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【試乗】ポルシェ カイエンE-ハイブリッドとターボS E-ハイブリッド、街乗りでは互角のパフォーマンス

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【試乗】ポルシェ カイエンE-ハイブリッドとターボS E-ハイブリッド、街乗りでは互角のパフォーマンス

日本でも2タイプの「E-ハイブリッド」を選択できるカイエン。それぞれにどんな魅力があり、どんな違いがあるのか。ポルシェが目指す電動化と高性能の理想的融合がそこに見える。(Motor Magazine 2020年9月号より)

同一モデルに2種類のPHEVを用意するワケは?
2017年に発売された3代目カイエンのラインナップが、日本国内でもようやく出そろった。ドライブトレーンは合計6タイプ。これを、既存のSUVボディと3代目になって新設されたクーペボディのそれぞれに用意する、計12モデルが勢揃いしたのである。

●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)

ここで注目されるのが、カイエン史上初めて、シリーズ中に2種類の電動ドライブトレーンがラインナップされた点にある。ひとつはカイエンE-ハイブリッド、そしてもうひとつはカイエンターボS E-ハイブリッドである。

ポルシェのE-ハイブリッドはプラグインハイブリッド(PHEV)を意味する。車載のバッテリーは外部電源からも充電可能、貯めた電力で電気自動車(BEV)のようにも走れるハイブリッド車が、一般的に言われているPHEVだ。

2010年に初のハイブリッドモデル「カイエンSハイブリッド」をスポーツカーメーカーとしていち早く投入したポルシェは、その4年後に初のPHEV「カイエンS E-ハイブリッド」を発売するなど、プレミアムカーの電動化を常にリードしてきた。それにしてもひとつのモデルに2種類のPHEVを用意するのは異例中の異例。なぜ、そこまでポルシェは電動化に熱心なのか?

理由のひとつは、ポルシェというブランドの遺伝子にかかわることだが、彼らは創業当時から自動車の効率化に熱心に取り組んできたことで知られる。そもそも第1作目である356からしてフォルクスワーゲンビートルをベースに開発されており、初期のモータースポーツ活動では効率の高さを武器に戦ってきたという経緯がある。

そうした血筋は、いまも911に8気筒や気筒ではなく水平対向6気筒というコンパクトなエンジンを積んでいることからもわかるとおり。カイエンで実践された電動化も、それが効率の改善に役立つからこそポルシェは積極的に取り組んでいるのだ。

もうひとつの理由は、世界最大のスポーツカーメーカーとしての社会的責任感ではないか。CO2排出量削減を率先して実行する社会的責任があると、考えているのだろう。この点を深く自覚しているからこそ、彼らは積極的に電動化と向き合っていると考えられる。では、カイエンE-ハイブリッドとカイエン ターボS E-ハイブリッドとは、どんなクルマなのか。そのドライブトレーンを中心に解説してみよう。

最大の違いはベースとなるエンジンにある。E-ハイブリッドは最高出力340psの3L V6ツインターボなのに対し、ターボS E-ハイブリッドは550psの4L V8ツインターボを積む。これに組み合わされるモーターは最高出力136psで共通。エンジンとモーターを組み合わせたシステム出力はE-ハイブリッドが462psでターボS E-ハイブリッドは680psとなる。

システム出力がエンジンとモーターの最高出力を足し合わせた数値よりも小さくなるのは、エンジンとモーターで最高出力を発生する回転数が異なるから。勘のいい読者であれば、これを聞いただけで「エンジンとモーターがダイレクトに接続されたパラレル式ハイブリッド」であることに気づくはず。そう、多くのドイツ製ハイブリッド車と同じように、カイエンのPHEVモデルもハイブリッドはパラレル方式である。

ハイスピード領域での性能に優れたパラレル方式を採用
ここでハイブリッドの形式について簡単におさらいしておこう。 ポルシェが採用するパラレル方式はエンジンとモーターが協力し合って駆動力を生み出す方式。通常、エンジンとモーターはクラッチを挟んで接続されており、その駆動力は変速機を介して駆動輪に伝えられる。モーターと駆動輪の間に変速機が介在するため、エンジンと同じように幅広い速度域をモーターでカバーできることが特徴のひとつとされる。

いっぽう、日産のeパワーやホンダのe-HEVのように、エンジンで発電した電力でモーターを回し、その駆動力を車輪に伝えるハイブリッドをシリーズ方式という。これはエンジン負荷を効率が高い領域に保つことで燃費の改善を図るのが特徴。ただし、多くのEVと同じようにモーターと駆動輪の間に変速機を持たないので、高速走行が苦手。この弱点を除くため、エンジンと駆動輪を機械的に接続できる構成としたのがホンダe-HEVの特徴でもある。

最後のシリーズパラレル方式はトヨタのTHSに代表される。エンジンとモーターを遊星ギアでつなぎ、両方のパワーを混合して駆動輪に伝えるため静かでスムーズなことが長所とされるが、遊星ギアの特性により高速域では効率を上げにくいという弱点があった。このためトヨタは変速機を組み合わせて効率の改善に努めている。

こうしてみると、高速域で活躍できる余地がもっとも大きいのがパラレル方式であることがわかる。そして、これこそがポルシェがパラレル方式を選ぶ最大の理由といってもいいだろう。ちなみに2台のカイエンハイブリッドはモーターの力だけで最高135km/hに到達できる。0→100km/h加速がE-ハイブリッドで5秒、ターボS E-ハイブリッドでは3.8秒と驚異的な速さを示すのも、モーターの助けを借りていればこそ。つまり、CO2排出量削減だけでなくパフォーマンスの改善にも役立てられるのがパラレル方式のハイブリッドなのだ。

