1989年から始まった平成の30年間は、登録車販売台数のトップがドラスティックに入れ替わった変革の時代だった。
33年連続で販売ナンバー1の座を守りぬいてきたトヨタのカローラに替わって、2002年にホンダのフィットが販売トップの座を奪取。また、ハイブリッド車のパイオニア、プリウスが2009年に初めて販売ナンバー1の座を奪い、同じくハイブリッドのアクアも2013年に販売ナンバー1に。
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そして、2018年は12月の販売台数のみ未集計だが、e-POWER効果で販売を伸ばした日産 ノートが登録車販売ナンバー1となることが確実な情勢だ。
では、平成30年間トータルで最も売れた車はどうだろうか? 本記事では、平成元年から2018年11月までの登録車販売台数ベスト10を集計! 先述のとおり2018年12月分は未集計だが、トップ10の順位変動は不可能な状況で、平成30年間の累計販売台数トップ10は事実上確定。本記事で紹介する1位のモデルが「平成で最も売れた車」となる。
文:永田恵一
写真:編集部
【10位~7位】4台中3台は現役! あの絶版名車もランクイン
■10位:マツダ デミオ(1996年8月~)/148万6160台
バブル時代の拡大路線の失敗によりマツダが非常に厳しかった時期に、初代モデルが登場したデミオ。車自体は簡便なものながら「5ドアハッチバックで広いスペースを確保する」というミニワゴン的なコンセプトと価格の安さが支持され、好調な販売を継続。当時のマツダにとっては救世主的な存在となった。
デミオは初代のキープコンセプトだった2代目、スタイリッシュな3代目、ディーゼルエンジンも搭載し、プレミアムな部分もある4代目(現行型)とコンセプトを替え、現在も堅調な販売を維持している。
■9位:ホンダ ステップワゴン(1996年5月~)/156万3878台
初代ステップワゴンは、当時のRVブームに乗り遅れたホンダがオデッセイ、CR-Vに続く“クリエイティブムーバー”第3弾として送り出した。
初代ステップワゴンも初代オデッセイやデミオと同様、車自体の出来は大したものではなかったが、乗用車ベースのハイトミニバンというコンセプトと価格の安さを理由に大ヒットとなり、苦境にあったホンダを救う1台となった。
2代目モデル以降は、ライバル車となるトヨタのノア/ヴォクシー兄弟、日産セレナの登場もあり、初代モデルほどは売れていないが、それでも登場が早かったこともあり、平成のミドルハイトミニバンでは販売台数ナンバー1となった。
■8位:トヨタ エスティマ(1990年5月~)/179万7177台
初代エスティマは、車体中央付近に積むエンジンを75度傾けて搭載し、補機類は短いボンネットに切り離して配置するという革新的なパッケージングで登場。日本車におけるミニバンの先駆車の1台だった。
当初は300万円以上の価格で、ボディも3ナンバーサイズという高級ミニバンであったが、1992年には排気量、ボディサイズともに5ナンバーサイズとした「ルシーダ&エミーナ」を追加。その後は年間10万台超えの販売が続く人気車に成長した。
2006年登場の3代目モデルは現在も販売され、モデルの古さとミニバンの主流がハイト系に変わったことで全盛期に比べれば販売は激減しているが、それでも月1000台程度が根強く売れ続けている。
■7位:トヨタ マークII(1968年9月~2007年)/194万3933台
チェイサー・クレスタを含めたマークII三兄弟は、1984年登場の70系以降、「一般の人が買える最高の車、上級小型車」というコンセプトが大当たりし、一時期は日本の国民車的な存在であった。
平成に販売されたマークIIは、5ナンバーサイズで最も売れた1988年登場の80系以降。3サンバーになった90系以降は2.5L直6ターボを搭載する「ツアラーV」にはMTも設定されるなど、スポーツセダンというキャラクターも持つようになり、1996年登場の100系のモデルサイクル前半までは好調な販売をキープした。
しかし、100系の後半以降はさすがにマークII三兄弟に対する飽き、ミニバンや5ナンバーサイズで濃厚な魅力を持つスバル レガシィが台頭した影響もあり、販売は減少。
2000年登場の110系で三兄弟は解散。兄弟車はヴェロッサのみとなり、110系を最後にマークIIの名は消え、2004年に「マークX」に移行した。そのマークXも遠くないうちの絶版が確実視されており、マークII&マークXは平成における人気車の変化を象徴する存在となった。
【6位~4位】ナンバー1候補の大ヒット車が早くも登場!?
