レクサスのフラグシップセダン「LS」は、ほかのセダンモデルに比べ、ガソリングレードの販売比率が高い。なぜ?
デカい割に俊敏
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メーターナセルの左側から飛び出た円筒形の「ドライブモードセレクト」をスポーツ S+に切り替えると、エンジン音ががぜん大きくなった。フワフワだった電子制御のエア サスペンションがしっとり締まって、ボディをフワつかせなくなる。
3mを超えるホイールベース、5mを超えるクジラのような、という表現は大ゲサにすぎるとして、クジラの子どもぐらいはあるレクサス「LS500」の巨体が、快音を轟かせながらコーナーへとなめらかに飛び込んでいく。
路面は荒れているはずだけれど、ロード・ノイズはきわめて低く抑えられている。聞こえてくるのは、ヴオオオオオオッというV型6気筒ガソリン・ツイン・ターボの活発なサウンドだけだ。
LS500用に新開発された3444ccのV型6気筒DOHCガソリンツイン ターボは、ボア×ストローク=85.5×100.0mmのロング・ストローク型で、最高出力422ps/6000rpmと 最大トルク600Nm/1600~4800rpmを生み出す。トルクの太さが印象的で、車重が2230kgもあるLS500“F Sport”をけっこうなペースで走らせる。
10速オートマティック トランスミッションの変速ショックはきわめてなめらかで、ギクシャクはまったくしない。ダウンシフト時にブリッピングを派手に入れてくれれば、スポーティなムードが高まってもっといいのに……と筆者なんぞは思うけれど、ドライバーズ カーと言ってもブリッピングを入れるほどではない、ということなのだ、シンプルに。
現行LSは、レクサスのラグジュアリー クーペ、「LC」とおなじGA-Lプラットフォームを採用して、2017年10月に国内で発売となった。GA-Lプラットフォームは、低重心で、ドライバーとクルマの旋回中心を近づけることを意識している。“モリゾー”率いる最近のトヨタのスポーツ系モデルと同様の考え方でつくられているわけである。重量物はホイールベース内に配置し、慣性モーメントの最適化を狙っている。試乗車の車検証に見る前後重量配分は、前1190kg、後ろ1040kgの53:47で、フロント荷重が重過ぎない。
デビュー当時の乗り心地はずいぶん硬めだった記憶があるけれど、2019年10月に改良がおこなわれている。試乗車は前245/45、後ろ275/40の20インチ、しかもブリヂストンのランフラットを履く足のいいヤツだったのに、ぜんぜん硬くない。西湘バイパスの目地段差をS+で通過したって、通過時にドシンバタンというショックはあるものの、そのショックの角が丸まっている。
ホイールベース3m超の小クジラがむずがることなく姿勢をスッと変えるのは、後輪操舵やブレーキ制御など、電子制御技術の塊だということもあるだろう。ロールを制御する「アクティブスタビライザー」は“F Sport”のみの標準装備で、フワフワなエア サスなのに山道でもロールはよく抑えられている。
クルマはデカい。デカい割には俊敏で、余分な動きをしない。同じ動作を繰り返すような修行でのみ得られる所作の美しさに通じる動きかたをする。私はついさっき、このクルマについて思ったことを忘れつつあった。
ほんの数時間前のことである。待ち合わせ場所の東名高速道路の港北パーキングエリアにちょっと早めに到着したのでボーッとしていると、隣のマス目に派手なブルーのレクサスLSが入ってきた。クロームのホイールがピッカピカに輝いていて、ドアが開くと真っ赤な内装がチラリと見えた。
なんたるエキセントリックな組み合わせ! と、筆者は思った。もちろん上品と下品、エキセントリシティとエレガンスは紙一重でありまして、私はそう思ったけれど、ファッショナブルだと感じるかたもいらっしゃるかもしれない。
「ヒートブルーコントラストレイヤリング」という正式名称の、2014年発売のRC Fから導入されたボディ色、1500℃以上の高温時の青白い炎をイメージしたものだそうだけれど、をまとった、なんとなくトロピカルなレクサスの運転席から、刈り上げの長髪で、アゴ髭をたくわえてサングラスをかけたいま風の若者が降りてきて、いまどきのお金のあるオシャレな若者はこういうのを選ぶのか……、と一瞬、思った。いや、そうではない。後席からグリーンの派手な山登り用風のジャケットを着てサングラスをかけた若者が降りてきた時点で、さすがの筆者も気づいた。カメラマンのヤスイ氏と担当編集のイナガキ氏であることに。
4割がV6ツインターボを選択
あいにくの小雨模様ではあったけれど、この日、私はレクサスLS500 “F Sport”に試乗しながら、イナガキ氏が投げかけたテーマ、「レクサスLSはなぜガソリンの3.5リッターV6ツインターボが販売の4割と、レクサスのセダンのなかでは異例にガソリン・エンジンの人気が高いのか?」についてしばし考えなければならないのだった。
そう。現行レクサスのセダンにおけるガソリン・エンジンの割合は、LSが 4割あるのに対して、「GS」は2割、「IS」は3割に止まっているというのだ。
現行のGSは2012年の登場で、はや8年目だし、ISは2013年だから7年目である。その点、LSは2017年に全面改良を受けたばかりで、GA-Lプラットフォームも、3.5リッターV6ツイン・ターボも新開発である。ひとの目というのは、新しきに向くもの。現行LSは、その外見からしてスポーティ サルーンであることを訴えているわけだし、スポーティな外観にはスポーティなエンジンを選びたくなるのが人情というものではあるまいか。
