DSのSUVフラッグシップモデルのDS 7にマイナーチェンジが施された。エクステリアは一新されフロントマスクはより個性が強調されたものとなった。インテリアもより豪華に、装備も進化したそのモデルにさっそく試乗した。(Motor Magazine 2023年6月号より)
DSクロスオーバーSUVのフラッグシップモデル
以前、DSオートモビルのフシェCEOが来日した際にインタビューしたことがある。その時にはあまり詳細を語らなかったが、「新型DS7は2023年に日本へ導入します。DSのSUVのフラッグシップとして相応しい製品になっていますよ」と話していた。それには、「新型に乗るのが今から楽しみです」と返したのだが、それが早くも実現した。
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そもそもDS7クロスバック Eテンス4×4は長期テストで1年ほど担当していたので思い入れも強い。その魅力は誰よりも良く知っているつもりだ。それもあり、DS7がどのような進化を遂げているのか、とても興味深かった。
今回試乗できたのは、DS7オペラ E-TENSE 4×4(以下、DS7 Eテンス)。モデル名から想像できるとおり、PHEVである。また4×4とあるように、フロントとリアを駆動する4WDシステムも搭載する。ちなみに新型DS7の導入当初のラインナップは、このPHEVとFFガソリンエンジン仕様のDS7 オペラ PureTech(ピュアテック)の2モデルで構成される。価格は前者が799万円、後者が689.8万円となる。
まずは新型の概要である。従来のDS7クロスバックからDS7へとモデル名こそ変わったが、DSブランドのクロスオーバーSUVのフラッグシップとしてのポジションは変わらない。
エクステリアデザインは相変わらずフランスのエスプリが感じられる、おしゃれなものだ。サイズはCセグメントSUV。このカテゴリーは販売台数が多く、その分、ライバルも強豪揃い。だが現在では、PHEVを揃える輸入車も少なく、DS7はその中でひときわ輝いている。
ボディサイズは全長4590mm、全幅1895mm、全高1655mm、ホイールベース2730mmとDセグメントに近く、Cセグメントとしてはクラス最大級である。
従来型よりスリムな眼差しは最大照射距離を大幅アップ
このCセグメントのSUVカテゴリーには他にもプジョー3008GT ハイブリッド4やシトロエンC5 エアクロスSUV ハイブリッドなどのPHEVモデルが存在し人気を博している。
ではどう進化したのだろうか。まず目に入ってくるのは、新デザインのヘッドライトだろう。従来型よりスリムな形状となっていることがすぐにわかる。ハイビーム用ピクセルLEDモジュールを配し、左右に84個(3列×28個)ずつのピクセルLEDを備えた「DSピクセルLEDビジョン3.0」を採用した。
このDSピクセルLEDビジョン3.0には、市街地/郊外/悪天候/フォギー/ハイビームの5つの配光モードがあり、状況によって自動で調整されるのも特徴である。また最大照射距離は、従来の340mからプラス40mされて380mに延長されている。
フロントグリルは、ダイヤモンドをモチーフにした大小のパーツで構成。さらに左右に4本ずつのライトシグネチャー「DSライトヴェール」を備えている。またヘッドライトとフロントグリル下には高輝度タイプのガーニッシュ「DSダブルウイング」を備え、個性的なフロントの表情を作り出す。この存在感はかなり高いだろう。
フランス伝統の世界観が広がるインテリア
インテリアでは、ダッシュボードやドアトリムに上質なナッパレザーが使われ、高品質なドレスの造形などに用いられるドレーブ(布を揺らした時に現れる自然な流れるような「ひだ」のこと)処理も施されている。またシートはウォッチストラップデザインを採用、素材は一枚革が贅沢に使われ、さらに真珠のネックレスのように表糸を露出させたパールトップステッチの演出も美しい。
もちろん、DSのアイコンであるB・R・Mアナログ時計も健在、エンジンスタートスイッチ上に配置される。見ると嬉しい限りだ。
こうした「DS美」の背景にあるのは、フランス伝統の馬具職人の技術、サヴォアフェールやオートクチュールのドレス縫製技術などである。いまではDSでしか味わうことのできないこうしたフランス伝統の世界観は、この上ない至福の空間演出である。
インフォテインメント用のディスプレイも大きく進化した部分である。具体的には、従来の8インチからインチへと拡大、Ds4にも使われた「DS IRISシステム」も採用される。これは「OKアイリス」と呼びかけることで目的地設定やエアコンの温度調整、電話などが使える音声操作システムである。さらにDS7 Eテンスでは、燃費履歴や充電設定などPHEV専用のシステムも用意されている。
