となりました。
これでドッと新型シエンタに流れるかとなれば、すでに納車待ちが長期化していて、欲しくとも買えない状況にあります。
ということで、引き続き現行型のフリードも売れ続けることが予想されます。
けれどこの先、新型シエンタの納期が短くなったら、ライバルに対し全ての性能で勝ることから、受注も増えることでしょう。
つまり現状では「トヨタ車だと納期が掛かるので他メーカーを考えている」人が多いということです。
2022年に相次いでフルモデルチェンジした新型ミニバンのトヨタ「ノア」とホンダのステップワゴンという競合車の場合もそうです。
広義でいえばハリアーやRAV4の競合車、アクアの競合車、ヤリスクロスの競合車等々、トヨタの生産増えたら少なからぬユーザーを持っていかれると覚悟しなければならない。
実際、2022年8月の新車登録台数を見ると、TOP10にトヨタ車が5車種しか入りませんでした。
そんな記憶は、ここ数年の間でありません。普通ならTOP10に7車種か、8車種ということだって珍しくないですから。
話をまとめます。
トヨタの供給不足で、現時点では他社も比較的良い数字になっているものの、トヨタの生産が順調になったら驚くようなシェアになる可能性が出てきた……ということを、皆さんあまり認識出来ていないように思います。
今から真剣にトヨタ対策を講じておかないと、国内各メーカーは地滑り的に顧客を奪われるかもしれません。
ただトヨタに聞くと「フル生産に戻るメドは立っていません」。ホンダや日産などライバル各社は、対応を急ぐ必要があるでしょう。
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