現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 世界が注目する「WRC」とは何? 愛知・岐阜各地で「ラリージャパン」開催の意義は? 地域盛り上げの期待高まるなかの「メリット・デメリット」とは

ここから本文です

世界が注目する「WRC」とは何? 愛知・岐阜各地で「ラリージャパン」開催の意義は? 地域盛り上げの期待高まるなかの「メリット・デメリット」とは

掲載 21
世界が注目する「WRC」とは何? 愛知・岐阜各地で「ラリージャパン」開催の意義は? 地域盛り上げの期待高まるなかの「メリット・デメリット」とは

■世界的人気のモータースポーツ競技「WRC」 11月10日から愛知・岐阜両県で開催

 日本では12年ぶりとなるモータースポーツ「WRC(FIA世界ラリー選手権)」が愛知県と岐阜県の両県で、2022年11月10日より4日間開催されます。
 
 世界的に人気のモータースポーツであるWRCが開催されることにより、この競技が開催自治体にもたらす効果はあるのでしょうか。

【画像】水&泥しぶき「バシャー!」にドリフト「ゴゴゴ!」 迫力満点のWRCの様子を写真でチェック(27枚)

 WRC(世界ラリー選手権)は1973年に創設された世界大会。そもそもラリーとはモータースポーツの一種で、スペシャルステージ(SS)と呼ばれる交通が遮断された一般道を市販車ベースのラリーカーで走行するものです。

 ラリーは一般的なサーキットでの競技と違い、同時に複数台で走行して順位を争うのではなく、1台ずつ1分から3分間のインターバルを置いて出発。各SS内のタイムを競い、すべてのSSでのタイムを累計しもっともタイムが短ければ勝ちという競技です。

 コ・ドライバーというコースのナビゲート役を助手席に乗せ、二人三脚で競技がおこなわれるのも特徴で、舗装路(ターマック)だけでなく、未舗装路(グラベル)や雪道のスノーなど、舗装路を走行するサーキット競技と違い、極めて過酷な路面状況を上手くコントロールしながら全開走行します。

 WRCは三菱「ランサーエボリューション」やスバル「インプレッサWRX」などをはじめ、これまでに日本車も数多く参戦。日本車全体では累計151勝という結果も残してきたため、ファンも多いモータースポーツですが、日本では長らく開催されませんでした。

 2004年、ついに北海道十勝地方で「ラリージャパン」としてWRCが日本初開催されました。2007年まで4回開催されたのち、2008年には札幌を中心とする道央地区に開催地を移し、2010年の第6回を最後に、いちど日本での開催はストップしています。

 ちょうど10年ぶりとなる2020年の時点で、愛知県と岐阜県の両県での開催が予定されていましたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響によりやむなく中止。2021年も開催はできず、ラリーファンなどからは開催を危ぶむ声もありました。

 そして2022年に2回の延期を重ねて、12年ぶりの日本開催が決定したのです。

 競技は11月10日から13日までの4日間にわたって実施。競技コースであるSSは、愛知県では豊田市・岡崎市・新城市・設楽町の4市町で、岐阜県では中津川市・恵那市の2市で19に分かれて設定されます。

 19の国と地域から38ものドライバーとコ・ドライバーがタッグを組み、これらの地域で最速を目指すべく、全開走行で駆け抜けます。

■大会開催により各市町村には大きなメリットが

 12年ぶりとなる今回のWRC(ラリージャパン)ですが、開催にあたり6つの各自治体それぞれによる協力が不可欠です。WRCの日本での開催について各自治体はどのように考えているのでしょうか。メリットやデメリットなども含めて、自治体の担当者に直接取材をおこないました。

 開催のメリットについて、岡崎市の担当者は以下のように話します。

「岡崎にいながら世界最高峰のレースを見ることができ、スポーツ振興を加速させられます。

 県外、海外からの来訪者がいることにより、地域の活性化につながる側面も大きなメリットです。(ラリーの様子が)世界150か国以上でテレビ放映されるため、映像を通じてPRするチャンスです」

