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明瞭でためらいも迷いもないスズキの戦略【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

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明瞭でためらいも迷いもないスズキの戦略【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

車の最新技術 [2024.09.20 UP]


明瞭でためらいも迷いもないスズキの戦略【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】
文●池田直渡 写真●スズキ

【スズキ フロンクス】これは価格次第でヒットの予感!【九島辰也】

2024年の今、最も注目するメーカーは? と問われたら、多分ほとんど迷わず、スズキと答えると思う。

独自の道を独自の技術で切り拓き、洋々たる未来へ向かう姿は眩しくさえある。と言う話は本気も本気なのだが、多分普通の人に言っても中々ピンとこないのだろうと思う。ちょっと情勢が見えている人ならば「トヨタじゃないの」とか、情報ソースが全部日経の人なら、「BYDでしょう」とか、啓蒙思想の強い人なら「テスラしか勝たん」と、まあ人それぞれで一向に構わないのだけれど、スズキが今何をやっているかはちょっと押さえておいた方がいいと思う。

スズキのアドバンテージは、大きく分けて2つある。ひとつは強みを発揮している市場である。ご存知の通りスズキはインドで長年トップシェアを維持してきており、現在でもインド国内シェアの4割を占めている。そしてもうひとつがスズキの背伸びをしない堅実な技術戦略である。

順を追って説明しよう。まずはインドである。インドの人口は2023年に中国を抜き14.17億人と世界一になった。しかも2011年の調査による人口ピラミッドの世代最多は10~14歳。つまり現在の23~27歳。高齢化著しい日本から見ると羨ましいほどの若者大国であり、当面人口ボーナス期が続く。むしろ人口増加に対して仕事がないことが社会課題なので、自動車メーカーから見れば若い働き手がたくさんいる夢の様な環境である。

乗用車市場は2022年実績で過去最高の389万台で、前年比127%の伸長を見せている。スズキのインド法人マルチスズキは同年実績161万台で、マーケットシェアは41.3%。前年度比121%で、躍進と言える成長を遂げながらも、市場全体では少し押し込まれた。ざっくり言えば、クルマが売れて売れて、作っても作っても足りない。各社が競い合う中で投資のペースをどれだけ早められるかがキーになる。


スズキは2023年12月、インドのグジャラート工場で累計生産300万台を達成している
スズキは現在グジャラート州に年産25万台キャパの第4ラインを、そして同州に100万台の第2工場を予定している。さらに2025年にはカルコダ工場の稼働が予定されており。既存工場と合わせて400万台の生産体制を準備中である。

2030年には市場全体は600万台と予想されており、同年にマルチスズキは300万台、シェア50%を見込んでいる。しかもインドの内需だけではなく、インドからの輸出も100万台計画中で、この輸出先は次世代マーケットとして注目を集めるアフリカである。

つまりスズキはインドの巨大な内需によるビジネスに加えて、そのインドを対アフリカ輸出拠点と位置付けて、インドの次世代に唾を付けている。インドからの輸出でアフリカにいち早く販売網を構築し、その次は当然現地での生産を狙って行くことになるだろう。

すでに一段目のロケットに点火して、凄まじい勢いで上昇中のインドと、その次が期待されるアフリカ両方にリーチが掛かっている。この長期戦略が成功した暁には、おそらくはトヨタの現在の台数、1000万台に肉薄することになるだろう。

そうしたマーケットの成長に合わせて、スズキは多様なカーボンニュートラル(CN)戦略を用意する。いわゆるマルチパスウェイである。2030年までにインドのグリーン戦略に合わせて6モデルのBEVを投入。ただし、インドの経済力ではオールBEVは難しい。内燃機関も併売しなければ健全なモータリゼーションが育たない。

となれば、内燃機関のCN化も極めて重要。CNとは温室効果ガスの収支を全体としてプラスマイナスゼロにすることであり、出したCO₂ と同じ量を吸収や除去することで達成できる。とすれば、排出するCO₂ が少なければ、取り返す量が少なくて済むことになる。

