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ミドシップ化の叶わなかった4代目 シボレー・コルベット C4 ZR-1 アメリカン・スポーツの代名詞(2)

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ミドシップ化の叶わなかった4代目 シボレー・コルベット C4 ZR-1 アメリカン・スポーツの代名詞(2)

ミドシップ化が叶わなかったコルベット C4(1983~1996年)

3代目シボレー・コルベット、C3の頂点といえたスティングレイLT-1から、4代目C4のZR-1が登場するまで、約20年の準備期間が必要だった。アメリカン・スポーツカー苦悩の時間は長かった。

【画像】アメリカン・スポーツの代名詞 シボレー・コルベット コークボトルラインのC3からミドシップのC8まで 全124枚

C3からC4への進化ぶりは目覚ましい。それでも、高水準なスポーツカーとして4代目を認識させたのは、トップグレードのZR-1だったといえるだろう。

コルベットは世代を重ねる毎に走りを磨いてきたが、C4は動力性能だけでなく操縦性にも強く焦点が向けられていた。欧州のスポーツカーと互角に渡り合えるモデルを生み出すべく、大幅な再設計が施されている。

シボレーの技術者だったゾーラ・アーカス・ダントフ氏は、C3を5年程でモデルチェンジし、ミドシップ・レイアウトへの方向転換を考えていた。フォードのディーラーに並んだ、デ・トマソ・パンテーラに対峙するモデルの開発を望んでいたという。

しかし、プロトタイプの製作まで進められたものの、量産には至らなかった。彼自身も、1975年に引退。C3は1982年まで生産が続けられた。

1977年に、フロントエンジンで次世代の開発がスタート。1982年の発売を目指したが完成は遅れ、生産拠点もケンタッキー州ボーリンググリーン工場へ移され、結果的に1984年へずれ込んだ。

正式には、モデルイヤーとして1983年式は存在しない。だが、生産はその11月に始まっている。燃料インジェクション化されたV8エンジンや、アルミ製デフハウジング、複合素材の板バネなどは、C3の最終仕様から受け継がれたものといえた。

操縦系から受ける印象は明らかに現代的

シャシーは一新。C3でもボディとの一体化が進められてはいたが、基本的にはスチール製フレームを持つセパレート構造といえた。だがC4では、ゼネラルモーターズ(GM)が「ユニフレーム」と呼ぶ、新しい構造が導入されている。

キャビン部分のボディシェルが主要な構造体となり、シャシーレールが組み付けられた。これによりボディ剛性が大幅に向上し、走りの洗練性も飛躍的に改善したが、サイドシルは太くなった。

今回ご紹介するZR-1でも同様。全高は歴代のコルベットで最も低く、乗降性は恐らく一番悪いだろう。数少ない弱点の1つといえるが、ボディのガッシリ感は間違いなく高い。

ブレーキやステアリング、クラッチ、シフトレバーなど、操縦系から受ける印象は明らかに現代的になっている。同時期の欧州製ライバルと比べると、全体的に重めなことは否めないものの、スポーティでまとまりがいい。

ステアリングラックはラック&ピニオン式で、先代より遊びが目に見えて小さい。ステアリングホイール自体も小径になり、シャシーと格闘するような必死さは薄まっている。

そんな洗練されたシャシーとは対象的に、当初のV8エンジンはC3の印象と重なった。最高出力208psのスモールブロック、L83ユニットが継投されていたのだ。

1985年にアップデートを受け、ポート噴射化されたL98ユニットでは233psまで上昇。とはいえ、パワフルとは呼びにくかった。更なる速さを求めるドライバーは、キャラウェイ社のターボチャージャー・キットを選ぶことになった。

ロータスが開発したLT-5ユニット

1990年に、待望の高性能仕様となるZR-1が登場。ターボ化も検討されていたものの、マルチバルブ・クワッドカムの自然吸気が最善と判断された。当時のGMには、開発能力が備わっていなかったのだが。

そこで活用されたのが、同時期に買収していたロータス。既に同社は、ミドシップ・スポーツカーのエスプリ用として、4.0L 32バルブV8エンジンを完成させていた。最高出力は355psに届いていた。

ロータスのマルチバルブ・ヘッドは、そのままではGMのスモールブロックへ載らず、まったく新しいLT-5ユニットを設計。ZR-1のフロントに積まれた。

シャシー・チューニングにも、同社は協力した。C4に設定されていたハンドリングパッケージ、Z51へ手を加え、しなやかなサスペンション・スプリングとアンチロールバーを採用。ロータスらしい足回りに仕上げた。

このLT-5ユニットは、オールアルミ製で軽量。片バンクに2本のカムが組まれ、32バルブで、圧縮比は11:1と高かった。現在のC8を含めても、コルベットで最も高度なメカニズムを採用したパワートレインであることは間違いないだろう。

ちなみに、LT-5の製造を請け負ったのは、船舶用船外機を得意とするマーキュリー・マリン社だった。

ザ・キング・オブ・ザ・ヒル

ZR-1のドライバーズシートへ腰を掛け、ダッシュボード上のキーを回すと、特別なV8エンジンが載っているのを実感する。従来のスモールブロックより、高回転域まで意欲的に吹け上がる。パワーバンドの頂上目掛け、滑らかに加速していく。

どのギアを選んでいても速い。速度域を問わず、加速力には大きな余裕がある。

ZR-1のコーナリングは、通常のC4と明確な違いはないだろう。だが、パワーアップに合わせてリアタイヤも広げられ、グリップ力が増している。勇ましいエグゾーストノートが気持ちを高ぶらせる。

サスペンションの塩梅は、さすがロータス。通常のC4はソフト過ぎ、Z51仕様ではハード過ぎた。その中間の絶妙なバランスにある。

C4のスイートスポットといえるZR-1は、約5年間に6939台しか販売されなかった。価格はベーシックなコルベットの約2倍と高く、1992年には最高出力がZR-1以外でも300psへ上昇し、訴求力が弱まったためだろう。

シボレー自ら「ザ・キング・オブ・ザ・ヒル」と呼んだC4のZR-1は、コルベットの理想像を体現していた。安っぽいインテリアなど荒削りな部分も含まれていたとはいえ、シリアスなパワーとハンドリングで、欧州のライバルへ対抗できる内容にあった。

その立役者といえたのが、クワッドカムのV8エンジン、LT-5ユニットだ。ひいては、英国のロータスだったといえる。

シボレー・コルベット C4 ZR-1(1990~1995年/北米仕様)のスペック

北米価格:5万8995ドル(新車時)
生産数:6939台(ZR-1のみ)
全長:4506mm
全幅:1859mm
全高:1189mm
最高速度:281km/h
0-97km/h加速:4.9秒
燃費:7.8km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1572kg
パワートレイン:V型8気筒5727cc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:380ps/6200rpm
最大トルク:51.0kg-m/4500rpm
トランスミッション:6速マニュアル(後輪駆動)

この続きは、シボレー・コルベット アメリカン・スポーツの代名詞(3)にて。

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みんなのコメント

2件
  • やっぱ所持するハードルを考えてもC4が欲しい
    (買えないけど)
    前期型は前モデルを意識するけど後期だと
    新しい時代に突入感が感じられる見た目
  • C4のZR-1はコンソールにパワー切り替えのキーロックが有るんだよね
    昔営業に聞いたら人に貸すときはローパワーにするんだとか
    言ってた
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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