■燃料電池車ってどんなクルマ?
燃料電池自動車は「Fuel Cell Vehicle」の頭文字から通称FCVとも呼ばれており、燃料電池を利用して走るクルマで、排出ガスゼロという夢のような技術が採用されています。
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クルマに使用できる燃料電池の種類には、水素、メタノール、エタノールなどが挙げられますが、そのなかで現在市販化されているクルマも含め、これから普及すると予測されているのは水素燃料です。
一方で水素燃料は、エネルギーを取り出したあと排出されるのは水のみであるため、環境にもっとも優しい燃料とされているものの、精製方法や貯蔵方法、インフラ設備問題など、多くの課題が残されています。
また、燃料電池車は電気自動車と同じくモーターを駆動させて走行するのですが、クルマに備わっている燃料電池内で水素と酸素を化学反応させ、そこで発電した電気を電気エネルギーとして使用。一般的な電気自動車は外部電源から充電することで走行が可能となりますが、燃料電池車は水素などの燃料をタンクに補給することで、クルマ単体で連続して発電し、走行することができるのです。
そのため、一般的な乗用車はもちろん、大型バスや、工場・倉庫内で使用されるフォークリフトなどにも水素を使用した燃料電池技術が試験的に応用され、本格的な導入も検討されています。
そんな燃料電池車の技術の実用化が検討されているのは、地上だけにとどまりません。2019年7月16日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とトヨタの共同研究により、燃料電池車の技術を用いた月面モビリティ「有人与圧ローバ」を開発することが発表され、早くも宇宙で活躍することが決定しました。
3年間の共同研究協定計画では、2019年に月面走行に向けた試作車の開発が始まり、2020年に試作車の製作を開始。そして2021年に、試作車を用いた実験・評価がおこなわれる予定です。
宇宙で水素を用いた燃料電池技術が採用されるのは、酸素のない月ではガソリンを燃やせないということもありますが、リチウムイオン電池に比べて軽いことや、発電で発生する水を冷却水や飲料水に活用できることが大きな理由です。
■燃料電池のメリット・デメリット
燃料電池車のメリットは、数多くあります。
走行時に排出されるのは水蒸気のみで、ガソリン車やディーゼル車のようなCO2、NOx、HC、CO、PMなどの物質は排出されません。エネルギー効率もガソリン車の2倍近くと高く、低出力域であっても高効率を維持することが可能です。
また、燃料電池車で使用される電気は化学反応により生成されるため、内燃機関のような騒音もありません。ガソリン車と同様にステーションで水素を充填できるため、電気自動車のような長時間の充電の必要もなく、連続して走行もできます。
ほかにも、石油が枯渇するとガソリンや軽油の確保は難しくなりますが、効率の問題はあるものの、水素は水からも作り出すことが可能です。
そしてデメリットは、大きく分けてふたつあります。
ひとつ目は、水素は非常に危険な物質のため保管・輸送が難しいことです。空気中の水素濃度が4%から75%の範囲内で着火源があると水素爆発を起こす恐れがあるため、取り扱いには徹底した安全管理が必要となり、安全管理には高いコストがかかります。
ふたつ目は、燃料電池車の製造にコストがかかることです。燃料電池には高価なレアメタルが必要なため、通常の燃料自動車よりも高価なクルマとなってしまいます。
生産方法や代替材料の発展で大量生産できるようになり、ひと昔前に比べると価格を抑えやすくはなったものの、一般に普及するレベルとなるまでにはまだ改良が必要です。
しかし、そんなデメリットがあっても、製造して改良し続けなければ発展や普及はありません。そのため現時点で国内では2車種のみですが、市販化された燃料電池車があります。
●トヨタ「ミライ」
2014年12月に販売されたミライは4人乗りの4ドアセダンで、1回の水素充填で650kmの走行が可能です。
搭載された駆動用バッテリーはスタート時のアシストで使用し、減速時の回生エネルギーで充電するシステムを採用しています。
シンプルかつ近未来的なエクステリアと高級セダンの様なインテリアを持ち、燃料電池車ならではの静かさとパワフルな加速が特徴です。
価格(消費税込、以下同様)は740万9600円からとなっていますが、残価設定ローンや各種補助金を加味すると、手が届きやすい燃料電池車といえるでしょう。
また、2019年の東京モーターショーでは次期型となる「ミライ コンセプト」が公開されており、2020年末の発売が見込まれています。
●ホンダ「クラリティ FUEL CELL」
2016年3月にリース販売されたクラリティFUEL CELLは5人乗りの4ドアセダンで、1回の水素充填で750kmの走行が可能です。
燃料電池パワートレーンをボンネット内へ搭載することで、広い室内空間を実現しています。
先進安全技術ホンダセンシングにより安全で快適な運転を支援し、最高出力130kWの高出力モーターで発進から最高速度までなめらかで力強い加速が魅力で、価格は781万4400円からとなっています。
※ ※ ※
全国的に水素ステーションの設置が広がっており、都心部では燃料電池車を見かける機会も増えてきました。
一般に普及するにはまだまだ多くの課題がありますが、これからの時代に求められるのは、環境に配慮したクリーンなクルマであることは間違いないでしょう。
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