もうひとつ、カイエン ハイブリッドで重要なポイントは操作方法がほかのカイエンとまったく同じ点にある。もちろん、PHEVゆえに充電に関する機能やハイブリッドシステムのモード切り替えなども用意されてはいるが、こういったことにまったく手を触れずに走らせることも可能。さらにいえば、ナビゲーションシステムや各種アシスタンスシステムなどの使い方も通常とまったく同じで、たとえクルマのメカに詳しくない家族が運転する際にも特別な操作や知識は一切不要。この辺もカイエンハイブリッドが愛される理由のひとつといえるだろう。

市街地走行での心地よさは、E-ハイブリッドに軍配
まずはターボS E-ハイブリッドに試乗してみた。街中を大人しく走っている限り、この巨大なSUVが0→100km/加速を4秒以下で走りきる瞬足の持ち主とはよもや思うまい。そのくらい、タウンスピードで走らせるターボS E-ハイブリッドは従順で扱い易い。エンジン音も静かなうえ、エンジンが停止するEV走行では驚くほどの静けさにキャビンが包まれる。乗り心地は、タイヤのゴツゴツ感が多少伝わるけれども不快ということはない。パフォーマンスの高さを考えれば、高速走行時の快適性はむしろ高いと評価できるくらいだ。

こうした印象はE-ハイブリッドに乗り換えても変わらない。いや、確かにE-ハイブリッドのほうが足まわりはしなやかで乗り心地は良好だが、2台の印象はとてもよく似ている。カタログ上のシステム出力は680ps対462psと大差がつくが、だからといってE-ハイブリッドは機敏さに欠けるかといえばそんなことはなく、市街地から高速道路に至るまでいつでも心地いいレスポンスとドライバビリティをもたらしてくれる。また、足まわりに大入力が加わったとき、ボディの一部に軽い微振動が残る点も2台に共通している。というわけで、ターボSE-ハイブリッドでなくてもE-ハイブリッドで十分というか、むしろ乗り心地が優しい分、E-ハイブリッドのほうが好ましい。ところが、ワインディングロードでムチを入れてみたところ、2台のキャラクターが面白いくらい明確に浮かび上がった。

まず、低回転域ではE-ハイブリッドと同等に感じられたターボS E-ハイブリッドのパワーユニットが、アクセルペダルを大きく踏み込んだ途端に表情が一変。動き出した瞬間から猛烈な勢いで加速し始めたばかりか、5000rpmを越えるとまるでロケットブースターが点火したかのように勢いを増し、さらに加速感が強まるのだ。試乗当日は路面が軽く湿っていたせいもあるが、トップエンドで炸裂するパワーにタイヤが耐えきれなくなるのか、瞬間的にトラクションが抜けてステアリングがすっと軽くなるような挙動を示したことにも驚かされた。

こうなると、ターボS E-ハイブリッドはハンドリングさえも一変する。まるでステアリング径がすっと小さくなったかと思うほどシャープな反応を示し、車重の重さも重心の高さも一瞬のうちに消え去ったかのような軽快さでコーナーを駆け抜けていく。ロールはしっかりと抑えつつも前後の荷重移動は素早く行えるサスペンションが強力な武器となり、両手と右足を連携させながらの小気味いいドライビングを満喫できる。

実は大きく異なる性格PHEVの奥深さを実感した
このとき思い出したのが、まだ荒削りだった初代カイエンのターボSで、迫力あるコーナリングフォームや路面からのインフォメーションを正確に伝えるステアリングの印象がまさにうりふたつ。ここまでヤンチャな性格を前面に押し出したポルシェは、最近では911GT3とGT3 RSくらいのものだろう。

一方のEハイブリッドはどれほどペースを上げても荒々しい側面は見せず、悠々とワインディングロードを駆け抜けていく。かなり攻めたつもりでもステアリングの感触やスタビティ感にほとんど変化は見られない。このクールさこそ、現代のポルシェに共通するキャラクターといえる。

つまり、普段はともに扱いやすいのに、本気で飛ばしたときだけ性格が大きく異なる2台をポルシェはPHEVで作り分けたのだ。言い換えれば、同じ電動車でも異なる世界観を描き出せる可能性を示したのである。

そこには、電動化時代を迎えてもモデルごとの明確な個性を生み出そうとする、ポルシェのしたたかな戦略が見え隠れする。(文:大谷達也)

■ポルシェ カイエン ターボS E-ハイブリッド主要諸元
●全長×全幅×全高=4926×1983×1673mm
●ホイールベース=2895mm
●車両重量=2040kg
●エンジン= V8DOHCツインターボ
●総排気量=2995cc
●最高出力=550ps/5750-6000rpm
●最大トルク=770Nm/21000-4500rpm
●モーター最高出力=136ps
●モーター最大トルク=400Nm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT
●車両価格(税込)=2408万円

■ポルシェ カイエンE-ハイブリッド主要諸元
●全長×全幅×全高=4918×1983×1696mm
●ホイールベース=2895mm
●車両重量=2040kg
●エンジン= V6DOHCターボ
●総排気量=2995cc
●最高出力=340ps/5300-6400rpm
●最大トルク=450Nm/1340-5300rpm
●モーター最高出力=136ps
●モーター最大トルク=400Nm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT
●車両価格(税込)=1275万円

[ アルバム : ポルシェ カイエン ターボS E-ハイブリッド/E-ハイブリッド はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

2件
  • 主要諸元のデータが違います。
    排気量や車重がちぐはぐなのは、火を見るより明らか
  • それにしても、良い車だ。
    お金に余裕がないと思うしターボSEは買えない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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