一部報道で日産とホンダが協業に向けて動き出したと報じられた。EVなど電動車でのコスト削減を狙っているようだが、果たしてクルマ界の勢力図が変わるようなことになるのか。国沢光宏氏が分析する!
文/国沢光宏、写真/ベストカー編集部、ホンダ、日産
日産とホンダがついに歴史的提携へ? 突如巻き起こった協業報道!! 目的はEVでの巻き返しなのか
■日産側は前向きだが、ホンダ側は動きなしか
日産側は協業に向けて前向きだというのだが……
日本経済新聞とテレビ東京が突如、「日産とホンダの協業」をスクープした。その後、読売新聞Webや朝日新聞デジタルなども続報を出しているものの、新しい情報なし。何しろ協業の情報出ただけで日産の株価がドンと上がるほどのビッグニュースである。
関係者に取材してもそう簡単に情報を取れるワケない。一方、このニュース、いろいろな場所で話題になっているようだ。本当のところはどうか? 検証してみたいと思う。
まず、日経とテレビ東京の情報だと、1)日産が検討に入った2)ホンダに動きなし、となっている。日産側は協業に前向きだ。
その日産の歴史を見ると、プリンス自動車を吸収。その後、ルノーの資本を受け入れ、三菱自動車の株主でもある。ルノーと共通プラットホームでクルマ作りをし、三菱自動車とも軽自動車やSUVで協業している。
ホンダというメーカー、ほかの企業との協業は基本的にしないというのが業界の常識。こう書くと「電気自動車や燃料電池でGMと協業しているじゃないか」とか「ソニーホンダモビリティだってある」みたいなことになるだろう。
GMについていえば、興味深いことにホンダは長年に渡ってリスペクトしてきた。ホンダのOBと話をしていてもGMの話がよ~く出てくる。
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■両社協業でまずぶち当たるのが両社の「社内要件」?
筆者は「日産とホンダが協業でクルマ作りをしようとしたら、最初にブチあたるのが社内要件」と指摘する
ということでGMは例外的かと。ソニーホンダはどうかとなれば、三部敏宏社長の趣味だと考えます。ホンダ社内にも「やめておけばよかった」という人が山ほどいる。加えて相手が自動車メーカーではないというのも大きい。
自動車メーカーとの協業なら反対意見が続出だったことだろう。ソニーとの協業と言っても、クルマ作りはホンダ単独。ホンダからすれば、電子部品など「家具屋」(内装を示す)の領域なので許容できる、だと思う。
もう少し踏み込んでみる。日産とホンダが協業でクルマ作りをしようとしたら、最初にブチあたるのが社内要件。続いてCANの統合だろう。どの企業も社内要件は長い歴史で作り上げてきた。
ホンダだと『A要件』と呼ばれ、日本の憲法のように変えない。100歩譲ってホンダが破綻し、日産に頭を下げて助けてもらったのなら日産の社内要件を飲むと思う。でもホンダの収益は絶好調!
ホンダのようにプライドの高い会社が日産の基準を飲むなんて1000%考えられないこと。逆に日産はホンダのA要件を飲むかとなれば、これまたあり得ない。日産の技術者のプライドも高い。
破綻しそうになったからルノーの言い分を聞いたのであって、現時点でホンダの言うことなんか聞かない。少なくとも日産とホンダが「日産とルノー」とか「日産と三菱自動車」のような関係になることなど無理。
では、もう少し浅い関係と割り切り、インバーターやモーターなど得意な分野を担当したらどうか? これまた電子制御を司るCANのシステムが違うと、いかんともしがたい。ウィンドウズとマッキントッシュのようなもの。
三菱トライトンは日産のADAS技術を使っているけれど、三菱CANの4WDの電子制御とバッティングして相当の工数を取られたそうな。ADASひとつ取っても難しい。電気自動車の部品を共用しようとしたら、前述の社内要件問題にブチあたる。
■電池での両社協業が現実的か?
2024年春にホンダから発売されるN-VAN e:。このバッテリーに使われている電池はAESCで日産サクラと同じタイプだったが、現在は別物を採用
では、日産とホンダの協業はないかとなれば、そうでもなかったりする。間もなくホンダが出す「N-VANe:」という電気軽バンは日産が資本を持つ「AESC」というメーカーの電池を採用している。サクラの電池もタイプ違いのAESCだ。同じメーカーから違う電池を買っている。これをまとめたらどうか?
電池は生産規模でコストが決まってくる。日産にとってもホンダにとってもありがたい。加えてCANや社内要件が関係しないeアクスルや、電動化部品などは共用化できる。
日産サクラにもN-VAN e:と同じバッテリーが搭載されていたが、現在は別物が採用されている
可能性としては、ここを起点にさらなる協業が進むかもしれない。というのも日産、現在自社開発の軽自動車を三菱自動車で生産している。次期型で開発だけでなく生産も日産にしようとしているようだ。
ホンダと同じ電池を使うことでコストダウンできるし、社内要件やCNAだって関係なし。うまく行けば国内にかぎらず、世界規模で電池を共用できることだろう。
電池は電気自動車の基本、そしてコストダウンしようとしたら規模。電池に関する協業は大いに可能性あると考える。というか、日産もホンダも生き残りを戦略のため、電池をはじめとした電動化部品の共用化は積極的に進めるべきだと思う。
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みんなのコメント
ホンダのGM Ultiumプラットフォーム共有はGMの生産キャパの関係から大幅縮小したけれど、車載OSやコネクティビティ関係の提携はまだ生きているし水素燃料電池やその他電動化戦略でも提携は続いている。日産は日産でルノーのアンペア事業への参加を余儀なくされているし、電動化まわりはこれを中心に進めていくことになる。
つまりどちらも協業するとしてもそこまで大規模なものにはなり得ない。メディアが勝手に想像を膨らませて騒いでいるだけ。