新橋で問われる都市空間
東京都・新橋の居酒屋「英勇屋三丁目店」に対し、21日間の営業停止処分が下された。道路交通法に違反した疑いで60回以上の指導・警告を受けながら営業を続けた末の行政処分である。
【画像】「えぇぇぇ!!」これが40年前の「新橋駅」です! 画像で見る!(計11枚)
この問題を単なる「違法な路上営業」として片付けるのは簡単だ。しかし、視野を広げると、この事例は
・都市のあり方
・公共空間の管理
・経済活動と規制のバランス
といった、より大きなテーマへとつながる。本記事では、この問題の本質を掘り下げていく。
路上営業の拡大と規制強化
新橋は東京の中心に位置し、長い歴史を持つ街だ。「サラリーマンの聖地」として親しまれ、戦後の日本経済成長とともに発展してきた。その名前は江戸時代初期の1600年代初頭に架けられた「新橋」に由来し、江戸と浜松町、品川方面を結ぶ重要な交通の要所として栄えた。周辺は商業活動が活発化し、宿屋や飲食店が集まり賑やかな地域に成長した。
第二次世界大戦後の1950年代から1970年代にかけて、新橋はその地位を確立する。高度経済成長期、サラリーマンたちは昼間に働き、夜は新橋の居酒屋や飲み屋街で集まり、交流を深めた。新橋の飲み屋街文化は盛り上がり、サラリーマンにとって仕事帰りの憩いの場となった。駅周辺には多くの飲食店が立ち並び、銀座や丸の内といったビジネス街とも連携し、オフィス街としても発展した。
近年、夜の賑わいは店舗内にとどまらず、店舗前の路上にまで広がる傾向が強まっていた。摘発された店では歩道や車道にテーブルや椅子を並べ、路上で営業を行っていた。この営業形態は違法だが、客にとっては開放的な雰囲気を楽しめ、店舗にとっては座席数を増やせるというメリットがあった。そのため、一部の店ではこの営業形態が黙認されることもあった。
しかし、度重なる苦情や通報を受けて、警視庁は対応を強化。風営法に基づく営業停止処分という異例の措置が取られ、これは全国的にも初の事例となった。
路上営業増加の裏側
NHKの3月17日の放送によると、コロナ禍後、特におととし頃から飲食店の路上営業が目立つようになった。最も多かった時期には、狭い区道の両側にある飲食店がテーブルや椅子を出し、通行人が通り抜けるのも困難な状態だったという。
新橋地区の連合町会長は、繁華街であるため火事や警察沙汰が発生することがあり、その際に緊急車両が通れないことを危惧していた。また、ビルの2階以上の店からは「客が店に入れない」といった声もあり、非常に困難な状況だったとNHKに語っている。
また、港区の担当者は違法な路上営業が増加した背景として、次の2点を挙げる。
・新型コロナの影響で飲食店が入れ替わり、ルールを知らない、または守らない店が増加したこと
・テナント料の高騰とコロナ禍で営業が厳しかった時期に、売り上げ回復のためにできるだけ多くの客を集めようとしたこと
さらに、新型コロナ対策として、一定の条件下で店舗前の道路上にテラス席を設けることが可能となったが、道路が狭い場所や制度の対象外の場所でも路上営業ができると誤解されるケースがあったという。
「空間の管理」という問題
さて、今回の問題は単に「違法営業を繰り返した店が罰を受けた」という構図だけで捉えるべきではない。本質的な問題は、
「路上空間の管理」
が適切に行われているかどうかにある。そして、法の適用にとどまらず、都市のにぎわいとのバランスをどう取るべきかという視点が求められる。
新橋のような繁華街では、特定の時間帯に道路の“性格”が変わる。昼間は通勤者が行き交う場所、夜は飲食を楽しむ場所に変化する。しかし、都市計画や法制度はこの変化に柔軟に対応していない。今回のケースでは「道路は交通のためにある」という原則が厳格に適用され、店舗が排除される結果となったが、これが必ずしも最適な解決策とは言えない。このような対応が続けば、都市の活気が失われ、地域経済に悪影響を与える恐れがある。
一方で、世界の多くの都市では、夜間に特定エリアを歩行者天国にし、屋外営業を許可する制度を導入している。台湾の夜市やバンコクのナイトマーケットでは、行政が一定のルールを設けた上で、路上営業を「都市の文化」として取り入れている。また、欧州の一部都市では、時間帯や場所に応じて路上営業を許可する「フレキシブルゾーニング」を導入し、商業活動と市民生活の調和を図っている。これらの事例は、規制を強化するだけでなく、空間活用をより包括的に考える重要性を示している。
新橋のようなエリアでも、単に取り締まるのではなく、どのように空間を運用すれば市民と店舗双方にとって良い形になるかを議論する必要がある。行政、地域の事業者、市民が協力し、持続可能で魅力的な都市空間を築くための仕組みを模索することこそが、本来求められる姿である。
公共空間の「価値」
都市における道路や歩道は、単なる移動のための空間ではない。これらは人々が活動する場としての重要な役割を果たし、特に経済活動が活発なエリアでは、「歩道 = 歩行者専用」といった考え方が現実と合わないことが多い。
例えば、欧州の都市ではストリートカフェ文化が根付いている。パリやローマでは、歩道の一部をカフェが占有することが許されており、行政もこれを都市文化の一部として認めている。こうした取り組みは、歩道を単なる通行の場ではなく、都市の魅力を生み出す空間として活用しようという発想から成り立っている。
日本でも、歩道や道路の活用について柔軟な考え方が求められる。無秩序な路上営業が認められるべきではないが、ルールを設けた上で都市の魅力を高める空間として活用する余地は十分にある。今回の処分は、警察や行政にとって強いメッセージを発するものであり、
「風営法に基づく営業停止処分」
という新たな手法が採用された点は注目に値する。これは、道路交通法だけでは十分な抑止力が得られないという認識が反映された結果であり、今後、同様のケースに対しても厳格な対応が取られる可能性があるだろう。
しかし、行政の対応が厳格化する一方で、では、どこで営業すればよいのかという問いには明確な答えがない。もし道路での営業が都市の活力の一部となっているのであれば、一律に取り締まるのではなく、合法的に路上営業を行う仕組みを整えることも選択肢のひとつだろう。
例えば、事前許可制を導入したり、特定の時間帯での利用を許可したり、道路占用料を徴収する仕組みを検討することができる。このような制度を整備すれば、違法営業を排除しつつ、都市のにぎわいを維持することが可能になるだろう。
公共空間の未来と新たなアプローチ
夜間に路上の性格が変化する新橋のような繁華街では、それを無視した一律の規制が果たして最適な解決策なのかは疑問が残る。
むしろ、「どうすれば都市の活力を損なわずに秩序を保つか」という視点で議論し、持続可能な仕組みを構築することこそが、今求められているのではないか。
この問題は新橋だけの話ではなく、東京、さらには全国の都市が直面している公共空間の未来の課題であり、その解決には従来とは異なる視点とアプローチが求められるだろう。
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