最近まで1万台以上売れていたアルファードが、4月は7576台、5月は5947台と販売台数が急に下降した。
高額な高級ミニバンのアルファードが毎月1万台以上売れていたのだから驚くべき売れゆきだが、そのいっぽうでささやかれていたのが「この好景気はある時、急に終わるのでは?」という売れすぎにもみえる売れゆきを懸念する声。
これを通称“アルファードバブル”などと呼ばれることもあるようだが、4月~5月の販売台数の減少は、アルファードのバブルの崩壊がついに起こりはじめたということなのか?
これまでほどには売れていないアルファードの要因を、新車販売事情に詳しい小林敦志氏が解説する。
文/小林敦志 写真/TOYOTA、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】トヨタの屋台骨を支える1台である 高級ミニバン『アルファード』を写真でチェック!!
■アルファードは4月28日に一部改良された
最近は街なかを歩いていると、とにかくアルファードが走っているのを多く見かける。ボディカラーはパールホワイトもしくは、黒系ばかり。
リセールバリューがもはや“メルセデスを超える高レベル”といっても言い過ぎではないアルファード。
アルファードはパールホワイトやブラック系のボディカラーのリセールバリューが高い
しかし、3.5L V6やエグゼクティブラウンジ、そしてパールホワイトもしくは黒系ボディカラー以外を選択すると、たとえアルファードとはいえども、リセールバリューの大幅下落を招く“アンタッチャブルセレクト”となっているのだ。
そのアルファードだが、ヴェルファイアと同時に、2021年4月28日に法規対応をメインとした一部改良を実施している。この改良と同時にヴェルファイアはモノグレード(単一グレード)となって、アルファードも実は一部グレードが廃止されているのだった。
一見するとアルファードはまだまだワイドバリエーションにも見えるのだが、“アルファードバブル”をより享受しようとすると、「S Cパッケージ」もしくは、特別仕様車となる「S “タイプゴールドII”」の事実上二者択一となっているのが現状ともいえる。
2021年4月の一部改良で新設された特別仕様車 アルファード「S “タイプゴールドII”」。ベース車のSグレードに対して25万5000円高い価格となっている
■「アルファードバブル崩壊」が始まった? 2021年4月、5月の販売動向
アルファードの自販連(日本自動車販売協会連合会)統計による2020年度(2020年4月~2021年3月)での年間販売台数は10万6579台となり、月販平均台数は約8881台となる。
支払い総額で600万円も当たり前の高級ミニバンを、“コロナ禍”という大きな社会不安が続くなか、年間で10万台強販売したことについて世間を大いに騒がしたのは記憶に新しい。
ところが2021年度に入ると、アルファードの販売台数が2021年4月7576台、2021年5月5947台となり、さっそく「アルファードバブル崩壊か」といった話も出始めている。しかし……。
2021年1月~5月のアルファード・ヴェルファイア月別販売台数推移グラフ
アルファードが一部改良を行ったのが4月28日。となるとすでに3月中にはオーダーストップとなり、4月は改良前モデルの新規発注はできなくなっていた。
改良後モデルについては、正式発表前の予約受注活動はできたものの、新規登録できるのは4月28日以降となり、29日は祝日となるので、改良後モデルの4月中の新規登録(ナンバープレート取得)はかなり限定的というか、ほとんど不可能に近い話(販売店も連休に入ってしまうので)となる。そのため、4月の販売台数のほとんどは、改良前の販売店在庫車となる。
改良発表まで1カ月を切った段階で、7576台も新規登録かけられるほど在庫を抱えていたというのも驚きだが、あるトヨタ系ディーラーマンに話を聞くと、「アルファードは改良などの直前には中古車だけでなく、新車販売もよく動く(業者が購入し、未使用中古車として販売するケースも多いようだ)」と聞いたことがあるので、意図的に在庫を抱えた販売店が多かったようだ。
改良直前で、しかも年度末決算セールのなかにあたる3月に約1.4万台販売しておきながら、年度末決算セールの反動で新車がなかなか売れない4月に約7500台販売してしまうところをみると、まだまだ“アルファードバブル”は終わりを見せるどころか、より勢いづいているようにも見える。
