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「ラリーの日産」の面目躍如! ターボ4WDの隠れた傑作機「ブルーバードSSS-R」が遺した爪痕

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「ラリーの日産」の面目躍如! ターボ4WDの隠れた傑作機「ブルーバードSSS-R」が遺した爪痕

日本ラリー界の流れを追うと

 日本のラリー史を振り返ると、その流れに明確な傾向を見ることができる。創生期から発展を遂げる過程においてフルチューニングのエンジンで戦った時代、それが道路運送車両法に大きく抵触するとして無改造車「ノーマルカー」規定に立ち返った1970年代終盤、メーカーが排ガス規制の責務を果たし高性能化に走った1980年前半、低μ路で駆動効率の高い4WD方式に注目が集まりだした1980年代後半、そして1990年代終盤に軽量高出力なターボ4WDが主導権を握るようになったという流れである。

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クルマの高性能化が醸し出した80年代ラリー現象

 やはり、注目すべきは、市販車が一気に高性能化の道を歩み始めた1980年代の動きだが、エンジンのDOHC化に始まりターボの普及、これに4WD方式を組み合わせるようになった時代の流れが興味深い。

 先鞭を切ったのは、三菱だった。ラリーカーとしては、ノーマルラリーカーの起点となったミラージュに始まり、高出力/大トルクのラリーカーの象徴となったランサーターボの流れから、コルディア/トレディアの4WD車という流れを作ったが、この段階でスバルがレオーネ4WDを投入。そして近代4WDラリーカーの始点としてマツダがファミリア4WDをデビューさせたが、このタイミングでラリーの雄、日産がU12型プルーバードにSSS-Rをリリースしたのである。

 1980年代の日産は、エンジン開発でトヨタに遅れをとり、また商品ラインアップの基本的な見直しが迫られ、状況を改善するため社内改革が起きていた。こうした動きは一元化され、901運動へと結び付いていくが、その先鞭をつける存在となったのがU12型ブルーバードだった。ブルーバードは、1983年に登場した7世代目のU11系で、FF方式への転換、新世代CA型エンジンの採用と近代化を図ったが、より市場ニーズに適合した内外装やエンジンを搭載するモデルとして1987年に8世代目のU12型へと進化した。

最強の駆動システムでラリー競技ベース車両を放つ

 その際、4バルブDOHCターボ+センターデフ式フルタイム4WDを組み合わせた1800ツインカムターボSSS・ATTESA(アテーサ)シリーズを発表。CA18DET型175psエンジンにベベルギヤ式センターデフ+ビスカスLSDを組み合わせるスーパーパフォーマンスセダンだった。

 最強の駆動システムは4WDと、ひとつの指針を掲げていた日産は、試作車としてMID4によるシステム開発も行うほどで、余談だがこれからほぼ2年後には、アテーサE-TSのシステム名を持つ舗装路型4WDを搭載したR32型スカイラインGT-Rをリリースしている。

 発表時、ラリーカーとして使った場合、すでに群を抜くポテンシャルを持つと見られていたU12型SSSだったが、同じタイミングでラリーカーのベースとなる「1800SSS-R」を発表。1958年の豪州ラリー参戦(211型ダットサン)をモータースポーツ活動の原点としてきた日産が、久しぶりにラリーを意識して企画した車両だった。

 ちなみに、211型ダットサンは310型となってブルーバードに名称変更。そのブルーバードは、1962年からサファリラリーに参戦を続け、510型ブルーバードが1970年のサファリラリーで完全優勝するまでに熟成、開発が続けられたシリーズだ。

「ブルーバード」だからこそ込められた諸々

 その「ラリーのブルーバード」の栄光を引き継ぐ形で登場したのが、U12型ブルーバードSSS-Rだったのである。このSSS-R、仕上がりを見ると相当に気合いの入ったモデルで、ベースとなった4WD・SSSターボから相当な個所を専用モディファイ。175psから185psに出力を高めたCA18DET-R型エンジンは、タービンをギャレットT25型に換装、圧縮比を下げて過給圧をアップ。コスワース社製の鍛造ピストン、ステンレス製エキゾーストマニホールドを備えるなど、相当に力の入った仕様のエンジンだった。

 内装は、ラリーユースを前提としたため、もっとも廉価な1600LEグレードに準じた簡素な内容でまとめられ、また、乗車定員は当初2名の設定となっていた。これはロールバーを組み込むことで後席が省かれ、車両登録上、乗車定員を2名に変更する必要があったためだ。

 SSS-Rで2度にわたり綾部美津雄が全日本チャンピオン獲得

 全日本ラリー選手権への投入は1988年の初戦、氷雪との戦いとなるDCCSウインターラリーからだった。日産系ユーザーにとって待ちに待った車両だったが、なかでも注目の存在は、フルチューンTE27レビン/トレノの時代からその人ありと言われた綾部美津雄だった。綾部は、1980年からラリーが組織化され、全日本ラリー選手権が設立されて以降、1986年にレオーネ4WDを駆って全日本チャンピオンを獲得していた。その綾部、ブルーバードSSS-Rがリリースされた1988年シーズンから同車に乗り換え、見事にこの年のチャンピオンを獲得する活躍を見せた。

 翌年は2L4WDターボのギャランVR-4が登場し、排気量の差がもたらすスピード勝負に負けたわけでもなかったのだろうが、残念ながらタイトル獲得はならなかった。そして1990年、SSS-Rの搭載エンジンが1.8LのCA18DET-Rから2LのSR20DETに換装されると、ふたたび綾部美津雄は全日本チャンピオンを獲得。

 U12型ブルーバードSSS-Rは、ラリーカーとして必須要素となる優れた車両バランスを持ち、これに強力な4バルブDOHCターボエンジンと前後駆動力配分の変化が可能なATTESA方式の4WDの組み合わせにより、「ラリーのブルーバード」に再び栄冠を取り戻させた救世主、傑作車と言ってよかった。

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みんなのコメント

13件
  • かつて走りに徹した日産車が多かった。
    経営再建からはつまらなくなってしまった。
    910運動が最頂点だったのか。スカイライン、プリメーラと評判がいい車種がどんどんなくなった。
    GT_Rが登場したが、他の車種は削減されパットしなくなった。乗って楽しい乗用車が必要ですね。今はSUVばかりになってしまいました。それも車の存在が変わってしまったのかもせれません。
  • この後に、パルサーGTI-Rというとんでもないパワーウエイトレシオのコンパクトスポーツカーが出たのだけと、重量バランスが悪いらしく期待どおりのリザルトが出せなかった。あるいは更にコンパクトなマーチスーパーターボという車もあったが、これも同様だったと思う。ラリーBクラスではジェミニに負けてしまったし、ラリーCクラスではギャランやランサーに負けてしまった。サーキットでは、ターボなしのシビックやインテグラにも勝てませんでしたし。改めてブルーバードのバランスの良さが際立ちました。皮肉なことに、単純にパワーがあれば良いというものではないという良い教訓になったのではないかと思います。足回りの設計がよほど他社と比べて弱かったのでしょうか? 本当のところは分かりませんが、日産の熱気が空回りしていた時代だったように感じます。ゆったり乗る分には当時のZはなかなか良かったんですが。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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