この記事をまとめると
■トヨタは欧州で商用車のプロエースシリーズをラインアップしている
■トヨタ・プロエースはPSAグループ/ステランティスグループの車両をベースとしている
■プロエースは欧州向けであり、いまのところ日本での販売計画はない
なんだかお洒落に見えるトヨタの商用車「プロエース」
日本でトヨタの商用車といえば、「ハイエース」と「タウンエース」を思い浮かべる人が少なくないだろう。それが欧州になると、「プロエース」シリーズがラインアップされている。
ボディサイズがさまざまあるが、ひとつのモデルをベースに変形したのではなく、他メーカーとの協業によって違うベース車が存在する。
時代を少し遡ってみると、プロエースは2013年、当時のフランスPSA(プジョーシトロエン)とトヨタの協業によって誕生した。
なぜ、トヨタとPSA(当時)だったのか? じつはその10年ほど前、トヨタは欧州市場において、小型乗用車の共同開発・生産を始めていた。2005年3月のスイス・ジュネーブショーでワールドプレミアされた、トヨタ「アイゴ」、プジョー「107」、そしてシトロエン「C1」である。
筆者は当時、チェコ国内の新設されたトヨタPSA共同工場である、TPCA(トヨタ・プジョー・シトロエン・オートモビル・チェコ)を単独取材し、製品企画・設計・部品調達・製造・車両供給といった一連の流れについて現地で詳しく取材した経験がある。
トヨタとしては、欧州内での部品調達と完成車の物流を効率化することで、小型車のコストパフォーマンスを上げることを目指した。また、当時のトヨタは欧州市場でのシェア拡大を多様な観点から模索していた時期でもあった。その一環として、PSAとの協業を選択したのだ。そうした2社の関係が欧州ではLCV(ライト・コマーシャル・ヴィークル:小型商用車)の分野にも及ぶことは、2社にとって当然の流れだったと言えるだろう。
ステランティスになったことでトヨタ印の「デュカト」も登場
こうして誕生した初代プロエースは、小型同様にPSAとの実質的な兄弟車となった。
2016年からは第二世代もPSAの車体を活用することになったが、大きな特徴は商用車と乗用車の2タイプがラインアップしたことにある。
乗用車は「プロエース ヴァーソ」。商用車を乗用車のように使用するトレンドが欧州で確実に広がってきたという市場変化をとらえての製品企画である。
さらに、2023年11月に「プロエース マックス」が登場した。同車のベースは、ステランティスのフィアット「デュカト」である。旧PSAは現在、ステランティスとなった。デュカトといえば、日本でもキャンピングカー等のレジャー目的のベース車両という輸入車としては異例のラインアップが話題とあり、販売が好調な商用モデルである。
また、プロエース マックスにはBEVバージョンも設定。欧州域内では2035年に乗用車と小型商用車のZEV化(BEVまたはFCV「燃料電池車」)が義務化される。欧州連合として推進する欧州グリーンディール政策の一環だ。ただし、ドイツなどの要請によって、合成燃料などを利用した内燃機関の利用についても認める方向になりそうだ。
いずれにしても、欧州内での商用車市場でも電動化の動きは活発化しており、先に紹介したプロエースにもBEV設定したのに続き、プロエース マックスBEVを準備するのは、トヨタとして当然の判断だと言えるだろう。
日本国内向けのトヨタ商用BEVについては、東南アジア等で販売されている、いわゆるグローバルハイエースをベースとしたBEVの導入が検討されている。国内でハイエース製造を担当しているトヨタ車体が、ジャパンモビリティショー2023で参考出品している。
プロエースについては欧州向けであり、日本での販売計画はいまのところないようだ。
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