ヘッドライトの鋭い眼差し 上品で凛々しい容姿
どんなに堅牢なクルマでも、永遠に好調を保てるわけではない。今回のベントレー 4 1/4リッター・ヴァンデンプラは、1995年から2002年にかけて、徹底的なレストアが施されている。
【画像】ロールス・ロイス傘下の「ダービー」世代 ベントレー 4 1/4リッター 同時期の優雅なクラシックたち 全138枚
エンジンはオーバーホールされ、シャシーやボディも大改修。塗装色は、この時にペール・ブルーへ変更された。投じられた費用は、8万5000ポンドに達したという。
2022年にも、5万4000ポンドを費やしレストア。仕上がってからは、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードのイベントへ参加している。
整備記録をとじるファイルには、1939年のモーターショーへ輸送した請求書や、ボディを磨いた記録、前オーナーが撮影した写真などが残されていた。
爽やかなアップル・グリーンの塗装は、最近塗られたもの。筆者としてはチェスナット・ブラウンへ戻しても良かったと思うが、この色も悪くない。今回の例以上に状態の良いダービー・ベントレーは存在するとしても、間違いなく数は少ないだろう。
フロントでは、巨大なルーカス社製P100ヘッドライトが鋭い眼差しを向ける。ボンネットは、整ったプロポーションでキャビンと繋がり、ガラス製のリアウインドウは驚くほど小さい。ほぼ、後方視界は得られない。
1930年代の英国車らしく、リアのナンバープレートはガラスで覆われている。両サイドには、カバーで覆われたスペアタイヤとスポットライト。ラジエターグリル前にはツインホーンが並び、上品で凛々しい姿にある。
快適に遠くへ移動できる頼もしい存在
ドアは、後ろヒンジのスーイサイド。右側に突き出たシフトレバーへ引っかからないよう、体をねじらせながらシートへ腰を下ろす。ウッドパネルは光沢が抑えられ、美しくモダンにも見える。
フロントガラスは、下方を浮かせて換気できる。ダッシュボードには、葉巻用の灰皿が設えられている。中央の大きなメーターはスピード用で、表記は時速110マイル(約177km/h)まで。ベントレーRタイプやSタイプにも似た雰囲気を漂わせる。
運転席の正面には、4500rpmからレッドラインのタコメーター。ステアリングボスを、サスペンションと点火タイミング、チョークの調整レバーが取り囲む。
燃料と電流、水温、油圧用の小さなメーターも、正面に並ぶ。燃料ポンプは2基備わり、AかBで切り替えられる。戦前のロールス・ロイスらしい装備といえる。
キルティング加工されたドアパネルには、アームレストが備わる。バックミラーは小さい。天井の内張りは、ハードトップへ劣らず上質。ソファーのようにふっくらしたリアシート側には、大人にも充分な空間が存在する。
残念だが、ソフトトップは開かない。ヘッダーレールの調子が芳しくないそうだ。
ダービー・ベントレーの時代には、自動車は気まぐれな大人の遊び道具から、快適に遠くへ移動できる頼もしい存在へ進化していた。信頼性を追求して設計された「サイレント・スポーツカー」は、運転の煩わしさを大きく軽減できていた。
一部の富裕層に限られた余裕と安心
ヴァンデンプラ社製のボディを持つ4 1/4リッターは、まさにそれを体現している。小さなキーを回してボタンを押すと、4.25Lの直列6気筒エンジンがすかさず始動する。
ツインSUキャブレターは、大きなエアクリーナー・ボックスが覆う。エグゾースト・マニフォールドは滑らかに弧を描く。エンジンのノイズを、可能な限り抑える工夫が凝らされている。
洗練性を世界へ伝えるように、排気音がささやくように放たれる。ところが、加速は極めて意欲的。多くのクルマが、80km/hを出すのに精一杯だった1930年代に、軽々と130km/hを超える余裕があった。最高出力は126psがうたわれていた。
今でも活発といえ、交通に紛れても気を使う必要はない。平地なら、2速で鋭く発進できる。アクセルペダルの角度に対して、ポジティブにエンジンは反応。ブースト付きのブレーキも、感心するほど良く利き、減速感を予想しやすい。
大きなボディは、リジッドアクスルとリーフスプリングで支えられているが、ダンパーは見事に衝撃を吸収。ステアリングはダイレクトで、余計なフリクションはない。
1938年の欧州では、徐々に自動車の普及が進んでいたが、これほどの余裕と安心を享受できたのは一部の富裕層に限られた。急な登り坂でも平然と加速するたくましさは、特別なものだった。
1日に600km走る旅行も、快適にこなせた。朝食後にロンドンを出発し、夕食間際に北部のスコットランドへ到着するような、クタクタの挑戦ではなくなっていた。1930年代のクルマ移動は、今以上に素晴らしい体験だっただろう。
揺るぎない地位を築いたダービー・ベントレー
高価なダービー・ベントレーは、1933年から1939年にかけて、独自の市場を開拓したに過ぎないともいえる。だが、秀でた製造品質とロールス・ロイスの洗練性、150km/h級の性能を融合させ、揺るぎない地位を築いたともいえた。
ボディ次第では匹敵する速さのサルーンは存在したものの、総合的な魅力で並ぶモデルは存在しなかった。運転手を雇うような、フォーマルな場面にも適した存在感と威厳を漂わせていた。自ら運転したい若い世代にとって、理想的なポジションにあった。
コーチビルド・ボディ込みのお値段は、平均的な住宅3軒ぶんに迫る約1500ポンド。ダービーの工場では、寄せられる注文に生産が追いつかなかったとか。同時に、より高額なロールス・ロイスの販売にも影響はなかったという。
オーナーには、オーケストラを率いたビリー・コットン氏から、レーシングドライバーのマルコム・キャンベル氏などが名を連ねた。誰しもが、1930年代のベントレーが目指すコンセプトへ共感していた。高速なグランドツアラーとして。
ベントレーを創業したWO.ベントレー氏も、公平な視点で仕上がりを認めている。自らの名前を掲げて生産されたモデルの中で、最高だと評価したことはマニア間では広く知られた事実だ。
協力:クラシック&スポーツカー・センター
ベントレー 4 1/4リッター・ヴァンデンプラ(1936~1939年/英国仕様)のスペック
英国価格:1150ポンド(シャシーのみ/新車時)/18万ポンド(約3600万円/現在)以下
生産数:1234台(4 1/4リッター合計)
全長:4420mm
全幅:1752mm
全高:1574mm
最高速度:154km/h
0-97km/h加速:15.5秒
燃費:6.0km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1702kg
パワートレイン:直列6気筒4257cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:126ps/4500rpm
最大トルク:−kg-m
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)
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