トヨタ シエンタハイブリッド 「ファンカーゴに由来する最高の使い勝手」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

西村 直人
西村 直人(著者の記事一覧
交通コメンテーター
評価

4

デザイン
5
走行性能
3
乗り心地
3
積載性
5
燃費
3
価格
3

ファンカーゴに由来する最高の使い勝手

2022.6.24

年式
2015年7月〜モデル
総評
小型ミニバンのお手本。2列車、3列車を用意することで幅広いユーザーに迎え入れられた。ただ、登場から7年経過すると競合各車の性能が格段に上がっている。シエンタそのものの魅力は色褪せないが、搭載される技術、とりわけ先進安全技術の分野では周回遅れ感が否めない。一定の役割を終えたとして新型へのバトンタッチが望まれるが、現行モデルは間違いなく名車である。
満足している点
売れ続けている理由の一つはデザインにある。ファミリーカーでコンパクトクラスとなると、いわゆる立派感のある大きなグリルやシャープなヘッドライトより、どこかほんわかしたムードが好まれる。2列車は車両後半部をまるまる収納スペースとして使える利便性がある。これはMTBも楽に収納できる室内高があるから、若者にも人気だ。飛び道具は少ないが、道具としての完成度は高い。
不満な点
このクラスをファミリーユースする場合、コンパクトで取り回しが良い(最小回転半径5.2m)ことから、走行回数や距離が増える。多人数乗車でもある。その意味で、万が一の際の先進安全技術は高度なものを採り入れたい。登場年からすれば現在の先進安全技術システムが電子プラットフォームの上から技術限界なのだろう。新型はおそらく現行ヤリスと同水準になると思われる。
デザイン

5

3列シートのコンパクトミニバン。外観からは窮屈な3列車に思えるものの、じつは空間の演出が見事。スライドドアながら巧みにレール部分をアクセントラインに合わせることですっきりとしたデザインを表現した。世代的には1世代前のデザインテイストだが、ミニバンのようにファミリーで使うクルマにはどこか愛くるしい、動物的な要素が必要。丸7年が経過した今も、存在感にあふれている。
走行性能

3

直列4気筒1.5Lガソリンと同ハイブリッドを搭載。ガソリンには4WDモデルもラインアップした。3列シート車、2列シート車があるが、4WDは2列車のみの設定。車両重量が最軽量グレードでも1320kgと少々重め。よってガソリンモデルの場合、定員乗車での高速道路や登坂路はつらい。ハイブリッドは事実上、2世代前のセットアップながら走りは十分。
乗り心地

3

パワートレーンで大きく異なる。余裕を求めるのならばハイブリッドと述べたが、じつは乗り心地は圧倒的にガソリンが有利だ。TNGAが採り入れられる前世代のプラットフォームで構成されているため、後軸からの突き上げが大きめ。大きな凹みだと激しく振動する。とくに3列車の場合、それが顕著だった。ガソリンモデルは4WD含めて終始滑らかな乗り味だ。
積載性

5

すばらしい積載能力。ファンカーゴのように2列目シートの収納はできないが3列車は前倒しすれば荷室長は1430mm。2列車はさらに長く2065mm。しかも床面がフラット(部分的な隙間あり)だからマットを敷くだけで車中泊が可能。室内高は1280mmあるので車内での移動も楽に行える。各部の小物入れは、車体デザインと同じく丸みを持たせつつ、深さがたっぷりあり実用的だ。
燃費

3

ガソリンの実用燃費数値はWLTC値の80%程度だった。FFで14km/L、4WDで11.km/L程度。ハイブリッドは70%だったのでおおよそ、16km/L程度だ。燃費数値だけで見ればもっと良いモデルもあるが、シエンタならではのデザインとガソリンモデルのしっとりとした乗り味は未だに魅力。5ナンバーだが背高ボディ(1675mm〜)で前面投影面積がやや大きく高速燃費も伸びない。
価格

3

2列車が1,818,500円、3列車が1,859,200円〜と割安感はある。先進安全技術もグレードアップを続け、衝突被害軽減ブレーキは歩行者(昼)にも対応する。とはいえセンサーは赤外線 単眼カメラ式。よって、ACCなど今やこのクラスに用意されている運転支援技術は搭載されない。家族でロングドライブを楽しむのならば、新型を待ってみるのも選択肢だ。
西村 直人
西村 直人
交通コメンテーター
WRカーやF1、MotoGPマシンのサーキット走行をこなし、4&2輪のアマチュアレースにも参戦。物流や環境に関する取材を多数。大型商用車の開発業務も担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。自動運転技術の研修会(公的/教育/民間)における講師を継続。警視庁の安全運転管理者法定講習における講師。近著は「2020年、人工知能は車を運転するのか」(インプレス刊)。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
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