昭和は遠くなりにけり・・・か。以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は「フォード フェスティバ 1300GT」だ。
フォード フェスティバ 1300 GT(DAJPF型):昭和61年(1986年)12月発売
フェスティバはマツダの5チャンネル体制の一角をなす「オートラマ」初の新開発専売車だった。既存のマツダ製フォード ブランド車と異なり、いわゆる兄弟車はない。1986年(昭和61年)2月「エンジョイ・カーライフの提案」と銘打って発売されるや、フォード ブランドであることに加え、日本車離れした独特の2BOXフォルムやブリスターフェンダー、日本初の電動キャンバストップ、新開発エンジンなどがシティ派ユーザーに支持され、確実に地盤を固めていく。
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だが、1980年代後半の1.0~1.3Lクラスはターボの全盛期。シティ、マーチ、スターレットなどがターボパワーで覇を競っていた。また、1986年6月にはカルタスに1.3LのDOHC16バルブを積んだ1300GT-iが登場。こうなるとベース車の良し悪しにかかわらず、フェスティバにも高性能を象徴するイメージリーダーが求められたのは必然とも言えた。
1986年10月、マツダはフェスティバのイメージリーダーとしてGTとGT-Xを発表する。新開発されたBJ型エンジンは、国内2例目となる1.3LのDOHC16バルブだ。フェスティバ1300のB3型をベースにベルト駆動の4バルブDOHCヘッドを架装したチューニングエンジンで、7500rpという高い許容回転数を実現するためボア×ストロークをB3型の71×83.6mmから78×67.5mmという超ストロークタイプとしたのが特徴だ。
超高回転型エンジンで避けられない低速トルク不足はVICS(可変吸気システム)で補っている。VICSは、各気筒の吸気ポートをプライマリーとセカンダリーにわけ、低回転時は吸気慣性効果を高めるため可変吸気バルブを閉じてプライマリーポートのみ作動、高回転時はバルブを開いて大量の空気を送り込む方式だ。
また、超高回転を実現した技術として、ペントルーフ型燃焼室、HLA(ハイドロリック・ラッシュアジャスター)、フルカウンタークランクシャフト、デュアルタイプエキゾーストマニフォールドなど、緻密なメカニズムが採用されている。トランスミッションは、エンジンの「ドライバーの感性にマッチしたクイックレスポンス」を最大限に引き出すため、5速MTのみの設定だ。
サスペンションは、標準型フェスティバで好評の前:ストラット/後:トーションビームをベースにチューニングが施された。まずフロントスタビライザー径をアップし、リアにもスタビライザーを新設。リアアクスルのロール剛性と路面追従性を高めている。ダンパーは走りの状況に合わせ、スイッチ操作でノーマルとハードに切り替えられるA.S.A.(アジャスタブル・ショックアブソーバ)を採用した。さらにバネ定数、ダンパー減衰特性サスペンションメンバーの剛性アップなど基本をしっかり磨き上げることで、乗り心地とハンドリングを高次元で両立させている。
外装ではフロントエアロバンパー+フォグランプ、ボンネット上のパワーバルジでDOHCの印象を強烈にアピール。オプションのルーフスポイラー、エアロリアフィニッシャー、ツインマフラーまで装着すればまさにホットハッチらしい押し出し感で魅了した。内装もシンプルな2眼式メーター(左が7500rpmレッドの回転計)、MOMO コブラII 本革巻き3スポークステアリング、ホールド性の高い一クラス上のサイズのヨーロッパ・シート(GT-X)が、同クラス国産2BOXとは一味違う本物感を漂わせている。
このあたりに高性能一辺倒ではないフォード ブランドの片鱗が見えたのも、フェスティバの魅力のひとつだったといえるだろう。
フォード フェスティバ 3ドアHB 1300 GT-X 主要諸元
●全長×全幅×全高:3580×1615×1460mm
●ホイールベース:2295mm
●重量:800kg
●エンジン型式・種類:BJ型・直4 DOHC
●排気量:1290cc
●最高出力:88ps/7000rpm(ネット)
●最大トルク:10.0kgm/4500rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:175/60R13
●価格:125万4000円
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