運転にも影響を与える音楽
音楽が脳に与える影響は大きい。集中力を高めたり、リラックスさせたりする効果があることは広く知られている。気分を高揚させることもあれば、落ち着かせることもできる。音楽が人間の心理状態を左右する力を持っている以上、運転中のパフォーマンスにも影響を与える可能性は十分に考えられる。
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運転中、人間の脳はフル稼働している。車の速度や進行方向を調整しながら、周囲の車両や歩行者の動きを瞬時に読み取り、適切な判断を下さなければならない。脳が活性化していれば反応は速くなり、落ち着いた精神状態を保てれば冷静な運転ができる。音楽がその一助になると考えるのは自然なことだろう。
オーディオ機器などを製造、販売するハーマンインターナショナル(東京都千代田区)が行った「音楽のチカラに関する意識調査」によると、
「約7割」
の人が、ドライブにおいて音楽は重要な存在だと回答している。さらに運転中の音楽がドライバーの心境にプラスの効果を与えると考える人も7割を超えた。音楽の精神的ヒーリング効果を実感している人も約8割に達しているという。
運転中に何気なく流している音楽は、実は運転そのものに影響を及ぼしている可能性がある。音楽がドライバーの意識や集中力にどのような変化をもたらしているのかを考えることは、安全運転の観点からも興味深いテーマといえるだろう。
テンポによって引き起こされる変化
『安全な運転環境を提供する音楽の研究』(豊島久美子、奈良教育大学教育学部研究員(行動内分泌学))という論文がある。同論文によると、運転中の音楽聴取とストレス、集中力、覚醒度との関係を調査し、安全な運転環境を提供する音楽について研究を行ったという。
まず被験者16人が運転中に聞きたい好きな音楽を、
・オリジナルのテンポ
・10%速いテンポ
・10%遅いテンポ
そして、音楽なしの4パターンで実験した。その結果、早い音楽のテンポでは男性が顕著にテストステロンの値が増加した。テストステロンとは、
・空間認知能力
・攻撃性
などに影響を与えるホルモンだ。さらに、運転中の速度超過の頻度も上昇したのである。つまり、男性は音楽のテンポに感化されて、
「速度超過する可能性が高い」
ことが判明したのだ。一方で、速いテンポの音楽で女性はストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールが顕著に増加していた。このことから、女性はアップテンポの曲を運転中に聴くとストレスをより感じることがうかがえる。
いずれにせよ、運転中に音楽を聴くことで内分泌の変化や心理変化が起こることが明らかになったのだ。
運転時に適している音楽
運転中に適した音楽とはどのようなものだろうか。フォード、スポティファイ、ニューヨーク大学が共同で行った研究によると、哀愁が漂うスローテンポで穏やかな曲が運転にポジティブな影響を与えることが明らかになっている。落ち着いた気分を維持し、集中力を高めることで、安全運転に寄与する可能性が高いという。
一方、アップテンポの曲は運転中の速度超過や注意力の散漫を引き起こしやすい傾向がある。高揚感によってアクセルを踏み込みすぎたり、音量を上げがちになることも要因のひとつだ。結果として、アップテンポの曲は運転に不向きといえるかもしれない。もちろん
「この曲は安全、この曲は危険」
と一概に断定することはできない。しかし、音楽のテンポがドライバーの運転行動に与える影響は無視できない事実だ。安全運転を意識するならば、アップテンポの曲よりもややスローテンポの曲を選ぶほうが適している可能性がある。
ただし、状況によってはアップテンポの曲がプラスに働く場面もある。例えば、長時間の運転や深夜の移動で眠気に襲われた場合、意図的にアップテンポの曲を流すことで眠気を払拭できるかもしれない。音楽の持つ力を適切に活用すれば、運転中のコンディションを良好に保つ手助けとなるだろう。
音楽の影響力を自動車に取り込むことの可能性
音楽によってドライバーの気分を誘導し、安全運転を促すという考え方は非常に興味深い。先述の論文では、
「今後、さらに研究を続けることで、運転環境に応じて、音楽を自動的に制御するシステムの開発が可能になるだろう」
と予測している。つまり、将来的には車両が運転状況をリアルタイムで把握し、それに合わせて最適なBGMを流す時代が来る可能性があるということだ。
すでに自動車はさまざまな情報を収集している。たとえばトヨタの安全技術には、ドライバーの異常を検知する機能がある。車内カメラがドライバーの顔を監視し、眠気や脇見などの兆候を捉えると注意喚起を行い、場合によっては車両の減速や停止をサポートする仕組みだ。こうした技術の延長線上に、音楽を自動選択する機能が搭載される未来は十分に想像できる。
また、運転中の音楽の重要性が広く認識されれば、カーオーディオ業界の新たな成長も期待できそうだ。これまでは高音質やノイズキャンセリングといった音質向上が主な開発テーマだったが、今後は
・ドライバーの心理状態に働きかける音作り
・運転シーンに応じた自動選曲システム
といった分野にシフトしていくかもしれない。
音楽配信サービスにもビジネスチャンスが広がる可能性がある。たとえば、ドライバーの生体データや運転状況をリアルタイムで取得し、それに応じたプレイリストを自動生成する仕組みを構築できれば、快適かつ安全な運転環境を提供できるだけでなく、ユーザーの満足度向上や加入者増加にもつながるはずだ。
こうした動きは、自動車業界だけでなく音楽業界にも新たなビジネスチャンスをもたらすだろう。運転中に流れる音楽がドライバーの安全を支えるだけでなく、経済の活性化にも貢献する可能性を秘めているといえる。音楽とモビリティの関係は、今後ますます注目を集めていくはずだ。
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みんなのコメント
「運転環境に応じて、音楽を自動的に制御するシステム」なんてのは音楽にハマった事の無い発達の陰キャ思考
他にもラジオはさまざまな音楽が流れる一方、不快な内容のトークやCMが余計なイライラを誘発する恐れがある。