BYD ATTO3 「初めてのBEVとして満足度の高い一台」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

西村 直人
西村 直人(著者の記事一覧
交通コメンテーター
評価

3

デザイン
3
走行性能
3
乗り心地
4
積載性
4
燃費
4
価格
4

初めてのBEVとして満足度の高い一台

2024.8.27

年式
2023年1月〜モデル
総評
日本、ドイツ、イタリアの合作ともいえる技術が組み込まれた中国製のBEVだ。ボディサイズでは車幅が1875mmとやや広いため、駐車場環境では気を使う部分があるかもしれないが、最小回転半径は5.3mと小さく、取り回しそのものは良好な部類。バッテリー性能にも優れていて実用的な電費数値も6〜7km/kWh台と優秀。2024年は補助金の見直しを受けたが十分にリーズナブル。
満足している点
BEVらしくないところだ。こう書くと性能が良くないのかと思われるが、むしろ逆。内燃機関のクルマと同じように運転できて、アクセル&ブレーキも慣れ親しんだ操作で対応できる。気負わずに乗ることができる、という意味でBEVらしくない。BEVといえば速さをウリにするモデルが未だに多いが、そういった意味でATTO3には飛び道具が少ないが、毎日の移動にちょうどよい走行性能が心地良い。
不満な点
クルマの性能というよりもブランドイメージが未だ定着していないことろだ。ただ、2024年になって有名女優をCMに起用したことで女性ユーザーが増えてきたと同時に、ブランドイメージも向上してきているという。また、これもクルマ単体の話ではないが、実店舗が数少ないところも弱点だ。この先、店舗数を増やすとしているが、現時点では十分ではなく、不安を感じる潜在的ユーザーも多いと聞く。
デザイン

3

2024年に販売されるモデルは初期モデルと同じだ。好き嫌いの分かれにくいSUVボディながら、シルエットとしては平凡。選択できるボディカラーが増えているものの、個性的なデザインではない。一方、インテリアでは遊び心が多く採り入れられた。回転式の大型液晶モニターは単なるギミックとしてだけでなく、ナビ画面など必要に応じて縦方向にすることで見やすさが向上する。
走行性能

3

最高出力204PS、最大トルク310N・mを誇る駆動モーターは前輪を駆動する。二次バッテリーはLFPバッテリーと呼ばれる安全性に優れたタイプ。正極にリン酸鉄を使うため発火の危険性は少ないが、エネルギー密度では三元系よりも若干劣る。容量は58.56kWhで充電一回あたりの走行可能距離は470km。回生ブレーキは二段階で選べるが、いずれも強い減速は行わない。
乗り心地

4

ここも導入初期モデルから大きな変更はない。ただ、試乗した2024年モデルは2023年モデルよりも乗り味が進化しており、荒れた路面での収束が早まっている。タイヤの銘柄にも変更がないため、ダンパーの減衰特性に見直しが入った可能性が高い。静粛性能は相変わらず高く、前/後席での会話明瞭度も良好だ。ただ、カーブでのロール量は少し大きく、丁寧な運転操作を求める。
積載性

4

BEV専用のプラットフォームを採用するATTO3は、ラゲッジルームへの張り出しが本当に少ない。大きな荷物だけでなく、横方向も広いからたとえば荷物のサイズを問わず積み込みやすい。リヤシートは一般的な6:4の分割可倒式だが、開口部分に段差があるため重い荷物の出し入れには注意が必要。車内各部の収納スペースもよく考えられている。容量は大きくないが、欲しい場所にある。
燃費

4

駆動モーターの定格出力を65kWに抑えたことで、充電一回あたりの走行可能距離は570km(2023年モデルの標記は585km)とロングレンジを誇る。ちなみに定格出力とは連続して発生する出力のことで、大雑把にいえばこの値が低ければ一定速度で走行する際の電力消費が少ない。ちなみにBYDのコンパクトBEVである「ドルフィン」のベースグレード(35kW)もこの手法だ。
価格

4

補助金と減税により40万円ほどのサポートがあり、さらに自治体によっては同額以上(東京都だと45万円)が上乗せされる。登録時期によって若干異なってくるが、現時点では差し引きすると実質、365万円程度で入手可能だ。たとえばノートオーラの上級グレードにオプション装備を加えるとこの価格帯になるから、BEVとしての買い得感は高い。2024年モデルが狙い目だろう。
西村 直人
西村 直人
交通コメンテーター
WRカーやF1、MotoGPマシンのサーキット走行をこなし、4&2輪のアマチュアレースにも参戦。物流や環境に関する取材を多数。大型商用車の開発業務も担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。自動運転技術の研修会(公的/教育/民間)における講師を継続。警視庁の安全運転管理者法定講習における講師。近著は「2020年、人工知能は車を運転するのか」(インプレス刊)。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
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