■米国でのクラウン 販売実績はどう?
2022年7月15日、トヨタは国内で販売する新型「クラウン」(16代目)を世界初公開しました。
時を同じくして、北米トヨタも2022年7月、テキサス州プレイノ本社内で報道陣向けに新型クラウンの発表会を実施。クラウンがアメリカで50年ぶりに復活しました。
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アメリカでクラウンが発表された際、筆者(桃田健史)がちょっと気になったのは、「セダン」という表現です。
セダンといっても、その場にあったのは、日本での「クロスオーバー」と同じモデル。新型クラウンでは、従来の「セダン」に加え、「クロスオーバー」、「スポーツ」、「エステート」という4つのモデルバリエーションがあるのが特徴ですが、アメリカでは、日本で販売中のクロスオーバーに対して「セダン」という表現を使っているのです。
見方を変えると、アメリカにおけるセダンというカテゴリーがとても間口が広いということになるでしょう。
では、クラウンを取り巻く、トヨタ・レクサスの各モデルの販売数はどうでしょうか。
2023年3月の単月を見ると、トヨタのセダンやクーペでは、「カムリ」が2万5010台、「カローラ」が1万3528台、「プリウス」が2236台、「GR86」が1005台、「スープラ」が247台、「MIRAI」が208台となっています。
レクサスでは、「ES」が3768台、「IS」が2032台、「LS」が234台、「LC」が167台、「RC」が132台でした。
また、トヨタのSUVでは、「RAV4」が3万1258台、「ハイランダー」が2万2259台、「フォーランナー」が7487台、「カローラクロス」が5995台、そして「ヴェンザ(日本名:ハリアー)」が2159台。
レクサスのSUVでは、「RX」が9344台、「NX」が5801台、「GX」が2472台、「UX」が1250台、そして「LX」が972台という販売実績となっています。
そんななかクラウンの販売台数は1335台でした。クラウンはまだまだ販売の立ち上がり期ですので、今後まだ販売台数が増えていく可能性は十分あると思います。
とはいえ、アメリカ市場でのトヨタ・レクサスの各モデル販売実績を見る限り、クラウンという商品の立ち位置は、ある程度決まってきているようにも思えます。
■クラウンがアメリカ市場に投入されたふたつの背景とは?
トヨタ・レクサスのセダンとSUVの販売実績から分かるように、クラウン登場の背景には「SUVシフト」と「カムリの上のセダン」というふたつの側面があります。
まずは、SUVシフトについてですが、アメリカ市場では1980年代頃からC/Dセグメントが市場の中心となってきました。
C/Dとは、CセグメントとDセグメントをまとめた表現です。Cセグメントは、日本車ではカローラやホンダ「シビック」、欧州ではVW「ゴルフ」といった、グローバルにおけるコンパクトカーを指します。日本でコンパクトカーと呼ぶカテゴリーは、グローバルではBセグメントに相当します。
そして、Dセグメントは、Cセグメントより少しサイズが大きいカテゴリーで、カムリやホンダ「アコード」が該当します。
そうした、C/Dセグメントはセダンを意味し、その派生車として、いわゆるステーションワゴンがあり、1980年代にはフォード「トーラス」などが人気となった経緯があります。
1990年代になると、C/Dセグメントのほとんどがセダンになっていった一方で、1990年代中盤から後半にかけて、アメ車のフルサイズSUVが流行し、その流れがダウンサイジングしてミドルサイズSUV市場が2000年代以降に拡大していきます。
結果的に、2000年代は、C/DセグメントセダンとSUVが両立していた時期だと言えるでしょう。そうしたなかで、C/DセグメントセダンとSUVを融合する、いわゆるクロスオーバーというカテゴリーが、プレミアムブランドを中心に広がっていきます。
時代が進み、2010年代になると、今後はミドルサイズSUVからのダウンサイジングによって、今度はコンパクトSUVの需要が高まります。
コンパクトSUVといっても、これはCセグメントセダンと同格のSUVという意味なので、RAV4やホンダ「CR-V」が相当します。
こうしたコンパクトSUVシフトによって、相対的にC/Dセグメントセダン市場が縮小する傾向が強まっているのが実状です。
このような市場変化のなかで、アメリカのトヨタ販売店からは、SUVモデルのさらなる拡充を求める声が上がり、それに対応するのは「カローラクロス」です。アメリカのユーザーは、トヨタのコンパクトSUVの選択肢が増えたことを歓迎しています。
そして、セダンラインナップについても、実質的なカムリ上級モデルであった「アバロン」が2022年末に生産終了となり、カムリとの明確な差を感じることができる、「トヨタブランド最上級モデルが欲しい」という声が、販売店とユーザーから強まったと言えるでしょう。
アメリカのユーザーも、クラウンを取り巻く「SUVシフト」と「カムリの上のセダン」といいうふたつの側面を十分に理解した上で、クラウンを購入していることが、同国の各種メディアやSNSを通じて分かります。
そのなかには、「ジャパニーズカーのヘリテイジを感じるクルマ」といった表現も見受けられます。
クラウンは1955年に日本で誕生し、アメリカ市場では1950年代後半から1970年代前半まで販売されていた歴史があります。
そうしたトヨタ乗用車の創世記から成長初期のクラウンをリアルタイムで知るアメリカ人は今となっては少ないのですが、日本市場で熟成され、そして新型モデルで大きな変化を遂げたクラウンに対して、「これまでになかった日本車の味」を求めるアメリカ人ユーザーが今後も着実に増えていくことでしょう。
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