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【インタビュー】衝撃を受けたヘルメットはどうなる? 使用可否の判断ポイントをSHOEIが解説

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【インタビュー】衝撃を受けたヘルメットはどうなる? 使用可否の判断ポイントをSHOEIが解説

心のダメージは回復できても、ヘルメットが受けた衝撃は残る

「1度でも衝撃を受けたヘルメットは使用してはいけない、とはよく聞くけれど、どのくらいの“衝撃”のことを指すのだろう? それに、衝撃を受けたヘルメットは、実際のところ、どうなっているのだろう?」そんな疑問が浮かんだのは、『Let’sレンタルバイク耐久レース』(以下、レン耐)に参加したわたし(筆者:伊藤英里)が、転倒した後のことでした。

【画像】「この持ち方はOK? それともNG?」を画像で見る(7枚)

 レン耐は、元WGPライダーの青木拓磨さんがプロデュースする、レンタルのミニバイクで楽しめる耐久レースです。気負い過ぎることなく仲間と完走を目指す面白さから、わたしは何回も参加しているのですが、先日のレースで初めて転倒してしまったのです。

 転倒によるショックから回復してあらためて装具を確認しているとき、転倒時、ヘルメットの左側を思いきり地面に打ち付けたことを思い出しました。被っていたSHOEI「X-Fourteen」はしっかりとその安全性能を発揮して、痛々しい傷が残るヘルメットとは裏腹に、頭を打ったことに関する影響は全くありませんでした。

 そこで、上述の疑問が頭に浮かび上がったわけです。バイクに乗るようになってしばらく経ちますが、幸いにも走行中に頭を打つような転倒をしたり、うっかりヘルメットを落としたり、といったことがこれまでなかったのです。

 ここは「餅は餅屋」ということで、ヘルメットのことはヘルメットメーカーに聞きましょう! と、SHOEI商品企画部の田上紗織さんに話を伺いました。

「ヘルメットは、外側の硬いシェルと中の発泡スチロール部分、衝撃吸収ライナーという2つで構成され、それぞれ衝撃吸収性能を持っています。転倒したときの衝撃があまり大きくなければ、外側のシェル部分は一度へこんでも弾性で戻ることがあります。見た目ではそれほど傷がないので、大丈夫だと思ってそのまま被っている方もいらっしゃるかもしれません」

「衝撃を受けた場所を内側から見ていただくと、(そのまま使用が可能かどうか)わかりやすいです。衝撃吸収ライナーは表面が黒く塗装してあり、衝撃を受けると衝撃を吸収してひび割れたようになるんです。衝撃を受けたことがわかるように中は白いままですので、割れたところが見えるようになっています」

 田上さんは、実際に転倒によって衝撃吸収ライナーにひびが入ったヘルメットを見せてくれました。内装のパッドをめくると、黒く塗装された衝撃吸収ライナーが見えるのですが、衝撃を受けた部分は白いひび割れが走っています。外側がきれいでも、内側を確認すると、衝撃吸収ライナーが割れてしまっていることもあるそうです。

「衝撃吸収ライナーのどこかにこうした割れ目ができてしまっていたり、(写真のように)大きなひびが入っていなくても、衝撃吸収ライナーがつぶれていることもあり、その部分も含めて、新品と同等の保護性能を担保できません。転倒して頭を打ってしまったヘルメットに関しては、それ以上は使わないでくださいね」

 しかし、素人の判断では難しいこともあります。転倒ばかりではなく、例えば、バイクのシートなどに置いたヘルメットを落とし、衝撃を与えてしまうこともあるでしょう。

 あまり大きな衝撃ではなかった気もする……でも落としてしまったし……中を見ても、判断に自信が持てない……。

 そんな場合は、SHOEIのオフィシャルショールーム「SHOEI Gallery」や、正規販売店を経由して、SHOEIに使用が可能かどうかを確認してもらうこともできるそうです。少しでも不安があれば、プロの目で見てもらうのがベストでしょう。

ヘルメットの使用期限は?

 ヘルメットにしっかりとその性能を発揮して頭を保護してもらうために、と考えたとき、果たして使用期限はどのくらいなのでしょうか。

「ヘルメットの使用期限は、ヘルメットの使用頻度や保管方法、手入れなどによって異なります。また国内で販売されるバイク用ヘルメットは法律で定められ、安全基準に適合する事が義務付けられていて、その証拠がヘルメットに貼られているPSC/SGマークです。認められた製品は、製品の欠陥により生じた損害に対する賠償が定められています。それを管理している製品安全協会では、ヘルメットの交換目安を“購入から3年”としており、ヘルメットメーカーはこれを推奨しています。使用頻度の高い方などは、3年に満たないヘルメットであっても、劣化や痛みが見られる場合もあります。ヘルメットメーカーの点検を受け、傷みの程度を確認してもらう事をお勧めします」

「最も劣化しやすいのは、内装パーツです。また、あごひも部分も摩耗してくるので、強度はあるものの、使っているとだんだんけばだってきます。あごひもは交換できないパーツなんです。摩耗すると保護性能に支障をきたしてしまうので、そういうところで、交換を目安にしていただければと思います」

 ここで言及されたあごひもは、じつはとても重要なパーツなのだそうです。

「あごひもはそれほど重要視されていないかもしれませんが、本当に重要保安部品なんです。性能にはかなり関わってきます。これをしていないと脱げてしまいますから」

 あごひもの話が出たところで、締め方を確認しましょう。わたしは「指1本分ほど余裕をもたせてあごひもを締める」と習いましたが、田上さんの回答は?

