激減した4シーターのコンバーチブル
21世紀が始まった頃は、プジョーやフォード、日産にもオープンカーが存在した。普段使い前提のハッチバックでも、ソフトトップを背負った仕様を選択できた。4シーターのコンバーチブルがここまで激減するなど、当時は想像もしていなかった。
【画像】爽快オープンロード・クルーザー! M440i コンバーチブル まだ選べるBMWのオープンカーたち 全100枚
2024年の今、折り畳めるルーフを備えるモデルは、高級なスポーツカーやスーパーカーへほぼ限られている。プジョー208にコンバーチブルはないし、アウディA5 カブリオレやTTも生産は終わってしまった。
フォルクスワーゲンTロック・カブリオレも、数か月以内に廃盤になるらしい。一時的にラインナップから落ちている、ミニ・コンバーチブルの復活が待ち遠しい。
現在のグレートブリテン島では、7万ポンド(約1344万円)まで予算を増やしても、4名分のシートが載ったオープンカーは3種類だけ。フォード・マスタングとメルセデス・ベンツCLE、そして、今回試乗したBMW 4シリーズだ。
そんな4シリーズも、以前から選択肢は狭まっている。ディーゼルターボは消滅し、186psを発揮する後輪駆動の420iと、374psもある四輪駆動のM440iという2択。少なくとも、クーペとグランクーペというボディスタイルは、ラインナップされているが。
ワイドなモニターパネルにスポーツシート
4シリーズはフェイスリフトを受け、話題を集めたキドニーグリルの処理も、若干熟成度を増したように見える。時間の経過が手伝って、スポーティでエネルギッシュな雰囲気を放っているように思う。トリム類がマットクロームなことも、影響しているはず。
LEDヘッドライトは、限定生産されたM4 CSLと同じデザインになった。テールライトは、光ファイバーを用いてシャープに灯る新アイテム。例によって、ボディ塗装に新色が追加され、ホイールのデザインも新しくなっている。
オプションで、マトリックスLEDヘッドライトも装備可能。以前のBMWがバッテリーEVへ採用していたように、クラスター内部がブルーに染められる。最近は、方針が変わったようだ。
車内のアップデートは、スタイリング以上に大きい。スポーツシートが標準装備になり、ステアリングホイールは下部がフラットな形状に。エアコンの送風口も新しくなり、ノブで風向きを調整できる。
ダッシュボード上には、2面のモニターが一体になったワイドなパネルが載る。インフォテインメント・システムは、最新のiドライブ。グラフィックは美しく、反応は素早い。ただし、ホーム画面には小さなアイコンがぎっしり並び、運転中は扱いにくい。
エアコンやベンチレーションの操作も、このタッチモニターへ集約されている。ロータリーコントローラーは従来どおり用意され、サブメニューを掘り下げることなく、各機能へアクセスはできるが。右側には、固定表示のメニューも追加された。
快適で気軽なオープンロード・クルーザー
英国仕様のカーナビには、拡張現実機能をオプションで追加可能。モニターに映される実際の映像へ、走行ルートや駐車場の案内が重なるように描かれる。グーグル・マップの愛用者には、恩恵がないけれど。
大小様々な改良が施された4シリーズ・コンバーチブルだが、M440iの素晴らしい印象は本質的に変わらない。快適で気軽にルーフを開ける、オープンロード・クルーザーだといえる。
圧倒されるほどパワフルなM4 コンバーチブルも、実用性が高く運転は楽しい。とはいえ、M440i コンバーチブルも負けないほど楽しい。むしろ、安全性と運転免許を脅かす可能性は、こちらの方が低いといえる。
ZF社製の8速ATは、ドライバーと息を合わせるように鋭く変速。聴き応えたっぷりのサウンドが、ドライバーを適度に刺激する。ボリュームはうるさいほどではなく、アクセルペダルの扱い方次第で、アフターファイヤーの破裂音も入り交じる。
カーブが連続する区間を攻め出すと、限界の9割くらいの辺りから、クーペには届かないボディ剛性だということが見え始める。旋回中の路面に鋭い隆起部分などがあると、1965kgもある車重を実感させられる。
それでも、Mスポーツ・ディファレンシャルは標準装備され、操縦性は基本的に優秀。オプションとなるアダプティブダンパーを組めば、シャシーの潜在能力を引き上げることも可能だ。
420iとM4のギャップを巧みに埋める優等生
同時に、420iとM4とのギャップを巧みに埋めるチューニングにある。長距離ドライブとの相性を求め、落ち着いた乗り心地や扱いやすさは犠牲になっていない。
アスファルトの補修跡が多い市街地では充分快適で、高速道路での巡航時も車内は静か。若干、閉めたソフトトップからノイズが聞こえてくるけれど。
リアシートには、長時間は断られるかもしれないが、平均的な大人なら2名が座れる。荷室には、家族で1週間分の荷物を収容できる。
試乗車は、オプションの19インチ・アルミホイールを履いていたが、4シリーズの場合20インチの設定はなし。充分なサイドウォールがあり、舗装の剥がれた穴も丸くカバー。縁石でのガリキズも、そこまで心配する必要はない。
M440i コンバーチブルの英国価格は、6万7400ポンド(約1294万円)から。安いとは決していえないが、メルセデス・ベンツCLEより約3000ポンド(約58万円)もお手頃。M4 コンバーチブルは、ほぼ9万ポンド(約1728万円)する。
もっと身近な価格帯に、4シーターのオープンカーがあればと思わずにはいられないが、現状ではM440i コンバーチブルが高すぎるとはいえないだろう。限られた選択肢の中とはいえ、秀逸な仕上がりなことは間違いない。
◯:6気筒エンジンと8速ATのレスポンスと扱いやすさ 魅力的な操縦性を維持した四輪駆動のシャシー
△:先代の方が見た目は優雅だったと筆者は思う 快適な乗り心地を保つなら、オプションのアダプティブダンパーが必要
BMW M440i xドライブ・コンバーチブル(英国仕様)のスペック
英国価格:7万7165ポンド(約1482万円/試乗車)
全長:4775mm
全幅:1850mm
全高:1395mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.9秒
燃費:12.2km/L
CO2排出量:198g/km
車両重量:1965kg
パワートレイン:直列6気筒2998cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:374ps/5500-6500rpm
最大トルク:50.9kg-m/1900-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動)
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