4代目フリードが売れまくりな理由とは?
ホンダのコンパクトミニバン「フリード」がフルモデルチェンジで3代目となり、受注状況は絶好調です。さっそく試乗したモータージャーナリストの橋本洋平さんは、走りの進化はもちろんですが、2列目・3列目の快適性の劇的な進化に「そこまでやるか!」と目を見張ったとか。そんなフリードの注目ポイントを解説していきます。
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専属ドライバーにされがちなパパさんたちでも納得の走り
いまホンダ「フリード」の販売が好調だ。2024年6月28日に新型3代目が発売されたが、受注はおよそ1カ月で3万8000台を記録。そもそもの月間販売計画は6500台だというから約6倍の受注というわけだ。もちろんそれは新型車効果なのは言うまでもないが、旧型はモデル末期であっても1万台以上を記録していたのだから、まだまだ売れても不思議ではないだろう。
その魅力は一体どこにあるのか? ひとつ目はハイブリッドモデルのパワーユニットを刷新したことだろう。83%ものユーザーが選択したという「e:HEV」は、2モーターハイブリッド。基本的にはモーターで駆動し、もうひとつのモーターは発電機というわけだ。低負荷で巡行状態になるとエンジンとタイヤが直結モードとなるギアが繋がる、なかなか凝ったシステムを搭載した。おかげで走ればシームレスな加速を実現してくれる。いつでも要求した通りのトルクを生み出してくれるし、フル加速などをしなければエンジンだって静粛性は高い。
ふたつ目はシャシーの進化だ。プラットフォームはキャリーオーバーとなるが、フロアやサイドシル、フロアフレーム、バルクヘッドなどは新作。開口部やダンパー取り付け部、リアクオーターピラーなどの剛性アップも行なっている。走ればタウンスピードからしなやかな乗り味で、突き上げ感を伴うようなことはない。対して高速走行をしてみても、安定感が高く、ロングドライブでも疲れ知らずな仕上がりとなっている。これなら専属ドライバーにされがちなパパさんたちでも納得だろう。
雪道でも狭い市街地でもドライブしやすい
今回は4WDモデルにも試乗したが、そちらは重量が増すことにより、ドッシリとした乗り味になっている。乾燥路においてはその4WDの恩恵はほとんどないが、2月にテストコースを走った印象を振り返ると、かなり走破性が高く改められていたことが印象的。旧型比でリアの駆動力を10%も引き上げることで、トラクションはかなり豊か。急坂の発進でもフロントがブレずに発進。高速域までリアにしっかりとトルクを与えてくれることで、安定感が高かったことも印象的だった。その気になればアクセルで向きを変えられるし、雪道にも出向く方々にはかなりオススメな仕上がりだ。
また、運転席からの視界がかなり広がったところも使いやすい。ピラーやダッシュボードにあった視覚的ノイズを大幅に減らすことに成功した新型フリードは、今回試乗した「港の見える丘公園」周辺の狭い道であっても扱いやすかった。駐車車両をかわしたり、その状況で対向車とすれ違ったりという状況であったとしても、気を遣うことなく駆け抜けることが可能。運転が慣れていない人であってもこれならドライブしやすいのではないだろうか。
このクラスでは異例な2列目上部のエアコン吹き出し口!
