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最新AIサスペンションは“魔法の絨毯”か? アウディ A8試乗記

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最新AIサスペンションは“魔法の絨毯”か? アウディ A8試乗記

「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」。アウディのフラッグシップ「A8」には、同社のスローガンを体現するショーケースの役割が求められる。アウディスペースフレーム(ASF)と名付けられたオールアルミボディで世を驚かせた初代が登場してから、ほぼ四半世紀。2017年にデビューした4代目は、ASFをさらに進化させ、アルミ、カーボンファイバー、マグネシウムといった素材を贅沢に用いるボディ構造を採る。機関面ではマイルドハイブリッドシステムを導入し、ダイナミックオールホイールステアリングと呼ぶ四輪操舵にも挑戦している。

【主要諸元(55 TFSI クワトロ)】全長×全幅×全高:5170mm×1945mm×1470mm、ホイールベース3000mm、車両重量2040kg、乗車定員5名、エンジン2994ccV型6気筒DOHCガソリンターボ(340ps/5000~6400rpm、500Nm/1370~4500rpm)、トランスミッション8AT、駆動方式4WD、タイヤサイズ255/45 R19、価格:1172万円(OP含まず)。もっとも衆目を集めたのが、レーダーセンサー、超音波センサー、カメラ、そして量産車初となるレーザースキャナーといった20を超えるデバイスを全身ハリネズミのように装備した点。ドライバーの運転を手助けし、かつ事故を未然に防ぐもしくは被害を低減させるといった先進的な機能を実現させるには、車外の世界の認識が不可欠なのだ。これはまた、自動運転への積極的なアプローチの表れでもある。

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日本でラインナップされるA8は、3.0リッターV型6気筒ターボ(340ps、500Nm)と4.0リッターV型8気筒ターボ(460ps、660Nm)の2種類。後者には、ストレッチトボディのA8Lもある。トランスミッションは8段AT。駆動方式は、もちろんクワトロこと4WDだ。

「美しさとテクノロジーを極めた」と、うたうハイテクサルーンの販売が始まって約1年。昨2019年に実装された最新装備が、「Audi プレディクティブ・アクティブサスペンション」である。今回、3.0リッターV型6気筒を積むA8 55 TFSIクワトロで、同サスペンションを体験した。ただし、足元には通常の「255/45R19」サイズのタイヤではなく、「235/55R18」のスタッドレスタイヤ(Continental VikingContact7)を装着していた。

最新機能はプラス84万円新型アウディA8が備えるハイテクの恩恵は、ドアを開けた瞬間から得られる。

ドアハンドルを引くと、あたかもクルマが目を覚ましたかのようにスッと車高が上がる。エレベーテッドエントリー機能によって車高が上昇、シート位置を5cmほど高くして乗り込みやすくしてくれるのだ。

エレベーテッドエントリー機能によって、ドアを外から開けたとき、車高が自動で瞬時に上昇する。エレベーテッドエントリー機能によって、ドアを外から開けたとき、車高が自動で瞬時に上昇する。ギミックと笑うことなかれ。3ボックスセダンに乗る層には足が弱った高齢者も多い。腰を痛めている人にもありがたかろう。この機能が実用的なのは、車高の上げ下げを一般的な油圧ではなく、各輪に備えた電気モーターを使って行っているからだ。車高調整が素早い。じんわり作用する油圧タイプだと、人は歳を取るとえてしてせっかちになるものだから、とても待っていられまい。

いうまでもなく4個の電気モーターは走行時に活用される。それが新機能のプレディクティブ アクティブサスペンションで、フロントウィンドウ背面のカメラとノーズに装着されたレーザースキャナーが前方路面の起伏を読み取り、サスペンションを瞬時に微調整し、凹凸を補正、可能な限りフラットな乗り心地を提供する。サーチする範囲は前方5~20m、1秒に18回の頻度でコンピューターに情報を送るという。補正度合いは、「強」「弱」「オフ」から選択できる。

プレディクティブ・アクティブサスペンションは、A8 55 TFSIクワトロに標準装備されるアダプティブエアサスペンションに機能を追加するオプション装備である。84万円。素のエアサスペンションは、電子制御ショックアブソーバーと、車両レベル制御システムから構成される。具体的には、Audiドライブセレクトで選ばれた「オート」「エフィシェンシー」「ダイナミック」「ショファー」などのドライブモードに合わせてサスペンションの基本的な特性を設定し、路面状況や速度に合わせて車高と減衰力を変化させる。

これにカメラとレーザースキャナー、電気モーターを用いた電磁制御式ダンピングシステムを組み合わせて、“予言的な”アクティブ・サスペンションとしたわけだ。各輪の車高調整は、モーターから伸びたアクチュエーターでおこなう。左右別個に作用するアンチロールバーのようなものである。たとえ路面の先読み機能をオフにしても、コーナリング時のロールや加減速に伴うスクワットやノーズダイブ、細かい上下動であるピッチングを抑制するアクティブサス本来の機能は残る。

