この記事をまとめると
■トヨタ・ノア/ヴォクシーがフルモデルチェンジ
同じ中身なのになんでこんなに差が付いた! 明暗クッキリ兄弟車の勝ち負け4選
■販売店全店全車種併売を開始したトヨタが姉妹車を存続させるのは異例
■経緯について詳しく説明する
1車種に絞ると販売総数が下がる心配も
2022年1月に、ヴォクシーとノアがフルモデルチェンジを行った。今のトヨタで姉妹車を存続させるのは異例の措置だ。その経緯を説明したい。
トヨタは2020年5月に販売体制を変更して、全店で全車を扱うようになった。一部の地域を除くと、トヨタ店やトヨペット店といった従来の4系列は保っているが、専売車種は基本的に存在しない。
姉妹車の廃止は、トヨタが全店で全車を扱う販売体制を採用した理由のひとつでもある。姉妹車の設定は開発費用や営業費用などのコストアップに繋がり、大量な販売を見込めないと弊害も生じるからだ。
ところがヴォクシーとノアは、姉妹車関係を残した(ただしエスクァイアは廃止)。それはこの2車種の登録台数が際立って多いからだ。コロナ禍の中でフルモデルチェンジを控えた2021年の時点でも、ヴォクシー/ノア/エスクァイアの登録台数を合計すると1万台を超えた。
そしてこの3姉妹車の販売比率は、ヴォクシー:55%、ノア:35%、エスクァイア:10%だ。ヴォクシーかノアに絞ると、販売総数が下がる心配もある。
今後トヨタの姉妹車が生まれることはない
とくに今はトヨタでもコンパクトな車種が売れ筋で低価格化も進んだから、300~370万円を中心に販売の好調なヴォクシーとノアは、貴重な存在になっている。そこでヴォクシーとノアの姉妹車を存続させた。
ただし同じ店舗でヴォクシーとノアを両方とも扱うには、両車の個性を強める必要がある。個性化を怠ると、アルファード&ヴェルファイアのように販売格差が拡大して、結局はどちらかを廃止することになるからだ。
この対策として、ヴォクシーはエアロ仕様のみの設定で、フロントマスクを先鋭的なデザインに仕上げた。ノアはエアロ仕様と標準ボディを用意して、比較的オーソドックスに造り込んでいる。
価格も工夫した。エアロ同士で同じグレードの価格を比べると、ノアが5~7万円安く販売しやすい設定だ。従って同じ購入予算でノアの同グレードを選ぶと、オプションのプロジェクター式LEDヘッドランプ(6万2700円)、右側スライドドアの電動機能(6万2700円)、100V・1500Wの電源コンセント(4万4000円)などをプラスして装着できる。
このようにノアを割安に抑えたのは、フロントマスクやリヤビューのデザインとコストが異なり、なおかつ現時点の売れ行きがヴォクシーよりも少ないからだ。先代ヴォクシーはモデル末期に標準ボディを廃止して、エアロのみとしたが、登録台数はノアよりも多い。全店が全車を扱う販売体制で、この状態を放置すれば、アルファードとヴェルファイアのようにノアが売れなくなってしまう。
そこでノアのデザインを幅広いユーザーに受ける形状に仕上げ、ヴォクシーはコストを高めて個性化を図り、なおかつ価格はノアを割安にした。全店で全車を売る体制で、姉妹車関係を維持するのは大変なことなのだ。
従って今後、トヨタの姉妹車が新たに生まれることはない。アルファードとヴェルファイアも、前述のとおり販売格差が拡大して、後者のグレードは大幅に減らされた。今の販売比率は90%以上がアルファードだから、時期を見てヴェルファイアは廃止する。
もはやマークII/チェイサー/クレスタのように、販売系列に応じてクルマを作り分けて拡販を図る時代は終了した。売れ行きを増やすのではなく、効率よく維持することで生き残りを図る。ヴォクシーとノアの姉妹車は、唯一の例外だ。
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これでアルヴェルも存続だったら土下座