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この先の日本のかたち 「自動車の楽しさ」の未来 ぶかっこうなクルマ いすゞピアッツァ【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】

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この先の日本のかたち 「自動車の楽しさ」の未来 ぶかっこうなクルマ いすゞピアッツァ【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】

 2014年11月に逝去した自動車評論家、徳大寺 有恒。ベストカーが今あるのも氏の活躍があってこそだが、ここでは2013年の本誌企画「俺と疾れ!!」をご紹介する。(本稿は『ベストカー』2013年10月10日号に掲載したものを再編集したものです/著作権上の観点から質問いただいた方の文面は非掲載とし、それに合わせて適宜修正しています)。

■暑い夏の過ごし方

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徳さんの書斎にて……暑い夏、徳さんは書斎にこもって本を読んだり、パイプをやったりして過ごす。暑いのが嫌いで、室内のエアコンは低めだが長袖を着ながら体調管理する

 ようやく朝晩涼しくなったが、今年は特に暑かった。ただ夏が暑いのは今に始まったことではない。日本の夏は湿度がとにかく高いのだ。アジアモンスーン地帯に属すのだから仕方がないといえる。もちろん避暑地と呼ばれる高地は涼しいが、人の多いところは暑い。私が暑いと思ったところは夏に出かけた大阪や京都で、以来近畿は東京よりも暑いものだと思っている。

 もちろん東京も暑い。夏休みというのは、暑さを避けるためにも重要だが、どこかに行こうとすれば、渋滞や何やらで移動もたいへんだ。だから私は夏の旅行はあまりしない。

 金持ちでもないので軽井沢などの避暑地にも行かない。ほとんど東京の自宅で過ごす。むしろエアコンの効いた部屋にいるのが好きなのだ。

 そして時折、本屋へ行って気に入った本を20冊ばかり買い込んでくる。そうすれば、何日間か涼しく過ごせる。本屋に行って本を選ぶこと、それが私の夏休みの始まりだ。

 本屋は近所の大きな書店だ。雑誌や単行本のほかに辞書も買ったりする。そいつを書斎のデスクにおいて次々と読んでいく。もちろん送ってもらった本もあり、いつもデスクには数十冊の本が積んである。

 特に好きなのは歴史物で敗戦直後の日本の歴史についてはまだまだ語られていないことが多くあり、知りたいことがたくさんある。そのほかに、この夏は映画の本も何冊か手に入れた。

 最近読んだ本のなかでは朝日新聞の『天声人語思い出アルバム』がよかった。こいつは私の常備本として、常にデスクに置いてある。もう一冊意外かもしれないが草思社の『子ども地図帳』も手放せない。よく工夫されたわかりやすい地図帳で、本を読んでいたりして場所を確認したい時わかりやすいからだ。

 もちろん『自動車ガイドブック』や講談社の『20世紀全記録』もあるし、いろんな辞書もある。

 本のほかに部屋を占めているのは、スケールモデル、つまりミニカーだ。シトローエンDSシリーズ(カスタムカーのみ)やランドローバー、メルセデスなどがある。それとCDデッキ、それとお気に入りのCDが50枚ほど。以前書いたがモダーンジャズが多い。パイプやタバコもある。

 そうやってリラックスしながら本を読んだり、古い友人に手紙を書いたりして過ごす。

 とにかくここにいれば私にとっての極上の夏休みが過ごせ、気がついたら暑さもひと息ついていた。

■この先の日本のかたち

(父親が自動車組み立て工場に30年あまり勤めたという読者の方からの、自動車工場の海外への移転などによって、自動車工場が今後日本からなくなっていくのか、日本の国のかたちも変わっていくのだろうか、という声に)

*     *     *

 お父さん長い間お疲れ様でした。

 確かに日本は人件費が高いので、国内で製造すると割高になります。日本の各メーカーは必死に国内に工場を残そうとしていますが、東南アジアやインド向けの低価格車を国内で作ることは難しいと思います。

 いっぽうで技術を次の世代に残すことはとても大事なことです。ものづくりという言葉が最近よく聞かれますが、大企業が海外に移転すればサプライヤーもそちらに行き、中小は置いてけぼりとならざるを得ません。

 その結果空洞化を生むようなことになってはならず、今後は国内の製造業に向けた優遇措置などを政府が真剣に考えなければなりません。もう一つ、お父さんのように自動車に関わった人生が幸せであり続けなければなりません。

■女性にオープン

シトロエンDS3カブリオ……徳さんが女性にお勧めするオープンモデルの1台。電動ソフトトップ搭載で後席も使える5人乗りのユーティリティを持つ。1.6Lターボは156psと強力で、6MTのみだが、あえて乗ってほしい