魅力に感じたのは走りだけじゃない。2列目以降の快適性が大幅に向上したことも今回のポイントのひとつだ。なんと天井にはサーキュレーターではなく、しっかりと冷気が出るエアコンの吹き出し口がセットされたのである(タイプ別設定)。これは運転席後ろのピラー内側にダクトを入れ込み、天井まで冷気を持って行ったのだ。このクラスのミニバンでここまでやるとは驚きだ。ピラー内側の内装は旧型に対してやや出てしまったというが、その存在が気になるほどではないし、たとえリアのエアコンを全開にしたとしても、耳障りな音がしないところはさすがだ。結果として2列目、3列目に座ったとしても冷気を上から感じられるところが最高だ。
さらに従来モデルからこのクラスでは大きなアドバンテージとなっている2列目のキャプテンシートが進化していたことも感心する。シートの骨格は変わらないらしいが、より深く腰掛けられるようにサポートを改め、一方で座面は前側を15mmほど持ち上がるようにすることで、実質的に座面が伸びたかのような感覚が得られるのだ。ブレーキングでも座面がズレることなくきちんと身体をホールドしてくれるところが嬉しい。そこに座ると、このクルマが基本的には5ナンバーサイズのミニバンであったことを忘れさせてくれるほどの快適性で、ちょっと贅沢な空間だ。乗り心地も豊かで空調も快適。その上で走りはなめらかなのだから、そんな感覚になるのも当然の流れだろう。
こうしたベースがある上で、スッキリとしたデザインの「AIR」と非日常を感じさせる「CROSSTAR」を与えたのだから魅力はさらに高まる。5ナンバーサイズがマストであればAIR一択だが、そこが許されるならオーバーフェンダーでアウトドアテイストが漂うCROSSTARを選択するのもありだろう。ちなみに足まわりもタイヤも基本的な走りに違いはない。欲を言えばCROSSTARならもう少し車高は高く、さらにゴツいタイヤでも履いていてくれたらとも思えたが、あとはユーザー次第といったところだろうか。
スロープ仕様の新たな活用法にも要注目!
最後にCROSSTARに与えられた「スロープ」の存在もご紹介しておきたい。こちらは平たく言ってしまえば福祉車両であり、従来は車いす仕様車という表記だったものを改め、さまざまな使い方を提案したところが新しい。車いすだけでなく、ベビーカーや台車などを乗せて日常使いに、また電動キックボードやキャリーカートを載せてアウトドアにと、さまざまな使い方をしてほしいというのだ。
じつは福祉車両は誰が買ったとしても非課税であり、車両本体価格、オプション装備、そしてそれを取り付ける工賃に対して消費税がかからない。結果として標準的なグレードを買った場合との比較は、オプション装着の仕方次第では数万円しかないという状況も出てくる。
この制度を使ってお得にレジャーに使うというのは気が引けるが、逆に多くの人に「スロープ」を選んでもらえれば、結果的に福祉車両のコストが下がり、車いす仕様がもっと買いやすくなるという好循環も生まれてくるという。もっとユーザーに選んでもらうには、スロープの色を変えたりしなければならないとも感じるが、いずれにしても車いす仕様を使って遊ぼうよという提案は面白い。いまはまだ全体の0.6%しか受注はないらしいが、この世界もより広がることを期待したい。
試乗車の諸元
■HONDA FREED e:HEV CROSSTAR(4WD・6人乗り) ホンダ フリード e:HEV クロスター(4WD・6人乗り)
・車両価格(消費税込):343万7500円 ・全長:4310mm ・全幅:1720mm ・全高:1780mm ・ホイールベース:2740mm ・車両重量:1580kg ・エンジン形式:直列4気筒DOHC+モーター ・排気量:1496cc ・エンジン配置:フロント ・駆動方式:4WD ・変速機:CVT ・エンジン最高出力:78kW(106ps)/6000-6400rpm ・エンジン最大トルク:127Nm/4500-5000rpm ・モーター最高出力:90kW(123ps)/3500-8000rpm ・モーター最大トルク:253Nm/0-3000rpm ・公称燃費(WLTC):21.1km/L ・燃料タンク容量:53L ・サスペンション:(前)マクファーソンストラット、(後)ド・ディオン式 ・ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク、(後)ディスク ・タイヤ:(前&後)185/65R15 88S
■HONDA FREED e:HEV AIR EX(FF・7人乗り) ホンダ フリード e:HEV エアーEX(FF・7人乗り)
・車両価格(消費税込):309万1000円 ・全長:4310mm ・全幅:1695mm ・全高:1755mm ・ホイールベース:2740mm ・車両重量:1480kg ・エンジン形式:直列4気筒DOHC+モーター ・排気量:1496cc ・エンジン配置:フロント ・駆動方式:FF ・変速機:CVT ・エンジン最高出力:78kW(106ps)/6000-6400rpm ・エンジン最大トルク:127Nm/4500-5000rpm ・モーター最高出力:90kW(123ps)/3500-8000rpm ・モーター最大トルク:253Nm/0-3000rpm ・公称燃費(WLTC):25.3km/L ・燃料タンク容量:42L ・サスペンション:(前)マクファーソンストラット、(後)車軸式 ・ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク、(後)ディスク ・タイヤ:(前&後)185/65R15 88S
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