またシートに採用される機能が充実しているのもDS7の特徴である。シートヒーター/シートベンチレーションに加え、マルチランバーサポート(マッサージ機能)を装備する。これは長期テストで使用していた時にとくにお気に入りだった機能で長距離移動などでは癒し装備として重宝していた。
その他にも便利な機能としてスマホのワイヤレスチャージャー、電動サンシェード付パノラミックサンルーフも標準装備される。USBポートはフロントにタイプが2カ所、リアにタイプAが2カ所用意される。
試乗時も不満や不足などを感じることはまったくないパワートレーン
パワートレーンは、1.6L直4ターボエンジンの「ピュアテック」と、それに前後モーターを組み合わせたエンジン+ツインモーターの「Eテンス4×4」のPHEVを用意。トランスミッションはどちらも8速ATとなる。
「ピュアテック」は最高出力225ps/最大トルク300Nm。「Eテンス4×4」はモーターのアシストが加わりシステム最高出力300ps/システム最大トルク520Nmを発生。試乗時も不満や不足などを感じることはまったくなかった。EV走行可能距離はプラグインレンジで56km、WLTCモード燃費14.0km/Lだ。
フラッグシップに相応しく、DS7クロスバックのADASは充実していたが、新型にもそれは引き継がれた。DSドライブアシスト(衝突被害軽減ブレーキ/ディスタントアラート、ブレーキサポート付アクティブクルーズコントロール、レーンポジショニングアシスト、ブラインドスポットモニター、トラフィックサインインフォメーション)、DSドライバーアテンションモニタリング、360度ビジョン(フロント&リアカメラ/フロント&バックソナー)、デッドアングルカメラなどを装備する。
従来型を長期テストで担当していた経験からこのADASの実力はわかっていた。ドライバーの不注意を賢くカバーしてくれ、ロングドライブでもさりげなくアシストしてくれる点がとても好印象だ。
DSらしさに溢れたフレンチで快適な乗り味
走りは、DSらしくとてもコンフォート。実にフランス車らしい快適な乗り味である。装着タイヤは20インチだが、それで乗り心地が悪化するようなことはない。これはDSアクティブスキャンサスペンションの絶大な効果だと言える。それでもワインディングロードなどで少しダイナミックに走りたいときは、ドライブモードをスポーツすれば、走りは変化する。
ちなみにEテンスのドライブモードは、スポーツの他にハイブリッド/コンフォート/4WD/エレクトリックの5つが用意される。
Cセグメントでクラス最大級のパフォーマンスを持ち、力不足を感じるような場面には遭遇しなった新型DS7。ストレスなくとても軽快に走ってくれ、さらにトップクラスの安全装備を採用し、それを標準化しているこのモデルはクラスで唯一無二のPHEVを揃えるところも、大きな特徴である。
美しいデザインは魅力的で、最初はフランス車だから、DSだから、美しいからと目がひかれるかもしれない。だが長く付き合う中でDS7が備える高い実力に驚かされることは間違いないだろう。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:井上雅行)
DS7 オペラ Eテンス 4×4主要諸元
●全長×全幅×全高:4590×1895×1655mm
●ホイールベース:2730mm
●車両重量:1940kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1598cc
●最高出力:147kW(200ps)/6000rpm
●最大トルク:300Nm/3000rpm
●モーター最高出力:前81kW(110ps)/2500rpm、後83kW(112ps)/14000rpm
●モーター最大トルク:前320Nm/500-2500rpm、後166Nm/0-4760rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・43L
●WLTCモード燃費:14.0km/L
●タイヤサイズ:235/45R20
●車両価格(税込):799万円
[ アルバム : DS 7オペラ Eテンス 4×4 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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