この記事をまとめると
■トラックの運転席があるスペースはキャブ、キャビンと呼ばれる
トラックドライバーを「底辺」と揶揄する人も! 本当に「誰にでもできる仕事」なのか元ドライバーが内情を語る!!
■現在では5種類のキャブタイプが存在
■いすゞエルフが国内小型トラックで初めてスペースキャブを採用した
小型トラックでは国内初の試み
トラックの部位で「キャブ」あるいは「キャビン」と呼ばれる場所がある。これは、先頭部の運転席があるスペースのこと。元来の意味が「小屋」というぐらいだから、決して広い空間というわけではない。しかし、職業運転手であるトラックドライバーは、1日の大半をこの空間で過ごす。当然のことながら、その居住性は車両選定の重要なポイントになってくるはずだ。
ところが、ここに大きな問題がある。それは、トラックが貨物車であるということ。多くの場合、荷物は後部の貨物スペースに搭載される。トラックは道路運送車両法・保安基準に従ってその寸法の限界が決まっているため、効率的に多くの荷物を運ぶのであれば、荷台以外のスペースは少ないほうが経済的だ。半世紀前ごろにはよくお目にかかったボンネットタイプのトラックが姿を消したのは、そういった理由があったからだといわれている。
こういった背景のなか、現在では大別して5種類のキャブタイプが存在する。 ・ショートキャブ(標準キャブ)
キャビンのなかでもっとも狭い構造となっているため、同規格の他車と比較すると多くの荷物を搭載できる。
・フルキャブ
標準キャブよりキャブの全長が長く、後部に休息スペースがある。キャブが長いぶん、荷室が小さくなる。
・ハイルーフキャブ
キャブの天井が高く設計されており、休息スペースを上部に設置している。フルキャブより車両価格が高くなる。
・ワイドキャブ
幅を広くとるので、全体に容量が大きくなって居住性・積載性が向上する。大きくなるぶん操作性が低下し、車両価格も高くなる。
・ダブルキャブ
通常、トラックは横1列2~3人の定員であるが、ダブルキャブは2列5人程度の定員をもつ。後列にも乗降ドアがあり、作業員と荷物を同時に運ぶなどの目的で使用される。キャビンが大きくなったぶんだけ、積載量は少なくなる。 フルキャブ・ハイルーフキャブ・ワイドキャブは大型・中型トラックで採用されており、短距離輸送がメインの小型トラックはほとんどが標準キャブを導入している。しかし、2024年問題などでトラックドライバーの待遇改善が注目されたこともあり、いすゞ自動車が小型トラックのエルフにスペースキャブを誕生させたのだ。
これは、その名のとおり標準キャブの全長を300mm拡大してスペースを広げたもので、小型トラックでは国内初の試みだ。シート背面を最大40度に傾けることができるようになったから、ドライバーの居住性は大きく向上したといえる。また、拡大した空間をラゲッジスペースにしているため、工具や小型の荷物であれば積むことができる。キャビン内に収納できれば、これらを雨から守れるというわけだ。
バンやダンプなど多彩な架装が用意されているが、なかでも平ボディは拡大したキャビンの下部に、荷台が食い込む設計になっているから、荷台底部の長さは3115mmも確保されている。ゆえに、長尺な荷物でも荷台鳥居に固定することなく運搬できるというわけだ。
トラックドライバーの労働環境を改善すると同時に、広いキャビンを採用する際にネックになっていた積載性を維持したアイディアは、まさにコロンブスの卵といっても過言ではないだろう。
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