スカイライン神話の原点、レースのために生まれたGT
2023年にはいよいよ次期型登場か、いやそれは大幅改良でフルチェンジは数年後だ、といった具合に、R35型GT-Rについては色々な噂が飛び交っている。大幅改良ではマイルドハイブリッド化され、フルチェンジの際には完全電動化がなされるだろうという推測が有力のようだ。こんな話を聞くと、GT-Rの前身であるスカイラインGT-Rの歴史についてあらためて想いを馳せてしまう、そんな方も多いだろう。スカイライン神話を打ち立てたGT-R、これを語るに欠かせないのが、神話の原点であるS54型スカイライン2000GTだ。
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そのベースであるS50型スカイラインは、1963年9月、スカイラインの二代目モデルとしてデビューした。高級車であった初代とは異なり、ファミリー向けセダンに生まれ変わったS50は、1.5Lの直列4気筒OHVエンジンを搭載。メンテナンスフリーを推し進めた設計にはプリンスらしい先進性が窺われるが、前ダブルウィッシュボーン/後ろリーフのサスペンションなど、機構的にはオーソドックスなものである。アメリカ志向の強いプリンスだが、そのスタイリングはフィアット1800のそれに似たものがあった。
このスカイラインのノーズを200mmも延長し、グロリア用の2L直列6気筒SOHCエンジンを搭載、ウェーバーのキャブレターを三連装したのが、2000GTだ。このGT、そもそもはレース用に開発されたもの。1963年に開催された第1回日本グランプリにおいて、他メーカーとの紳士協定(出場車には特にレース用チューンを施さない)を真に受けたプリンスは、どノーマルと言ってよいスカイライン・スポーツとスカイライン・スーパーで参戦、惨敗を喫したのである。翌1964年の第2回日本グランプリにおいて、その雪辱を目的に用意されたのが、2000GTだったのだ。
そこまでレースの結果を深刻に受け止めたのは、プリンスがその高い技術レベルを売りにしていたことが理由として挙げられるだろう。実際の技術力が、プリンス自身が主張するほどでもないと思われてしまっては、販売成績にも影響するからだ。だが、レース直前になって思わぬ伏兵の登場にプリンス技術陣は愕然とすることとなった。ポルシェ904GTSが同じGT-IIクラスに出場するというのである。本場ヨーロッパの本格的ミッドシップスポーツ/レーシングカーである904の参戦を前に、スカイラインに勝ち目はないものと思われた。
結果として、レースは予想通りポルシェ904GTSの優勝に終わったのだが、スカイラインはこれに食らいついて健闘を見せ、一時はその前に出るほどの走りを見せた。この活躍に観衆は歓喜、ホモロゲ獲得のために生産した100台の残りは限定発売されていたが、これも短期間のうちに完売。そのあまりの好評ぶりに、2000GTは正式なカタログモデルに昇格することとなり、1965年2月に発売されたのである。「GT」のバッジは高性能を誇示するかのように赤/白のものが取り付けられていた。
こうして正式に市販された2000GTはレース出場車と同じくウェーバー・キャブを三連装、フロントにディスクブレーキを装備したものであったが、「もうすこしマイルドなGTが欲しい」という声に応え、7ヶ月後にはシングルキャブ仕様の2000GTをリリース。このとき、従来の2000GTには「GT-B」の名が与えられ(S54B)、一方シングルキャブ版は「GT-A」を名乗り(S54A)GTバッジを青/白のものとして、両者の区別が図られたのである。
翌1966年、プリンスは日産に吸収合併され、スカイラインも「日産プリンス・スカイライン」となる。その後の同年10月のマイナーチェンジでは、GT-B/GT-Aもデザインを変更。フロントマスクがそれまでのメッキを多用したものから、ブラック基調の精悍なものに改められた。一方リア周りは、GT以外のモデルはテールランプを横長のデザインに一新したが、GT系は丸型テールのままであった。スカG=丸テールの伝統はここが直接のルーツと捉えてよいだろう。その後、1968年のフルモデルチェンジでGT系は一旦途絶えることとなるが、その復活とGT-Rの登場はご存知の通りだ。
妙なデフォルメを逐一改修、グリルも自作
プラモデルにおいてS54型スカイラインは、新車当時には三共から1/24スケールで発売されていたのみで、モデラーにとっては、1980年代半ばに発売されたエルエス1/32が、長らく馴染みのある存在であり続けていた。しかし2007年、フジミが突如1/24スケールでキット化。これにあたっては、前段階として、同社からレジンキットでのリリースがあった。おそらく、その販売が好調であったところから、インジェクションキット化が実現したのであろう。
フジミのキットは、1966年マイナーチェンジ以前の、メッキグリルを持つタイプのみの製品化で、GT-BだけでなくGT-Aもあり、またレース仕様までバリエーション展開されていた。1960年代の国産車が新規金型でキット化されることは多くなく、非常にありがたいモデルなのだが、しかしながらボディをよく観察してみると、デフォルメ具合いがあまりに強く、そのボディ形状には疑問符が多数付く。そこで、ボディのプロポーションを自然なものとし、ついでにマイチェン後の所謂III型として仕立ててみたのが、ここでお見せしている作例である。
このキットのボディは、まずキャビン側面があまりにそそり立っており、またウェストラインから下は、横から見ても上から見ても強い樽型をなしているのが特異な点である。どれも修正の難しい部分であるが、作例はこの難題を見事にクリア。その加工の要点については、工作中の写真に付したキャプションをお読み頂きたい。また、作者の吉田氏曰く、旧エルエス金型の1/32モデル(現在はマイクロエースから発売)は、非常にボディ形状が秀逸で、このフジミ製キットの形状修正にあたっては、立体資料として非常に有用とのことだ。
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プラモの改造を車の記事にする必要ってあるのか?