2022年4月に立ち上がった「車椅子簡易固定標準化コンソーシアム」。ビリーヴでもその動向を取材し続けているが、スズキスペーシア(販売店装着アクセサリー)、トヨタハイエースへの採用も始まり、今年はその普及に勢いが増しそうだ。
そこで、今回はコンソーシアム設立から尽力し続けている、事務局の太田吉彦さんに話を伺った。
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ーそもそも、コンソーシアム発足のきっかけは何だったのでしょうか?ー
「日本自動車工業会での活動となる『車いす固定標準化タスクフォース』が、自動車メーカー側の母体となります。まず、20年まで日本自動車工業会には、福祉車両を製造・販売しているメーカーが集まった「福祉車両部会』があって、そこでさまざまな課題を協議していました。その活動のなかで『車いすと車両をワンタッチで固定できればとても便利だろう』と、当時のトヨタさんが声を上げたのがきっかけとなります。そして、これをみんなで実現して将来的に標準化していければ、バスなどの公共交通機関でも使用でき、そのメリットは計り知れないものになるだろうと考えたわけです」
昨年10月、国際福祉機器展のトヨタブースで展示された「ワンタッチ固定装置」。これはバスでの使用を想定したもので、普及すれば乗る側、乗せる側双方が便利になる。ー参加は自動車メーカーだけだったのでしょうか?ー
「もちろん、車いすと車両の固定にまつわる話ですから、自動車メーカーだけでなく、車いすメーカーさんの協力も必要になります。そこで、当時『福祉車両部会』でもお付き合いのあったJASPA(一般社団法人 日本福祉用具・生活支援用具協会)さんにお声がけして、一緒にやりましょう!ということで快諾いただきました。ちょうど経済産業省からも、こういったことの規格化の話が出ていまして、廃止になった福祉車両部会に代わって車いす固定標準化タスクフォースを自動車側の窓口として設立しました。まさにタイミングが噛み合った感じです」
ー現在の参加社を教えていただけますか?ー
「いすゞ自動車株式会社、株式会社カワムラサイクル、ジェイ・バス株式会社、スズキ株式会社、ダイハツ工業株式会社、 トヨタ自動車株式会社、日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社、日進医療器株式会社、日野自動車株式会社、本田技研工業株式会社、株式会社マツダE&T、株式会社松永製作所、 株式会社ミキ(50音順)となります。このコンソーシアムは、とても社会的意義のなる内容だと自負しているのですが、それぞれのメーカーにも事情があるので、各々法務部にも入っていただいて、準備に1年ぐらいかかりました。開示しておりませんが、会則ももちろんあります」
2023年12月。第一弾として登場したのは「スズキ スペーシア 車いす移動車」。「車椅子簡易固定装置」は、販売会社装着アクセサリーとして設定された。3万2340円~3万4980円(消費税込み。参考取付費は6400円~8800円)。2024年1月。第二弾として登場したのは「トヨタ ハイエース ウェルキャブ車いす仕様車」。スイッチ操作のみで「ワンタッチ固定」できるBUタイプ、FUタイプを新設定した。車いす仕様車 BUタイプ:397万1000円~492万6000円、車いす仕様車 FUタイプ:403万円~498万5000円(ともに消費税非課税)。ー経済産業省のいう規格化とは、どのようなものなのでしょうか?ー
「経済産業省は高齢化先進国の日本ならではの福祉・介護の取り組みを国際社会に提案したいということで本件のISO(国際)規格化を目標として、まず国内規格のJIS化を推進されている状況です。ただ同時に『規格化はあくまで規格化であって、具体的にどのように周知して売っていくかなどは、民間であるメーカーさんが考えること』というスタンスですから、コンソーシアムとしては、これらを同時に前進させなくてはなりません。この活動としては、社会に普及して使っていただかないと意味がないので、車いす業界と自動車メーカーが力を合わせてやっていくというイメージです」
ー今回のアンカーバーに関して、苦労された点を教えてくださいー
「この仕様は、みんなで意見をいいながら結果的にここに辿り着いたという感じです。この形状・位置については、トヨタさんの先行商品があるなかで、みんなでその実車を体験をしたり、最適な配置についてオープンに協議した結果です。難しかったのは、車いすの最低地上高ですね。これは、車側から見れば低ければ低いほうがいいんですが、車いす側からすれば、低いと日常使いの邪魔になる。現在50mmになっていますが、まさにせめぎ合いの結果です。もちろん車いすご利用者の体重によるアンカーバー高さ変化についても測定していて、一般的な車いすの耐荷重に合わせて、車いすのご利用者が100kgまでの方なら問題なく固定できる仕様にしています」
アンカーバーの取付位置を規定した「アンカーバー規定」。アンカーバーの材質や車いすへの取り付け方法は規定せず、フレキシブルな対応ができるように配慮されている。すべてのアンカーバー装着の車いすに「車椅子簡易固定システム」が対応できるように、位置決めがされている。また、この規格はISOの車載車椅子規格7176-19(主に48km/h正面衝突模擬テスト)への適合を考慮している。ーこれまでの活動をとおして、手ごたえはいかがでしょうか?ー
「まずはみなさんの理解と協力があって、このコンソーシアムを立ち上げることができたことにあらためて感謝しています。組織の壁を超えて参加いただくことは想像どおりハードルが高かったですね。次にガイドラインを定めて、それを公のものにできたこと。そして、これを使った商品が世の中に出てきたということ。やっとここまで来たという感じです」
ー今年の活動はどのようになりますか?ー
「ご存知のように、車いす移動車は通所介護施設がいちばんのユーザーとなります。ですから、実際に使っていただいてそのよさを実感していただくのが好ましいと思い、この年央から実証実験を行う予定です。複数の施設で各々3カ月程度使っていただき、使い勝手向上を実感いただくと共に、効果を測定できればと思っています」
一般社団法人 日本福祉車輌協会 内
車椅子簡易固定標準化コンソーシアム
事務局 太田吉彦さん
ダイハツ業にて、開発、商品企画部門にて大衆車やスポーツカーの企画まとめ役を担ったのち、2011年から福祉両の企画・開発に携わる。同時に日本動業会 福祉両部会の委員となり、2015年からは日本動業会 福祉車両部会の部会長、副部会長を歴任。 現在は、車いすメーカーも参加する「車椅子簡易固定標準化コンソーシアム」を設立して事務局を担う。
いよいよ本格的に始動した「車椅子簡易固定装置」はBelieve - ビリーヴ ジャパンで公開された投稿です。
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