(最初に買ったクルマがユーノス・ロードスターで、その時にいろんな峠道をオープンにして走った楽しさが忘れられませんというOLの方からの、「徳大寺さんが女性に勧めるオープンモデルはどんなモノがあるか教えてください。またオープンに乗る時に注意すべきことがあれば教えてください」というお便りに答えて)

*     *     *

 MINIやシトローエンのカブリオーレはいいですね。きっと忙しい主婦の仕事の合間に自分を取り戻せるでしょう。

 オープンは髪や顔の化粧がグチャグチャになりますが、これはもうご存じでしょう。それでも、オープンはそれ以上の価値があると思います。

 主婦であろうとたとえわずかな時間であっても自分を取り戻す大切さはお金で買えないものでしょう。

 一人のドライブはきっとご主人のこと、ご近所のことなど多くのことを考えさせてくれるはずです。

 そして再び家庭を大切にして仲よくやってください。クルマは特別なものはいりません。一人でいかにリラックスできるか、このことが大切なのです。

■操作フィールについて

(エリシオンに乗っているという読者の方からの、「電子制御にはしっくりこない。クルマはやはり人間の意思でいろいろ操作すべきものだと思うのですが、徳大寺さんはどう思われるでしょうか?」という質問に答えて)

*     *     *

「やっしょうまかしょう」。今年も山形の花笠まつりは盛り上がったでしょうね。(※山形市で開催される「花笠まつり」で、笛太鼓の音色と民謡「花笠音頭」に合わせて掛けられる掛け声で、「やりましょう、まかせてもらいましょう」という意味。このお手紙をくださった読者の方のペンネームでもあった)

 日本の自動車はどうなるのでしょう? 進化はすれども自動車の楽しさはほんとうに残るのでしょうか? 何もすることのない自動運転にでもなったらどうするのでしょう。

 そう思うと花笠音頭でも口ずさみたくなります。いったい誰のための自動車なのか? そんな疑問がこれから生まれて来なければいいと思います。

■ぶかっこうなクルマ

AMCぺーサー……1975年、深刻な不振に陥っていたAMCが10年先ゆくコンセプトとして誕生させたモデル。後席へ乗り込みしやすいよう助手席側が大きなドアやバブルグラスと呼ばれる曲面ガラス、キャデラック並みに大きな全幅と斬新なモデルだった

(AMCぺーサーの不格好さに驚いたという読者の方からの、「徳大寺さんはAMC(アメリカンモーターズ)というブランドのクルマをどうお考えですか?」という質問に)

*     *     *

 AMCぺーサーは不格好ですか? 私はそうは思いません。グレムリンにしてもぺーサーにしても、デザイナーの思いがよくわかります。特にぺーサーは悪くないと思います。

 ●●●さん(読者の方のお名前・ペンネーム)の意見は意見として、私はあのかたちもひとつのスタイルだと思います。

 ところでAMC(アメリカンモーターズ)は後に共和党の政治家となるジョージ・ロムニー会長の方針でビッグスリー相手に一時は売れ話題になりました。●●●さんもそのあたりを認め、もう少し寛容になってください。

 ところでAMCの歴史ですが、けっこうたいしたものですよ。ナッシュ、ハドソン、ジープの製造元のカイザー・ジープなどがありました。カイザーにはスチュード・ベーカーもあり、パッカードにもつながります。

■ピアッツァは今でもいい

ピアッツァ・スペーススポーツ……1987年の東京モーターショーで公開されたピアッツァのスポーツワゴン。ルーフとサイドウィンドウは一体となってガルウイングになるという珍しいモデル。徳さんも注目の1台だったが市販はならず

(友人が1989年製のいすゞのピアッツァに乗っているという読者の方からの、「もう少し走りに徹すれば、いすゞのクルマは今も生き残っていたかもしれないと時々思うことがありますがやはりいすゞという会社はコスト管理が甘かったのでしょうね」という声に)

*     *     *

 ピアッツァはジウジアーロのデザインですが、やはりいいですね。ピアッツァのドアを開けてそのドアをよく見てください。特に開閉部を見ればジウジアーロの美的センスが見て取れますよ。

 もともと“アッソ・デ・フィオーリ”というクルマでジュネーブショーに出展し、117クーペの後継モデルとしてこれをいすゞが市販化したのです。このクルマを見るたびにドアのカーブの美しさを思います。

■徳大寺有恒の「俺と疾れ!」リバイバル特集

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