 新城市の担当者は、「子どもたちがラリーに興味を持ってもらい、新城へと戻ってくるきっかけづくりになります」といいます。

 豊田市の担当者は、開催のメリットについて「山間地振興」「交通安全推進」「産業振興」の3つを挙げています。

「豊田市の7割が山間地となっており、高齢化・過疎化も進んでいる中で、競技コースが山間地に設置されることで、山間地に対して(注目の)スポットを当てることができます。

 11月は紅葉と名物である芝桜が咲き、年間でもかなり綺麗な景色を見ることができます。これを世界と日本全国に発信できることがメリットです」

 交通安全推進と産業振興について、豊田市の担当者は以下のように続けます。

「豊田市はクルマのまちであり、今回のラリージャパン開催で交通安全を呼びかけたいと考えています。

 ラリードライバーによる高齢者向けの安全教室を開いたり、JAFの『オートテスト』で運転技術の向上を目指した企画も考えています。

 クルマのまちとして(ラリージャパンにより)若い方にもクルマに興味を持ってもらうきっかけとし、自動車産業の発展を目指したいです」

 また、長久手市の担当者は「(トヨタGRチームに)出場する地元出身の勝田選手を知ってもらうことで、長久手市にも興味を持ってもらうきっかけとなります」と話します。

 設楽町の担当者は「小さい町ですが、全世界に町の名前が発信されること」を最大のメリットとして挙げ、新城市、中津川市の担当者も同様の回答。各自治体ともに「地域の知名度が上がること」「観戦客の来訪により経済効果が期待できる」が共通した回答でした。

 WRCは全世界で人気のモータースポーツであり、世界各国に大会の様子が配信されるため、地域の名称とともにこの時期では紅葉シーズンで美しく彩られた山間地の景色や、日本らしい街並みなどをアピールできる絶好のチャンス。WRC終了後のインバウンド需要も期待できます。

■既に経済効果も出始めている一方で開催自治体ではデメリットも

 一方で、各自治体の担当者はメリットだけでなく開催によるデメリットも実感しているようです。

 設楽町の担当者は「(SSが)金曜日の平日に開催するので、交通規制が発生します。通勤や通学に少なからず影響あります」と話します。

 豊田市の担当者は、「交通規制が発生するので市民生活に影響がでます」としながらも「これまで開催してきたモータースポーツイベントでは市民の理解が得られています」とデメリットについてはさほど大きな問題ではないとしています。

 このように、ほとんどの自治体でデメリットとして取り上げていたものは、「地域住民への影響」。

 競技の実施に際し、交通を遮断する必要があるため、平日開催の場合は通行止めなどの交通整理は必須で、通勤や通学への影響は免れません。

 このことについて中津川市の担当者は「周辺住民の理解は絶対で時間もかかります」と開催の協力を得ることの大変さを話しています。

 さらに、その交通整理をはじめ、会場のピックアップやPR活動など費用がかさむことが予想されます。新城市の担当者は「(開催には)かなりの予算が必要でした」と振り返ります。

 また、SSについても各自治体で差があり、日程や開催のタイミングなどでデメリットを感じることもあるようです。

 中津川市の担当者は「今回は、中津川市内のSSが午前中1回で終了してしまいます。定員も少ないです」と話します。

 長久手市の担当者は「(ベッドタウンで宅地が多いという)地域の特性上SSが設定されません」と、地元出身の勝田選手が出場するなか、SS自体の設定がなされないことを嘆いています。

 では、地域住民から理解を得なければならないという高いハードルがあり、その上予算も必要、さらには予想外の延期が2回も重なり、結果的に厳しいといわざるをえない状況に直面していますが、開催地域では盛り上がりを見せているのでしょうか。

 ほとんどの自治体では、地域住民からの期待の声が多く、関心を寄せる方が多いといいます。

 岡崎市の担当者は以下のように話します。

「当初ラリー競技自体への不安の声がありましたが、説明を繰り返すうちに理解を得ることができ、度重なる延期でも欠かさずPRイベントをおこなうことで、地域住民の熱と期待を高めることができました」

 設楽町の担当者は、「新型コロナウィルスにより延期となったことを残念がる声が多かったです

 町民からは『今年開催できるの?』といった声も上がり、ようやく開催できて期待が膨らんでいます」と続け、WRCにより全世界が設楽町のことを知ってもらうきっかけとして前向きに捉えている地域住民が多いと分析しています。