トヨタ「カムリ」やホンダ「アコード」などの中型セダンのクラスではハイブリッドでなければクルマにあらず、みたいなことに日本市場ではなっている。最近も、アコードの関係者からそんな話を聞いた記憶がある。そんななか、デビュー8年目のGSにしたところでガソリン車が2割もあるのは、さすがプレミアム ブランド! ということなのかもしれない。
レクサスの広報によると、国内のLSは、法人名義がおよそ8割を占めており、個人名義は2割に過ぎない。とはいえ、それはあくまで税制を考慮してのことだろうから、無視してもよいかもしれない。購入層は50~60代が6割と圧倒的で、その購入理由は? というと、いただいたデータをそのまま記せば、次のようになる。
1)いつもLEXUSを購入いただいている 40%
2) フルモデルチェンジをきっかけに 20%
3) ステイタスがある 10%
4) 評判など 10%
5) デザイン 10%
6) そのほか 10%
このデータ、1と3から、「レクサスのフラッグシップ セダンだから」ということで購入しているひとたちが5割に達しているのがわかる。レクサスを買うひとにとってレクサスはレクサスであることに大きな意味がある。
さらにガソリン・モデルのLS500のグレードごとの割合(直近6カ月の2019年9月~2020年2月)は次のようになる。
・標準10%
・"I package" 30%
・ "F SPORT" 30%
・"version L" 20%
・"EXECUTIVE" 10%
このデータをどう解釈すべきか? ひとつ言えるのはスポーティ仕様の“F Sport”を選ぶひとが30%いらっしゃることで、これが多いのか少ないのかは微妙なところだけれど、少なくとも“F Sport”を選ぶひとは、おそらく、標準グレードや“I package”を選ぶひとより、より積極的にこのスポーティ グレードを選んでおられる、と考えられる。
つまり、全体の12%のひとたちがLSの“パーソナル ラヴァー”なわけである。全長5mを超える大型セダンに1割強のファンが生まれたのであるとすれば、現行LSの開発陣も甲斐があったということになるのではあるまいか。
ハイブリッドとの価格差をどう考えるか?
最後に価格について。標準グレードは、999万6000円で1000万円を切っている。同じ標準グレードでも、ハイブリッドのLS500hは1142万2000円。V6ガソリン・エンジン+電気モーターのハイブリッドのほうが142万円ほどお高い。同じ“F Sport”でも、ガソリンは1222万8000円、ハイブリッドは1334万8000円で、112万円の差がある。富裕層ではない筆者の推察するところ、おなじレクサスなのだから、エコよりもエコノミーなほうがいい、と考えるひとがいたとしても、不思議でもなんでもない。
いや、1000万以上出せるひとにとって、100万の差は屁でもない。いやいや、お金持ちほどお金にシビアだという説もある。お金とは無縁の筆者には謎の部分だ。お金の話なんぞ、するものではなかった……。
言えることは、レクサスLSの購入者で、ガソリンを選んでいるかたたちが4割いらっしゃるという事実である。これは日本国内と世界で変わらない。これらは、エコの象徴であるハイブリッドという錦の御旗なしで選ばれている。つまり、レクサスというブランド力のなせるワザである。
2月3日にレクサスが公表したところにほれば、2019年の同ブランドの世界販売実績は76万5271台で、前年比110%、過去最高を記録した。2018年に導入した新型ESやUX、2019年8月にマイナーチェンジしたRXなどが好調だったのと、中国市場での伸びが全体を牽引したという。
約32.5万台の北米がメイン・マーケットであることに変わりはない。でも、こちらは前年比100%だったのに対して、中国は約20.2万台で同125%。米中の差はここでも縮まりつつある。欧州は約 8.7万台で同114%、日本は約 6.2万台で同113%だった。
軽自動車を含む2019年の日本の新車販売台数は519万5216台で、前年の527万2067台のマイナス1.5%。そんななかでレクサスは販売台数を増やしている。2019年に日本国内でもっとも売れたクルマが、3年連続でホンダN-BOXだったことを思い出すと、レクサスはまぎれもない、勝ち組のクルマなのだ。いまさら、かもしれませんけれど。
4ドアセダンのLSの、いわば2ドア クーペ版であるLCのガソリンの比率は、国内で約7割、グローバルで約8割にもなるという(ともに2019年の実績)。LC500は同じ500でも、ヤマハが開発した5.0リッターV型8気筒自然吸気を搭載している。
パーソナルなクルマであるほど、より魅力的なガソリン エンジンが好まれる……と、仮定してみよう。とすると、LSの4割をガソリン エンジンが占めるというのは、妥当な数字のように思われる。世間は甘くない。消費者はちゃんとわかっている。神の見えざる手がマーケットでは動いている。
なお、なぜ、LCのガソリンはV8で、LSはV6ターボなのか? レクサス広報の回答は次のようなものであった。
「レクサス初のツインターボエンジンとして、V8ターボエンジンと同等以上の高い動力性能と、ターボのフラットなトルク特性を活かした爽快な加速フィーリングを実現。さらに圧倒的な静粛性・快適性に加え、燃費・排ガス性能もクラストップを目指した新世代エンジンであり、新型LSにふさわしいエンジンとして採用した。一方、V8・5.0リッター エンジンは、LCや“F”など、よりスポーティなモデルに向けたエンジンとして、伸び感ある加速や爽快なサウンドを実現している」
LSにもV8を積めばいいのにね……。
文・今尾直樹
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