では、どうやってCO₂ 排出量を減らすか? そこでスズキは「使うエネルギーを極少化」するために、「小・少・軽・短・美」を進める。オイルショックの当時を覚えている方ならご存知の通り、小さく軽いクルマはエネルギー消費が少ない。それは走行中だけではなく、生産や廃棄においても同じである。

たとえばインドにおける自動車業界全体の車両重量平均値は1133kg。スズキはどうかと言えばこれが驚くべきことに941kgしかない。差分の192kgの原材料もタダではないし、加工にもコストは掛かっている。当然部品の輸送も廃棄も量が多い分コスト高であり、同時にCO₂ 排出量が増える。

スズキの試算によれば、車両重量を200kg低減すると、製造時のエネルギーをマイナス20%、走行時にはマイナス6%の削減効果がある。登録車もそうだが、軽自動車も衝突基準を始め、ADASなどの安全装備の引き上げや義務化が年々厳格化されており、それらが車両重量の増加を招いてきた。スズキは8代目アルトで100kgの軽量化を実現。わずか620kgという車重に筆者は大いに驚かされた。しかし現行の9代目でまたもや厳しくなった規制対応で60kgの車両重量増加を余儀なくされてしまった。スズキはあらためて、ここから「安全性能を向上させながら軽量化」を進める。目標は600kg切りにあるらしい。

この基本方針は内燃機関だけでなく、BEVでも同じである。「小・少・軽・短・美」が意味するのは、クルマを動かすために必要なエネルギーが小さいことだ。それは必要とする電池や、燃料をセーブできることになる。電池が小さければ、充電に必要なエネルギーも減る。モーターもエンジン排気量も小さく、モーターや排気量が小さければ使う材料も少なく、小さければ製造エネルギーも少なく、軽いものであれば衝突エネルギーも少なく、リサイクルの負担も小さく、コストも資源リスクも少なく、更に軽いクルマは道路や埋設された水道管やガス管などへのダメージも小さくでき、インフラ整備のためのエネルギーも少なくなる。「軽い」という物理法則に従順に従うことは、より理想に近い社会を構築するための近道であり、原則でもある。

また昨今注目のSDV(Software Defined Vehicle)についても、流行を掴むための無用な多機能化の方向ではなく、必要な機能を必要なだけ搭載するという意味で、SDVライトの「ライト」はLightであることは当然としてRightでもあるべきだとスズキは主張するのである。

そのためにスズキは5つの戦略目標を立てた。

軽くて安全な車体バッテリーリーンなBEV /HEV効率良いICE /CNF技術SDVライトリサイクルしやすい易分解設計 さて、スズキが主張する「小・少・軽・短・美」は、文句の付けようがない正論であり、不変の物理法則に則ったエンジニアリングである。こんなに明瞭でためらいも迷いもない技術戦略を筆者は初めて聞いた。スズキの未来に注目である。

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みんなのコメント

2件
  • pik********
    これでJDパワーNo1の実績は凄いよな。電動化も常に現実路線でブレがない。
  • ist********
    筆者は何を見ているのか?インド市場だと2020年のシェアは49%。2023年のシェアは42%。インド市場全体は2020年280万台。2023年は420万台。150%増加。マルチスズキは2020年130万台。2023年180万台。138%増加。市場全体に対して苦戦だと考える。タタモータスの強みは電池は内製(自社製)。
    BEV PHEVは急速には拡大しないだろうが、スズキのBEVの電池はBYD製。経営方針は将来的には内製(自社製)と発表してるが、ではいつ内製に切り替えのかは不透明。一方で三菱自動車のミニキャブEVのインドネシアKD生産車はインドネシア国営の郵便関係の会社と提携済み。となれば、インドも同様に郵便関係の会社は実績のあるタタと契約すると容易に想定できる。またスズキの2輪関係も電動スクーターの電池はどこのメーカー?スズキは自動車以外に2輪 マリン部門あり。

※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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