この記事をまとめると
■トヨタから新型アルファード&ヴェルファイアが登場
新型はアルファードよりヴェルファイアのほうがかなり高い! 一番安いグレード同士で比べると「115万円」もの差がつく理由とは?
■現状、他メーカーにライバル車は存在しない
■今後ライバルとなりうるのは先代モデルやレクサスLMだ
ライバルはもはや先代モデルのみ!?
2023年6月21日、発表・発売前から話題沸騰の新型トヨタ・アルファード&ヴェルファイアがついに登場した。ここでは、新型アルファード&ヴェルファイアのライバル比較というお題なのだが、国産ハイエンドミニバンとして、いま存在するのはアルファード&ヴェルファイアと日産エルグランドのみ。しかし、先代アルファードとエルグランドの販売台数を見ても、もはやエルグランドはアルファードのライバルとはなりえないぐらいの差がある。なにしろ現行型エルグランドは2010年のデビューであり、いまでは月、数百台の販売台数なのである。アルファードの2022年4月~2023年3月の月平均販売台数5000台前後なのだから、その差は歴然。VIPや芸能人のショーファーカーとして、高級セダン、サルーンからアルファードに乗り換えている実例を見ても、もはやアルファードのひとり勝ち状態であることは誰もが理解できるところだろう。
ならば、新型アルファード&ヴェルファイアの現時点でのライバル車はなにか? 答えは明快。いまでも絶大なる人気の先代アルファードと考えるのが自然だ(いま買うのであれば、先代は在庫車か中古車となるが……)。
ひと目でアルファード&ヴェルファイアとわかるエクステリアデザインだが、アルファードはより高級車然とした迫力とフォマール感ある顔つき、ヴェルファイアは特徴的なヘッドライトのイメージを残しつつ、よりスポーティな印象となっている。とくにボディサイドの抑揚の付け方は、新型らしさの大きな特徴となるはずだ。ちなみにボディカラーはアルファードが3色、ヴェルファイアが2色に絞り込まれている。
ボディサイズは全長4995×全幅1850×全高1935mm。ホイールベース3000mm。ここで仮想ライバルとした先代は全長4945×全幅1850×全高1950mm(HV)。ホイールベース3000mmだから、全長で50mm前後(先代はグレードによる)長く、全高で最大15mm低くなったことになる。
筆者が注目するのは、室内高だ。先代アルファードが登場したとき、エルグランドとの違いについて開発陣に聞いた際、室内高1400mm(先代の値)が、ゆとりや実用性につながり、エルグランドの1300mmに対する優位性と聞いている。が、新型アルファード&ヴェルファイアの室内高は1360mmと、数値的には天井が低くなっているのだ。とはいえ、そこはトヨタのデザインチームの手腕で、新旧型の後席に乗り比べたとしても、「天井部分が豪華になった」という印象は持てても、「天井が著しく低くなった」という印象は受けないかもしれない。2列目席に陣取る人の身長、座高、期待値によるが……。
ミニバンの特等席は2列目席だ。先代はベンチシートを含め4種類もの2列目席を用意していたが、新型では、現時点で基本のZとエグゼクティブラウンジの2グレード展開で、Zにそもそも上級のエグゼクティブパワーシート(先代では上から2番目)、エグゼクティブラウンジにエグゼクティブラウンジシートが奢られ、つまり、先代にあったリラックスキャプテンシート、ベンチシートは用意されない。アルファード&ヴェルファイアの立ち位置が、装備類を含め、先代よりさらに上級化したことが、ここでわかる。
今後はレクサスLMがライバルとなるか
インテリアでは、いきなりの14インチセンターディスプレイ、フルデジタルメーター、ルーフに備わるスーパーロングオーバーヘッドコンソール、左右独立ムーンルーフなどの装備が、先代モデルに差をつける部分だろう。
さらに、特等席の2列目席は、すでに説明したように、ベンチシートやベーシックなキャプテンシートを廃し、2種類のキャプテンシートのみの設定になるだけでなく、エグゼクティブラウンジシートの快適温熱シートには、新たにオットマン&アームレストヒーター(トヨタ初)が付くほか、リヤマルチオペレーションパネル(脱着式)と呼ばれる、5.5インチのスマホのようなタッチディスプレイまで左右各席に用意されているのだ! ここまで装備に徹底したミニバンはまずない(レクサス版ミニバンLMは別にして)。エルグランドが遠く、霞む内容のひとつと言っていい。
パワーユニットは、アルファードとヴェルファイアで異なる。アルファードは2.5リッターガソリン(+CVT)、182馬力、24.0kg-m、およびメインパワーユニットとなるはずの2.5リッターエンジン+モーターのハイブリッド、エンジン190馬力、24.1kg-m、フロントモーター182馬力、27.5kg-m、E-Fourと呼ばれる電気式4WDはそれにリヤモーター54馬力、12.3kg-mが加わる。先代にあった3.5リッターV6、301馬力はドロップアウトしている。
一方、ヴェルファイアのほうは、2.5リッターガソリンがなく、2.5リッターエンジン+モーターのハイブリッド(アルファードと同じ)に加え、スポーティテイストを増したヴェルファイアに相応しい2.4リッターガソリンターボエンジン+8速ATを新設定。スペックは279馬力、43.8kg-mと、トルクの値では3.5リッターV6を凌ぐ強大なトルクを発揮するパワーユニットとなっている。
ハイブリッドモデルの燃費性能が、先代以上に良くなっているのはもちろんだ。ただ、全長の延長などによって、最小回転半径は全車5.9m。先代はタイヤサイズによって5.6~5.8mだったから、小まわり性ではやや後退している。
また、ADASと呼ばれる先進運転支援機能については、予想どおり、先代とライバルを圧倒。最新のトヨタセーフティセンスが惜しみなく採用され、たとえばトヨタのミニバンとしてノア&ヴォクシーやシエンタで先行採用されたプロアクティブドライビングアシスト、安心降車アシスト、トヨタチームメイトのアドバンストパーク、高速走行中の渋滞時の低速域で”ハンズオフドライブ”を可能にするアドバンストドライブ(渋滞時支援)などが用意されているのだ。ここまでくると、プロパイロット未採用のエルグランドはもちろん、ちょっと古めのトヨタセーフティセンス搭載だった先代アルファードを先進運転支援機能で大きく上まわることになる。
つまり、国産ミニバン全体としても、あるいは国産ハイエンドミニバンとしても、一気にライバルなき高みに登りつめたのが、新型アルファード&ヴェルファイアということになる。まだ未試乗だが、「乗り心地の振動を減らした」と説明されているが、先代で気になっていた、2列目上級キャプテンシートのひじ掛け部分の路面の影響を受けやすい振動が、どう改善されているかは、大いに気になるところではある。
先代以前のアルファードオーナー、VIPなどのショーファーカーとしての需要ならアルファードのハイブリッド、ファミリーミニバンとしてならハイブリッドまたはガソリンの選択。一般ユーザーで、ハイエンドミニバンにもスポーティなキャラクター、動力性能を望むならヴェルファイアのガソリンターボエンジン一択となるのではないだろうか。
いずれにしても、ライバル対決という企画が成立しないほどの孤高の存在になったのである。唯一、今後のライバルとして見ていいのは、この新型アルファードベースとなるはずのレクサスの国内発売初のミニバン、「LM」 VS「アルファード エグゼクティブラウンジ」の対決ではないだろうか。ただし、価格(LMの予想価格は1600万円!?)には大きな開きがあるようだ……。
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