5月の販売台数は4月よりも少なくなっているが、これは5月上旬にはトヨタ系ディーラー各店がゴールデンウイークのため長期休暇をとっており、また登録申請を受け付ける運輸支局もゴールデンウイーク中に連休に入っており、稼働日数が少なかったことがまず要因として考えられる。
改良が4月28日に発表されているので、本格的な販売促進活動がディーラーの長期休暇明けとなっていることも大きいだろう。また、トヨタの他車ほどではないが、半導体不足による納期遅延が、アルファードでも若干出始めていることも影響しているようである。
■新車販売が活況な勝負の6月を乗り切れるか
改良後のアルファードの立ち上がり販売動向を見極めるのは、2021年6月単月の販売台数を見極める必要があるだろう。6月は四半期決算月となっており、アルファード以外でも新車販売全体が活況を呈する時期。
いつもとは勝手が相当違うので、どこまでお祭り騒ぎになるかはわからないが、東京オリンピック&パラリンピックの開催も決まったので、7月は世の中が浮き足立って、新車販売もなかなか先が読みにくくなる。そのため、6~7月に展開される夏商戦では、特に今年は6月に比重を置く傾向も目立っていた様子。
過去にもアルファードは6月に“ほぼ言い値”で契約したといった話も聞くほど乱売していた時もあった。
半導体不足の影響で納期が遅れ気味になってきたとはいえ、ヤリスクロスやハリアーなどに比べれば、まだまだアルファードの納期は早いほうなので、セールスマンも利幅が大きく、すぐに実績として反映できるクルマだけに積極的に今後も売り込んでくるはずである。
■まだまだ売れる『アルファード』の販売スタンスに変化なし
ディーラーで話を聞くと、「前々からヴォクシーを希望されるお客様に、『“チョイ足し”でアルファードに乗れますよ』とお話すれば、かなりの確率でアルファードを選んでいただきました。
残価設定ローンを5年プランで組んでいただくと、支払い最終回分の残価相当額分を据え置く時に、残価計算に必要な残価率はアルファードがほぼ50%なのに対し、ヴォクシーは30%を切り20%台になっています。そのため、しばらくはアルファードを選ばれるお客様は減らないでしょうね」とのことであった。
残価設定ローンの支払いイメージ。アルファードの場合は残価率がほぼ50%と大きい(トヨタHPより)
ヴォクシーは全体で見ると、過走行や内外装のコンディションがあまりよくないなど、“酷使”されるケースも目立つので残価率がなかなか上がらない。
ヴォクシー 特別仕様車 ZS“煌(きらめき)III”。トヨタ販売店の全車併売化によって次期型ではノアだけに統合される可能性があるため、ヴォクシーは「ZS」グレードのみの販売となっている
その点アルファードでは、完済前に下取り査定を行うと、設定した残価率を超えるような抜群のリセールバリューを見せることも多いのだが、ヴォクシー系ではなかなか期待できないので、クルマを酷使しないお客を選んでは、アルファードを薦めていくというセールスパターンも今後変化はなさそうである。
まだまだ、新型コロナウイルス感染拡大の収束は見えてこず、最低年内いっぱいは感染予防のための、行動自粛が要請されることになるだろう。となると、新車ディーラーもイベントを開催して集客をはかるということもできない。
2020年度がトヨタ一強であった背景には、政府の度重なる緊急事態宣言などもあり、週末イベントを開催しての集客ができないなか、トヨタの販売力やネットワークを駆使して個別に管理ユーザーへ店頭誘致活動をした成果が大きく貢献しているとのこと。
かつて「販売のトヨタ」と呼ばれていたころから、トヨタ系ディーラーでは“提案型営業”をおこない顧客の信頼をがっちりつかんでいる
なので、2021年になってからは、東京及び隣接県などでは、緊急事態宣言や“まん防(まん延防止等充填措置)”などが発出されなかった日のほうがはるかに少ないことを考えると(近畿圏や東海圏、九州なども首都圏よりは期間は限定的だが広範囲に発出された)、少なくとも2021年や2021年度締めでの上半期はトヨタ一強という状況に変わりはないと見ることができる。
それに大きく貢献する1台がアルファードであることも間違いはないといっていいだろう。
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みんなのコメント
モデル末期でよく売れていますよ
街で台数が多すぎるのもあるしネットで予想図などが出まわってきて新型待ちもいると思う