「指1本が入る余裕を残して、あごひもを締めていただくのが適切です。あまり締め過ぎると首が苦しくなってしまいますからね。じつはこれは、どのヘルメットにも入っている安全マニュアルに書かれているんです。とても大切なことがたくさん書いてあるので、みなさんに必ず読んでいただきたいです」

「安全マニュアル」には、あごひもの締め方からヘルメットの被り方、脱ぎ方など、基本的な(そして大事な)ヘルメットの取り扱い方法について書かれているとのこと。ヘルメットについて疑問が浮かんだら、まずはそれに目を通すことが良いかもしれません。

ヘルメットにとっての、NG行為とは?

 では、ヘルメットの性能をしっかりと発揮するために、やってはいけない取り扱いはどんなことでしょう?

「よく見る行為ですが、ツーリングなどの休憩でヘルメットをバイクのハンドルやミラーにかけること。これはやめてください。落としてしまいやすいですし、ミラーなどは角がありますので、中の衝撃吸収ライナーを傷つけてしまう可能性があるんです。ヘルメットはある程度の重さがあるので、自重で負荷がかかってしまうんですね。ヘルメットを置く場合は、できるだけ安定したところに平置きするのがベターです」

 ヘルメットが濡れた場合にも、乾かし方に注意が必要です。

「内装のパッドは中がウレタンで、湿気に弱いんですね。古いソファなどは中のスポンジがボロボロで粉状になってくると思うんですが、それと同じことが起こりえます。内装が濡れた場合はできるだけ早く陰干しして、乾燥させるようにしてください。そうすると、ウレタンの劣化やにおいの発生も抑えられます」

「冬にやりがちかもしれませんが、ストーブで乾かすのは、絶対にNGです。また、汗で濡れた内装を乾かすために、ヘルメットを裏返しにして日光に当てることもNGです。中の衝撃吸収ライナーは発泡スチロールなので、高温にさらされてしまうと二次発泡と言って、さらに膨らんでしまうんです。そうなると、設計通りの衝撃吸収性能が損なわれる可能性があります。ドライヤーもNGです。高温にさらされる状況で保管をしないでください」

 高温にさらされる状況には、例えば真夏のガレージや車内も含まれます。とくに車内は、うっかり置きっぱなしにしてしまうこともありそうなので、注意したいところです。保管は陰になっていて、風通しの良い場所が理想だそうです。

 さらに、とても基本的なところを聞きました。ヘルメットの「正しい持ち方」です。じつはわたしは、ヘルメットを持つときにいつも「どれが正解なのだろう?」と思っていました。大事に扱いたいけれど、持つところがあるわけではないからこそ、小さな疑問だったのです。

「落とさないように持つのが重要です。あごひもを締結した状態で持つ、などですね。フルフェイスの場合はチンバーを持っていただければ。持たないでいただきたい部分はチンカーテンなどですね。脱落してヘルメット本体が落ちてしまう可能性があるからです」

 脱落しやすいパーツを持たなければ問題ない、ということでした。今後は自信をもって、片手でヘルメットを持ち運びできそうです。

 そんなヘルメットのお手入れ方法についても聞きました。気づけば汚れているヘルメットを見ると、いろいろなものをヘルメットが受け止めてくれていることに思い至ります。

「中性洗剤を水に混ぜて、柔らかい布にそれを染み込ませて、固くしぼってふいてください。内装を洗う場合は、水に中性洗剤を溶かして洗ってください。意外と知らない方もいるのですが、内装は取り外せるので、臭い防止のためにも洗っていただいたほうがいいと思います。手洗いでもいいですし、洗濯ネットに入れて洗濯機で洗っても大丈夫ですよ」

 回答を聞けば、その方法はとても簡単なものでした。きれいにお手入れをして、ヘルメットを使うこともまた「ヘルメットをいつも気にしている」という点で、安全に使うことにつながるのかもしれません。

 話を聞くうちに、わたしはヘルメットについて「頭を保護してくれる大事なもの」というぼんやりとした認識しかなかったことに気が付きました。ヘルメットについての理解を深めることは、自分が安全にバイクを楽しみ続けるために、必要なことだろうとも思えるのです。

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