 市民限定で観戦エリアが展開される新城市では、「地元の人たちは歩きで観戦エリアまで行くことができ、早くも『ラリーを見たい』という声もあがっています。

 新城では20年間ラリー競技が開催されており、国外のラリーイベントのような、ひとつのお祭りのようになるといいですね」と今後についても期待を寄せています。

 恵那市の担当者も「徐々に盛り上がりを見せている様子です」とコメント。

 各地域の経済効果については、大会の開始前ということで正確にはわからないとする自治体がほとんどでしたが、豊田市や設楽町によるとすでに宿泊施設の予約が埋まっており、新規での予約は取りづらく、経済効果は大いに期待できると話します。

 さらに設楽町の担当者は「SSとなる道の周辺に、ラリーファンと思われるスポーツカーやバイクなどが増えてきました」といい、開催前にも関わらず既に現地の様子を見たいモータースポーツファンが訪れているようです。

 恵那市の担当者は、「SSやリエゾン区間のある地域では、観客の受け入れ準備を進めています。観光や宿泊などの経済効果に期待しているところです」と、観戦者が市の観光地にもお金を落とすことで、経済の活性化に期待を寄せています。

 中津川市でも、「はっきりとしたもの(経済効果)は不明ですが、各媒体で市の名前が掲載されていることから、問い合わせも多く、広告としての効果を感じています」と、反響の高さを実感しているといいます。

※ ※ ※

 今回のラリージャパンでは、開催に向けての各自治体による準備や、予想外の延期が2度も続くなど、調整に困難を極める側面も多く、それにともなうデメリットも避けては通れない現実があります。

 一方で、開催によって全世界から各地域への注目が集まり、継続的な観光客増加と地域の活性化などに期待が持てるほか、通常横のつながりを持つことが少ない各自治体が、トヨタをはじめとする協賛企業と協働し、官民一体となってひとつのイベントを成功させようとするケースは珍しいといえます。

 このラリージャパンが無事成功し、経済効果も具体的な数値によって明らかになることで、自治体と企業の協働による成功事例として残ることになるか、地域の活性化という視点からも期待の高まる大会となっています。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

