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100年前は英国2番手ブランド ベルサイズ15hpを振り返る 非力だった2.8L 4気筒 後編

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100年前は英国2番手ブランド ベルサイズ15hpを振り返る 非力だった2.8L 4気筒 後編

手頃な価格のセブンが救ったオースチン

100年前の英国では、どの自動車メーカーも苦しい状況にあった。ベルサイズだけでなく、オースチンも1919年から1920年にかけて、労働者によるストライキに悩まされた。戦後の景気は著しく悪化し、自動車市場は50%も縮小していた。

【画像】今はなきブランド ベルサイズ・モータースの15hp 同年代のクラシックと比較 全76枚

クルマへ掛かる税制も変わり、主要モデルの魅力度は失われていた。結果的にオースチンは1921年に倒産。破産管財人の管理下に置かれてしまう。

ただし、オースチンは生き残ることができた。英国で自動車の民主化を推し進めた手頃な価格の小型乗用車、セブンが存在したからだ。

15hpを1919年に発売するベルサイズ・モータースもダウンサイジング化に取り組み、1094ccのVツインエンジン・モデルのブラッドショーを発売する。しかし信頼性が乏しく、状況の改善には結びつかなかった。運命の分かれ道といえた。

今回ご登場願ったベルサイズ15hpは、記録を辿ると1921年の登録。最初のオーナーは英国東部のノーフォーク州に住むハリー・サンダース氏で、CL540のナンバーを取得している。

彼名義のクルマが複数存在したことから、恐らく自動車販売業を営んでいたと考えられる。その半年後にチャールズ・パーマー氏が購入し、1924年に売却。以降の約40年間は、英国東部で4名のオーナーを経ている。

さらに英国中部でショコラティエを営んでいた、RJウィテカー氏が購入。彼はベルサイズをチョコレート・ブラウンに塗装し、走る広告として利用した。役目を終えると5名のオーナーを転々としながら、2003年にオリジナルのグリーンへ再塗装された。

美しく保たれたオリジナル状態

現オーナーのティム・プライス氏が迎え入れたのは2014年。SV9204のナンバーも、その時点で取得している。

彼はこれまでの7年間、部品の入手に苦労してきたと話す。しかし、技術者として積んだ経験が、15hpの命を絶やすことはなかった。

オリジナル状態の維持に熱心で、パワートレインやシャシー、ボディは細部に至るまで状態が良い。美しく保つだけでなく、乗りやすくするための改良も多く施されている。

ボディサイドに突き出たランニングボードは、真鍮で再現されている。ゴム類も新しい。木製のツールボックスも作り直された。漏れていた燃料タンクは修復され、ボンネット開口部の面も整っている。

内装へ目を配ると、ゴムの張られたフロアや、真鍮製の小物類もすべて新品のように艶がある。ソフトトップやサイドガラスにも、傷1つない。ダッシュボード裏の配線類も引き直してあるそうだ。

操縦性に神経質なところがあると感じたプライスは、フロント側にハートフォード社製の摩擦式ショックアブソーバーを追加した。100年前のクルマを、現代の公道で走らせるために。

エンジンが冷えた状態での始動は、少々手間数が多い。燃料供給スイッチを押してゼニス・キャブレターへガソリンを送り、減圧レバーを回しシリンダーを与圧。ステアリングホイール・ハブのレバーをスライドさせ、点火タイミングを遅らせる。

点火装置のマグネトー・スイッチを入れて、スターターを回す。機嫌よく2799ccの4気筒エンジンが目を覚ました。

操作を体が覚えるまで少しの時間が必要

ステアリングコラムは驚くほど長く、4スポークのステアリングホイールが手前側に伸びている。電流と電圧、油圧メーターが並ぶダッシュボードは、ドライバーから遠い。

ボンネットの先端、ラジエーターグリルの頂上部には、真鍮のフレームが可愛らしい、丸い水温計が載っている。ブランドのマスコットではなく。

右膝付近に伸びる4速マニュアルのシフトパターンは、一般的なH型。その隣にハンドブレーキのレバーがある。

ステアリングコラムの左右に、ブレーキペダルとクラッチペダルが1枚づつ。その中央にあるのがアクセルペダル。足が大きいと踏みにくい。

コーンクラッチの特性を考えながら、滑らないように、やや積極的につなぐ。ペダルのストロークが短く、扱いは素早く丁寧に。

アクセルペダルもストロークが短く、ステアリングホイールは低速域でかなり重い。すべての操作を体が覚えるまで、しばらくの時間が必要だ。

対してギアは比較的簡単に選べる。それでも、ちょっとしたテクニックが必要。1速から2速へはすんなり入るものの、3速と4速はダブルクラッチが求められる。程なくして、英国南部の寂れた一般道を、自然に走らせられるようになった。

ペースを掴むと、ステアリングはハイレシオだとわかる。幅の細いダンロップ・タイヤながら、鋭くノーズが向きを変える。オーナーが追加した摩擦式ショックアブソーバーのおかげで、明らかに操縦性が良い。

ブランド最終章を確認できる貴重な1台

ホイールベースが長いため、多少舗装が傷んでいてもさほど意に介さない。ブレーキはリアのドラムだけだが、100年前のクルマだと考えれば信頼感を抱けるほど効く。

しかし、サンビームやオースチンなどと異なり、2799ccの4気筒エンジンは低回転域でのパワーが不足気味。ノイズは、古いベントレーにも似た独特の味わいを持つけれど。

走らせてみると、よりコンパクトで洗練され、税制的にも有利だった当時のライバル・モデルと比較して、ベルサイズの大排気量エンジンは活気に欠ける。2022年にはその個性を1日中楽しんでいたいと思えるが、現役時代の100年前は違っていただろう。

1923年に、オーバーヘッド・バルブを備える3079ccエンジンが投入されるが、タイミングは遅すぎた。内容も、時代を掴んでいたとはいえなかった。ベルサイズ・モータースは、惜しくも1926年を迎えることができなかった。

歴史を物語る貴重な15hpへ実際に乗ってみると、倒産を余儀なくされた理由の1つが見えてくる。ほとんどの人が忘れてしまった英国ブランドの最終章を確認できる、貴重な1台だといえる。

クラシックカーとしての金銭的価値以上に、重要なモデルだといっていいだろう。

協力:マンチェスター科学産業博物館、ソフィー・リチャードソン氏、ジョシュア・バット氏著「1896-1939年のイングランド北西部に見る自動車普及の側面」

ベルサイズ15hp(1919~1923年/英国仕様)のスペック

英国価格:540ポンド(新車時)/3万ポンド(約489万円)以下(現在)
販売台数:−
全長:4115mm
全幅:1676mm
全高:−
最高速度:88km/h(予想)
0-97km/h加速:−
燃費:6.4-7.8km/L
CO2排出量:−
車両重量:−
パワートレイン:直列4気筒2799cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:20.3ps(RAC値)
最大トルク:−
ギアボックス:4速マニュアル

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みんなのコメント

1件
  • 後編まで読んだけど、理由が説明されてなくてガッカリ
    当時の海外勢力も理由のひとつのはず
    12/15HPゼーロとかも含めて説明してほしい。
    あと日本語もへん
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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