さっそくAudiドライブセレクトをオートからダイナミックモードに変更し、プレディクティブ・アクティブサスペンションを「強」にして荒れ気味の舗装路を走ってみる。なるほど、ダンピングの利いた締まったアシまわりながら滑らかに走る。高級セダンにふさわしい節度あるスポーツ感だ。

同じ区間で先読み機能をオフにすると、「オオッ!」。にわかに路面上の粒々が復活したかのように細かい振動が伝わってくるではありませんか!! 決して不快なレベルではないけれど、相対的に情報のエッジが立った印象だ。

あらためて強力に先読みする設定に戻すと、道路の平滑度が増した感がある。といってもローラーで舗装を均したイメージではない。なぜなら、凹凸の情報はキチンと与えられるから。いうなれば、入力情報の「突き上げ」となる尖った部分がキレイに削がれた感じだ。

ちなみにセンターコンソールの表示画面には、プレディクティブ機能の設定とは別に、同アクティブサスペンションの作動状況を逐一示す画面も用意される。クルマが動き出した直後から、各輪の作動を示す赤いマークがさかんに伸縮する。走行中は、ほぼ休むことなく補正しているのだ。お疲れさまです。

A8が備えるもうひとつの電気モーター活用技術として「カーブチルト機能」が挙げられる。クルマが曲がるとき、普通なら沈み込むカーブ外側のボディをモーターの力で持ち上げて、水平を保とうとする機能だ。ディスプレイ上の「水平維持」スイッチでオン/オフできる。

実際体験するとコーナリング時のロールがグッと抑えられてなんだか不思議な感じ……とでも書きたかったのですが、スイマセン、当初、カーブチルト機能が作用していることに気づかないまま“曲がり”の続く山道で運転していました。とくに違和感を覚えることなく。

あらためてオンとオフを切り替えて観察すると、たしかに前方の風景とダッシュボードの傾き度合いが異なるけれど、期待した(!?)不自然な感じはない。おそらく、ボディのロールに対し、実質的なサスペンションストロークを増やせる恩恵だろう。つまり、アシを突っ張らせて傾くボディを支えるのではなく、通常通りサスペンションを機能させながら一方で上屋そのものを持ち上げて、結果的に傾きを減らしているのだ。

安全性も高める両機能についてしばらくウンウン唸りながら幾つかのパターンを試したのち、ショーファーモードに切り替えて走り始めた。もっとも快適な乗り心地を提供する設定である。これがヨカッタ。

ステアリングは軽く、動力系は余裕を持って穏やか。当然のことながら足まわりは柔らかい。ほんわかしていながら弾性を感じさせる芯がある。「さすがは最新のプレディクティブ アクティブサスペンションだ」と大いに感心して、いざ設定を変えようとセンターコンソールのディスプレイに手を伸ばして気がついた。プレディクティブ機能、オフでした……。

ダイナミックモードでテスト中にも薄々気がついていたが、A8の足まわり、元からいいですね。ドライブモードに合わせてよく調教されている。そのモードを選んだ運転者が期待する乗り心地が、しっかり高級感を伴って提供される。プレディクティブ アクティブサスペンションは、いわば美味しい料理にパラリと振るスパイスのようなもの……というのは過小評価に過ぎますが、アシまわりの機能を強化するというより、上質感を上乗せするための装備といえましょう。

カーブチルト機能も同様で、乗っている人に「なにやら理由は定かでないけれど、乗り心地がよくて疲れないなぁ」と、感じてもらえれば、いや、気づかれもしないかもしれないが、それこそがプレミアムモデルの本懐だろう。

前出のように、今回のクルマはノーマルより幅が控えめで天地が厚い、かつトレッドのあたりが柔らかいスタッドレスタイヤを履いていた。アウディA8の標準通り19インチに前後255のヨンゴータイヤを履いていたなら、また違った感想を持ったかもしれない。

Audi プレディクティブ アクティブサスペンションは、先進技術が有機的に結びついて生まれた新しい価値である。マイルドハイブリッド用の48V電源があったから、最大トルクが1100Nmに達する電気モーターを扱うことが可能となった。予防安全用のデバイスが協力して、より正確にアシを動かすための情報を与える。もとから可変性をもつエアサスペンションに、わざわざメカニカルな仕組みを追加して機能を拡張するところが、いかにもチュートニックな工夫だ。

プレディクティブサスペンションには、さらにもうひとつ。カメラとモーターが協働して受動安全性を向上させる機能が含まれる。時速25km以上で走行中、側面衝突の危険性を検知すると、ブツけられる側のボディを最大8cm持ち上げる機能だ。十分なクラッシャブルゾーンを取りにくいボディサイドの防御力をアップするため、強固なサイドシル付近で衝撃を受け止めて、キャビンの変形をできるだけ抑えようというユニークな試みだ。幸いにして、今回はテストするに至らなかった。

文・青木ヨシユキ 写真・安井宏充(Weekend.)

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