東京ガス、EV充電サービス「EVrest」に新料金メニュー…充電器ごとの柔軟な設定が可能に
東京ガス、EV充電サービス「EVrest」に新料金メニュー…充電器ごとの柔軟な設定が可能に
レスポンス
【RQ決定情報2025】スーパーフォーミュラの新チームをサポートする『KDDIレースアンバサダー』のメンバーが発表
【RQ決定情報2025】スーパーフォーミュラの新チームをサポートする『KDDIレースアンバサダー』のメンバーが発表
AUTOSPORT web
ホンダe:HEVと日産e-POWER 元エンジニアが判定「長所」と「短所」をガチで比べるとどっちがいいの?
ホンダe:HEVと日産e-POWER 元エンジニアが判定「長所」と「短所」をガチで比べるとどっちがいいの?
ベストカーWeb
「マイクロバス」はトヨタの商品名だと知ってた? 60年以上むかしのトラック「ダイナ」ベースのバスがとってもおしゃれ! 昭和懐かしのクルマを紹介します
「マイクロバス」はトヨタの商品名だと知ってた? 60年以上むかしのトラック「ダイナ」ベースのバスがとってもおしゃれ! 昭和懐かしのクルマを紹介します
Auto Messe Web
ユーザーがクルマの「リコール」を放置すると車検に通らない場合も! そもそも「リコール」ってどんな場合に出されるもの?
ユーザーがクルマの「リコール」を放置すると車検に通らない場合も! そもそも「リコール」ってどんな場合に出されるもの?
WEB CARTOP
ママチャリとロードバイクが合体!? トップチューブレス設計のスポーツバイク「ママチャリロード2」発売
ママチャリとロードバイクが合体!? トップチューブレス設計のスポーツバイク「ママチャリロード2」発売
バイクのニュース
ホンダ「WR-V」一部改良! 高級インテリア採用&精悍すぎる「ブラックスタイル」登場! 値上げ実施も“全車250万円台以下”をキープ!
ホンダ「WR-V」一部改良! 高級インテリア採用&精悍すぎる「ブラックスタイル」登場! 値上げ実施も“全車250万円台以下”をキープ!
くるまのニュース
2025年2月の新車販売ランキング、スペーシアが2位浮上 N-BOXはトップ変わらず
2025年2月の新車販売ランキング、スペーシアが2位浮上 N-BOXはトップ変わらず
日刊自動車新聞
テストでは最多周回を走り込んだメルセデス。弱点の克服を実感「開幕戦には完全な準備ができたマシンを持ち込む」
テストでは最多周回を走り込んだメルセデス。弱点の克服を実感「開幕戦には完全な準備ができたマシンを持ち込む」
AUTOSPORT web
ジャガーは何をやろうとしているのか 1900万円の新型EV、狙いは? 独占インタビュー
ジャガーは何をやろうとしているのか 1900万円の新型EV、狙いは? 独占インタビュー
AUTOCAR JAPAN
レクサス最新「“5人乗り”コンパクトSUV」に注目! リッター「28キロ」走る“最安&最小”な「LBX エレガント」がスゴイ! “豪華内装×特別カラー”など気になる仕様とは?
レクサス最新「“5人乗り”コンパクトSUV」に注目! リッター「28キロ」走る“最安&最小”な「LBX エレガント」がスゴイ! “豪華内装×特別カラー”など気になる仕様とは?
くるまのニュース
タカラトミーが Juju 選手とパートナー契約…スーパーフォーミュラマシンに「TOMICA」のロゴ
タカラトミーが Juju 選手とパートナー契約…スーパーフォーミュラマシンに「TOMICA」のロゴ
レスポンス
2025年2月の外国メーカー車販売、前年比3.6%増の1万8601台 2カ月連続プラス VW増加で底上げ
2025年2月の外国メーカー車販売、前年比3.6%増の1万8601台 2カ月連続プラス VW増加で底上げ
日刊自動車新聞
【中国】約200万円! トヨタ新型「bZ3X」25年3月発売に反響多数! 「RAV4より広くて快適そう」「価格安すぎ」「先進運転支援システムが気になる」の声も! 新たな「bZシリーズ」登場!
【中国】約200万円! トヨタ新型「bZ3X」25年3月発売に反響多数! 「RAV4より広くて快適そう」「価格安すぎ」「先進運転支援システムが気になる」の声も! 新たな「bZシリーズ」登場!
くるまのニュース
トヨタ「アルファード」でスポーツVIPを表現! 愛車に「リンファード」と名付けた理由は給油口を見れば納得…実は家族愛あふれる1台でした
トヨタ「アルファード」でスポーツVIPを表現! 愛車に「リンファード」と名付けた理由は給油口を見れば納得…実は家族愛あふれる1台でした
Auto Messe Web
黒いトヨタのエンブレムがカッコいい! ヤリス&ヤリス クロスに特別仕様車「Z“URBANO(ウルバーノ)”」が登場。
黒いトヨタのエンブレムがカッコいい! ヤリス&ヤリス クロスに特別仕様車「Z“URBANO(ウルバーノ)”」が登場。
くるくら
「運転者管理システム」の運用3月22・23日全国一斉停止、マイナカード移行作業で免許証更新業務もストップ[新聞ウォッチ]
「運転者管理システム」の運用3月22・23日全国一斉停止、マイナカード移行作業で免許証更新業務もストップ[新聞ウォッチ]
レスポンス
外国人が「簡単に取れる日本の免許証制度」とは? 問題が指摘される「外免切替」 国家公安委員長「制度改正の検討」を示唆! 事故実態は「把握せず」
外国人が「簡単に取れる日本の免許証制度」とは? 問題が指摘される「外免切替」 国家公安委員長「制度改正の検討」を示唆! 事故実態は「把握せず」
くるまのニュース

みんなのコメント

21件
  • TVでも放送あるみたいなので楽しみにしていますが、メーカーの力って凄いと思います。

    一時期のF1がそんな感じでしたよね。
  • 日曜日に民放でも放送するようですが、ヒロミと民法EXITが出るようで、たいした詳しくもなく、
    どうせワーワー騒ぐ事しか出来ないのでみません。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村