千葉県南房総市にこのほど、あのコーンズが手がけたアジア初の超高級会員制ドライビングコース「THE MAGARIGAWA CLUB」がお披露目された。全長3.5kmのドライビングコースと、リゾートホテルのようなクラブハウスなどを備えたアジア初の施設だ。野次馬根性で紹介してみよう!
文/清水草一、写真/コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド
ゴージャス過ぎじゃね? 入会金3600万円は富裕層には高くない!? 千葉に現れたセレブ向けコースとはいったい?
■コーンズがアジア初のドライビングクラブを開設!
千葉県南房総市に開業したアジア初の富裕層向け会員制ドライビングクラブ「THE MAGARIGAWA CLUB」
千葉県に、アジア初の富裕層向け会員制ドライビングクラブ「THE MAGARIGAWA CLUB」が開設された。全長3.5kmのコースを中心に、富士山を望むプールや温泉、コースを見渡せるラウンジにレストラン、さらにはドッグランなども用意されている。正会員の入会金は現在3600万円、年会費22万円とのことである。
オーナーズパドック内には贅沢なバーラウンジも完備されている
施設内には宿泊棟であるオーナーズパドック(全9棟)も設けられるが、広さは245平方mから528平方mと、想像を絶する広さだ。こちらの価格はすべて億超えである。
何ともゴージャスなオーナーズパドックは全9棟用意されている
このクラブを設立したのは、フェラーリやロールスロイス、ベントレー、ランボルギーニ、ポルシェの正規ディーラーであるコーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド。さすがと言うしかない。
ドライビングシミュレーターもこのとおり!
一般人にはまったく無縁の施設だが、ここまでゴージャスだと、野次馬心理が働いてしまう。最初の興味は、「いったいどんなコースなのか」ということだ。
■スポーツランドSUGOと同じ全長3.5kmのコース!
スポーツランドSUGOと同じくコースの全長は3.5kmに設定されている。山の中に突如として登場した印象だ!
場所は千葉県南房総市。房総山地のど真ん中だ。標高は高くないが、山の険しさはかなりのもので、「こんなところにサーキットを!」と思ってしまう。
このロケーションは、「都心や羽田空港、成田空港から1時間強」であることを意識して決められた。つまり、国内外の富裕層が気軽に来られる距離ということだ。
コースの全長は3.5km。富士や鈴鹿にはかなわないものの、スポーツランドSUGOとほぼ同じ。まったくもって本格的である。
■勾配のキツさは半端ではない!
このコースの下り勾配区間はそのほとんどがストレート区間となる構成。最大勾配は下りでは16%!
山岳コースだけに凄いのは勾配で、上り最大20%、下り最大16%だ。「峠道のよう」と形容されるが、勾配がきついことで有名な箱根ターンパイクでも、平均勾配7%、最大10%に過ぎない。上りはともかく、下り勾配16%を全開で加速するのは、猛烈に恐ろしいのではないだろうか?
しかもこのコース、下り勾配の区間は、大部分がストレートだ。メインストレートは800m。鈴鹿のグランドスタンド前のストレートと同じ長さがある。それが下りの急傾斜なのだから、誰も経験したことのないジェットコースター気分が味わえるに違いない。
800mのストレートエンドには、スプーン型の複合コーナーが待っている。左右に切り返すコース取りなので、ストレートから真っすぐ突っ込んでしまっても、ランオフエリアを比較的長く使うことができる。
ここを折り返すと長い上りストレートとなり、最終区間は、左右に複合コーナーが続く上りテクニカル区間となる。コース図とバーチャル走行動画を見れば見るほど、玄人好みのチャレンジングでテクニカルなコースだとわかる。
■あのヘルマン・ティルケがコースを設計!
世界中の名だたるF1コースの設計を手がけてきたヘルマン・ティルケ氏率いる「Tilke Engineers&Architects」が担当
それもそのはず、このコースを設計したのは、ヘルマン・ティルケ氏率いる「Tilke Engineers&Architects」。ティルケという名前は、モータースポーツファンなら知らない人はいないだろう。
1990年以降にオープンしたF1開催コースの多くを設計した実績を持っており、これまで、19のF1開催サーキットを含む、80以上のサーキットを全世界でデザインしている。
ティルケ設計の特徴は、従来の古典的なサーキットとは違った、安全でチャレンジングなコース作りにある。複合したRを持つトリッキーなコーナーが多く、アップダウンや路面のカントも微妙に変えることで、ドライバーのミスを誘ってくる。テクニックが要求される半面、征服する快感は格別だ。
日本では、富士スピードウェイの最終コーナー改修を手がけている。あのクネクネしたテクニカルな部分はティルケ設計。私は個人的にあの区間が大好きだ。一見どうコース取りしていいのか戸惑うが、一度攻略法を覚えると、何度走っても奥が深くて楽しいのである。
安全性に関しては、ランオフエリアを広く取り、グラベルではなく、舗装を採用するのが特徴。つまり、ランオフエリアで減速して方向転換することができる。近年のF1を見たことのある人ならご承知のことだろう。
ランオフエリアエンドには、古典的なタイヤバリアを使わず、衝撃吸収性能の高い素材を採用する。ここTHE MAGARIGAWA CLUBも同様だ。
ティルケ側も、こんな山岳地にコースを設計するのは初めての経験で、それだけに挑戦意欲を掻き立てられたという。「世界でも稀に見るユニークなコースを作ることができた」と胸を張る。
■コースアウトしただけならマシンは無事に済むのが特徴
高価なマシンを持つ富裕層のオーナーばかりとなるため、コースアウトしただけならマシンは無事で済む設計となっている
サーキットでコースアウトしてグラベルにつかまると、マシンもダメージを負ってしまうが、ティルケサーキットの場合はコースアウトしただけなら無事というのは、高価なスポーツカーを走らせるオーナーにとって、安心材料ではないだろうか。
それにしても、あの下り勾配は大丈夫かと、他人事ながら心配になるが、コーンズ側は、「これはサーキットではなく、真のドライビングコースです」とアナウンスしている。つまり、タイムを競うのではなく、運転を楽しむための場所だということだ。下りはゆっくり走って、上りだけ攻めたっていい。
入会金3600万円は、一般人には目玉が飛び出る金額だが、新車のフェラーリ1台分と思えば、富裕層には決して高くはないだろう(オープンから6年後以降に譲渡可能だそう)。
ちなみにゴルフ会員権だと、小金井カントリークラブ(東京都)が5000万円前後で最高らしい。
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