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現代の“アメリカン・ラグジュアリー”とは? ジープ ラングラー ルビコン試乗記

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現代の“アメリカン・ラグジュアリー”とは? ジープ ラングラー ルビコン試乗記

ジープの限定モデル「ラングラー ルビコン」に今尾直樹が試乗した。5ドアの「アンリミテッド」では味わえない魅力とは?

佇まいからして違うこれぞ“アメリカン・ラグジュアリー”だ!

『私を輸入車で連れてって』後編

舗装路面では、まったくもってひどいクルマ、と申しあげるほかない。うるさい、乗り心地が悪い、まっすぐ走らない。FCAジャパンが2020年1月14日に限定100台で販売したジープ「ラングラー ルビコン」は、そりゃそうなんである、なんせ第2次世界大戦で活躍したジープ直系で、舗装路を走る乗り物ではないのだから。

Sho Tamura私は大黒パーキングエリア(神奈川県)で、ポルシェ「カイエン クーペ」から乗り換えたのだけれど、ラングラー ルビコンの3ドアは、文明的なプレミアム・ブランドがつくるSUVとは佇まいからして違う。

民生用らしく黄色いカラーをまとってはいるものの、ドアのノブに手を触れたその瞬間、「こいつは違う」と、思わせる。カイエンに較べると、シンプルかつソリッドで、カイエンがすでにある大都市で開かれるパーティ用のクルマだとすれば、ラングラー ルビコンはその大都市をつくる工事現場のためのクルマだ。そう直感させる。

運転席に乗り込むこと自体が重要な通過儀礼で、Aピラーの内側に設けられた取っ手をつかまないと、とっても無理。よじ登るようにして室内に入って着座し、ふと天井を見上げると、脱着可能なFRP製ルーフに気づく。こりゃぁ、工事現場みたいだな、とつぶやく。

情けないことにシートの背もたれの調節方法がわからない。レバーもなければ、ダイアルもない。いや、レバーはあるが、それはシートの高さを調整するもので、いくら動かしても背もたれはウンともスンともいわない。編集のイナガキ氏に教えてもらってもわからない。よ~く見ると、フツウのシートのレバーなりがあるその位置にヒモみたいなのがペロリとぶら下がっている。それを引っ張る。なんてヘビーデューティなんだ!

ダッシュボードはモダンさとタフさが同居している。「G-SHOCKだ!」と、私が思ったそのココロは、精密機械だけど、泥にまみれてもいい、という感じのデザインだから。なんとなく安っぽさが同居してもいて、それはそれで潔くて、カッコイイ。メタリックのエンジ色はルビコンの証だ。

ルビコンは、まぎれもなく世界最強の4×4オフローダーの1台であるラングラーのオフロード性能をいっそう強化した、ほとんどオフロード専用モデルである。日本市場では5ドア(ラングラー アンリミテッド)のみカタログ・モデルとして輸入されている。

3ドアのラングラーはそもそも受注生産で、需要が見込めない。そういうなかで、ルビコンを限定100台販売しようというのだ。このような新しい試みができる背景には、ジープ全体で1万3354台、前年比116.8%という2019年の好調な日本におけるセールス結果があるのは間違いない。マーケット、ファンの支持があるからこそ、FCAジャパンもその期待に応える方策を打ち出せるわけである。

アメリカン・ラグジュアリーの真髄Sho Tamura輸入されるのは右ハンドルの8速オートマティックのみ。本国では6速マニュアルがスタンダードである。駆動方式は、ラングラー アンリミテッドなどとおなじく、副変速機がついていて、2H(後輪駆動)、4H AUTO(電子制御4WD)、4H PART TIME(センターデフ直結状態の4WD)、さらに直結4WDのまま、ギア比を低めることができる4L、と4つのモードの切り替えができる。

スタンダードのラングラーとの違いは、4Lのときのギア比が2.7から4.0へといっそう低められていることにくわえて、前後ディファレンシャルを、前と後ろ、または後ろだけ、ダッシュボードのスイッチでロックのON/OFFができる。さらに、フロントのスタビライザーをスイッチひとつで切り離せる「電子制御式フロントスウェイバーディスコネクトシステム」を備えてもいる。

これらは、私にとっては猫に小判、豚に真珠なシステムで、私は大黒PAからベイブリッジを渡り始めた。高い着座位置から横浜港が見渡せる。見渡せるのはいいけれど、横風が強い日だったこともあって、なんだかフラフラする。乗り心地は、いまどき4輪リジッドだからして、つねに上下動がある。ベイブリッジから都内へと向かう路面がものすごくうねっていることを私は初めて実感した。

オフロード性能に特化したルビコンは、特殊な専用タイヤを履いてもいる。BFグッドリッチの「マッドテレーンT/A KM2」という銘柄の、サイズは255/75R17のM+Sである。75という扁平率で、ソフトなあたりになるはずのオール・シーズンなのに、ゴムのゴツゴツしたトレッド・パターンから受けるイメージ通りというべきか、マッドやスノー、泥濘、ガレキ等では威力を発揮するのだろうけれど、いなばの白うさぎみたいに、あっちのゴムからこっちのゴムへとぴょんぴょん、小さく飛び渡りながら走っている感がある。つまり、路面との接地感がまるでない、というと語弊がある。一瞬しかない。

もしも、あなたが、いや、他人のことはよいとして、仮に私がラングラー ルビコンを毎日使うのだとしたら、タイヤを即刻オンロードに適した銘柄に変えたい。ちなみに本国のホームページをのぞいてみると、ルビコンのタイヤはLT285/70R17とある。LTとはライト・トラックを意味する。見た目は、いっそう、ぶっとくてカッコイイ。

3ドアで、ホイールベースが2460mmと短い、ということもある。ルビコンの特徴は、5ドアのラングラー アンリミテッド ルビコンにも当てはまるわけだけれど、アンリミテッドはホイールベースが3010mmもある。一般に、ホイールベースは長いほうが直進安定性も乗り心地もよくなるはずである。

逆に、ショート・ホイールベースの利点は、機動性に優れることだ。岩場とかでフロアをぶつける可能性も小さくなるし、最小回転半径も短くなるし、当然、日常の取りまわしも楽チンになる。

とはいえ、舗装路を4H AUTO(電子制御4WD)で走っていると、3.6リッターV型6気筒エンジンは、8速トップ&2000rpm弱ぐらいでゆるゆるまわっていて、エンジンは静かだけれど、フロント・デフのギアの音なのか、前のほうから高周波音が聞こえてくる。ロード・ノイズも少々、室内にこもる。FRPの屋根を取っ払って、オープンで、自然のなかを走ったら爽快であるに違いない。そうなのである。閉じこもっていてはいけないクルマなのだ。

モノコックが主流になり、軟弱化が止まらないこの世界で、ラダー・フレームと前後リジッドのサスペンションを頑なに守り続けているのがラングラーで、ラングラーのなかでもオフロード性能を磨き上げたのがルビコンである。ルビコンは、コンクリートで覆われた都市から、大自然へと飛び出していくための道具なのである。アメリカ人が憧れる、西部開拓史的なアメリカ流カントリー・ライフを味わうための、ホンモノの4×4だ。

3ドアは5ドアより実用性が低い分、いっそう贅沢なわけだけれど、こんなに贅沢なクルマがたったの589万円。アメリカン・ラグジュアリーの真髄は、ちょっと無理すれば、ですけれど、万人に開かれている!

ということで、コイツは現代におけるラグジュアリーの意味を知るひとたち、あるいは知ろうというひとたちにとっての必須アイテムなのだ。100台じゃ、足りないかも……。

文・今尾直樹 写真・田村翔

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