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タイヤの仕事 ニュルブルクリンク24時間レースの儚い活躍を追う ファルケン・ポルシェ

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タイヤの仕事 ニュルブルクリンク24時間レースの儚い活躍を追う ファルケン・ポルシェ

儚いタイヤの活躍

タイヤは、何万kmという距離を転がりながら、短くも輝かしい人生を歩むものである。そして、耐久レースで活躍するレーシングカーに焼き尽くされ、若くして人生を終えるタイヤもある。

【画像】日本製レーシングタイヤの闘い【ファルケン・モータースポーツのポルシェ911 GT3 Rを写真で見る】 全14枚

ニュルブルクリンク24時間レースでは、レギュレーションにより全車両が同じタイヤで走ることが義務づけられている一般的なGT3レースとは異なり、複数のタイヤサプライヤーを使用することができる。

ファルケンのGT3向けレースタイヤはすべて日本製だが、ここドイツで、しかも自社レースチームのポルシェ911 GT3 Rとの組み合わせだけで戦っている。

タイヤのサイドウォールにはバーコードが貼られている。これはレース主催者がタイヤを確認したり、ファルケンが在庫を管理したりするためのものである。便利なことに、このバーコードによって、ソフトコンパウンドのスリックタイヤがどのような人生を歩むかがわかるのだ。

速すぎるクルーの動き

予選後、レースが始まる前に、選んだタイヤの準備運動が始まる。天候はドライで、夜には気温が下がり、スティッキーなスリックタイヤを履くには絶好のコンディションとなる。タイヤはファルケンの仮設ステーションでホイールと組み合わされ、アスリートのようにヒートジャケットに包まれて暖を取る。

レース開始から約6時間が経過した午後9時45分、ソフトスリックタイヤへの交換が告げられ、ピットガレージは一気に活気づく。タイヤは3本の仲間とともに、暖かい繭から取り出され、台車に積まれる。

工具、消火器、シグナルボード、圧縮空気のボトルなどがピットレーンに運び込まれる。ガレージの奥から、開け放たれたドアに向かってホイールの束が運ばれてくる。メカニックはピットレーンの手前で、半ばドリフトするようにして停止、待機する。フロントとリア、2人のメカニックがそれぞれ片手でホイールのスポークをつかむ。

スピーディで爽快な動きだが、あまりにも速すぎる。マシンが到着する前に、チームは十分な準備を整えた。静かに待機し、911が現れたら直ちに飛びかかろうと構えている。

トランスミッションの音、甲高いブレーキ、そして33号車がピットボックスに入った瞬間、エネルギーがほとばしる。

ピットクルーが飛び出し、メカニックが2本のタイヤを胸の高さまで持ち上げて、911の周囲を走り回る。

ヒュイーン、ヒュイーン、ガチャンと音を立ててポルシェの四隅が持ち上げられ、燃料ホースがノーズに刺され、古いホイールとタイヤがハブから引き抜かれる。新しいリムが取り付けられ、しっとりした暖かい新品ラバーがピットボックスの冷たいベージュ色のコンクリートの上に下ろされる。

使用後も大切な役割

再び嵐が静まり、燃料が満タンになるのを待つ。誰も動かない。

そして約3分後、燃料ホースを抜き、シグナルボードを上げ、エンジンをかけると、タイヤが音を立てながら、計算されたホイールスピンで911を前に押し出す。

この後8周、70分ほどの間はただ転がり続けるだけで、何も起こらないよう誰もが願っている。ピットインの瞬間はタイヤの最大の見せ場のようにも思えるが、彼らの仕事はまだ始まったばかりである。

558psのパワーをアスファルトに伝え、1220kgの911を支え、1.6Gの横荷重を受けながら約200km、600以上ものコーナーを走り続けるのだ。

午後11時前、幸いにも何事もなくセッションは終了し、再びピットレーンに嵐がやってくる。4本の使用済みタイヤが無造作にガレージに運び込まれていく。

ここで、温度計や圧力計を手にした新しいチームがタイヤに飛びつく。ファルケンのタイヤエンジニアたちだ。日本から4名、ドイツから1名。彼らは、タイヤの内側、中央、外側の3か所で表面温度を測定する。走行中もモニタニングされているとはいえ、空気圧を測定し、徹底的なチェックを行う。

1時間以上グリーンヘルを走り回ったにもかかわらず、タイヤはまだ立派に残っている。サイドウォールは汚れているし、識別バーコードもはっきりしないが、表面はボロボロではなく、少し荒れている程度だ。素人目には、もうひとっ走りいけるんじゃないかと思えるほど。しかし、エンジニアの判断でリムから外され、二度と使われることはない。

しかし、このタイヤにはまだ1つだけ、やるべきことがある。それは、断面をスライスし、内部の有用な部分やダメージなどを検査すること。このゴムの切れ端は日本に送られ、分析され、将来のタイヤの改良に役立てられる。怒涛のように速く、短い人生ではあるが、タイヤの痕跡は永遠に残るのである。

レースで培った技術を一般道へ

モータースポーツがマーケティングツールとして重宝される昨今だが、競技用技術が市販モデルに転用されることもある。

ファルケンは、ニュルブルクリンク24時間レースを新たなイノベーションを試す環境として活用してきた。その1つが、アラミド強化構造である。アラミドは、ヘルメットやボディーアーマーによく使われる、強くて軽い合成繊維素材だ。代表的なものに「ケブラー」がある。

アラミド繊維をレースタイヤに使用し、世界で最も過酷なサーキットでレーシングカーの圧力に耐えられることを証明したファルケンは、この素材を新しい超高性能タイヤ、「アゼニスFK520」に導入した。

アラミドで強化された新構造により、タイヤの重量を10%削減すると同時に、強度を高めることに成功。性能とフィードバックが向上しただけでなく、燃費も改善されたようだ。モータースポーツ向きではないが、それでも非常に喜ばしいことだ。

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