■6位:日産 マーチ(1982年10月~)/211万8450台
マーチはリッターカーとして1982年に登場し、初代モデルは平成3年(1991年)まで販売。初代は登場から7年以上が経った平成に入っても、ターボ+スーパーチャージャーというエンジンで、パワステもない「スーパーターボ」と、お買い得な「iZ」という両極端なグレードがあり、堅調に売れていた。
マーチが大躍進するのは、1992年登場の2代目モデルから。2代目は「とにかく真面目で堅実なリッターカー」というキャラクターを持つ全体的使いやすい車であった。
それだけにバブルが崩壊し、贅沢をし過ぎた反省や慎ましやかな流れとなった日本において、2代目マーチはちょうどいい存在となり、登場から時間が経つに連れて販売台数が伸びた珍しい車だった。
2002年に登場した3代目モデルも好調な販売をキープ。しかし、2010年登場の4代目となる現行モデルはタイで生産され、特に安いわけでもない魅力に欠けるコンパクトカーとなってしまった。
もうすぐ登場から9年が経ちながらフルモデルチェンジの噂も聞こえないなど、残念ながらマーチは現在の日産の国内軽視を象徴する存在となってしまった。
■5位:トヨタ ヴィッツ(1999年1月~)/215万8043台
初代ヴィッツは、日本において、スターレットとその上のターセル、コルサ、カローラIIを統合する「世界に通用するコンパクトカー」として登場。
初代モデルだけでもファンカーゴ、プラッツ、bB、イストなどの派生車も多数誕生。初代ヴィッツは、ヨーロピアンなデザインなどを理由に2002年まで年間10万台を超える販売をキープ。2005年登場の2代目モデルを経て、2010年に現行3代目モデルが登場。
現在ヴィッツは「ヤリス」の名でWRC(世界ラリー選手権)に参戦し、スポーツモデルのGR系も設定。アクアの登場で以前ほど売れていないにせよ、存在感を再び高めている。
また、ヴィッツはレース、ラリーなど底辺のモータースポーツを長年支えており、その点でも価値のあるモデルだ。
■4位:トヨタ プリウス(1997年10月~)/254万3670台
初代プリウスは、将来的にカローラやコロナのカバーも想定した「世界初のハイブリッドカー」として登場。現在でもトヨタのハイブリッド車の基礎となっている2モーターハイブリッドシステムやボディサイズの割に広いキャビンといったパッケージング、ハイブリッド普及のため215万円という内容を考えれば激安な価格も含め超意欲作であった。
しかし、当時はガソリン価格の安さに加え、ハイブリッド車が未知のものだったこともあり、初代の日本での販売台数は、6年間で約7万台程度と現在の快進撃が想像できないほど低調なものだった。
2003年に劇的な進化を遂げた2代目モデルが登場し、プリウスに知的なイメージが根付いたことやガソリン価格高騰という追い風もあり、プリウスは月5000台程度売れる量販車に成長。
そして、2009年登場の3代目モデルはキープコンセプトながら、リーマンショックによる不景気の始まりに素早く対応。性能や装備の大幅向上にも関わらず、205万円~というパンチのある価格で登場。
さらに、景気刺激策のエコカー減税や新車購入補助金も追い風となり、注文が殺到するプリウスショックを起こした。一時は1年近い納期となり、年間販売台数も20万台越えをキープ。今では日本の国民車的存在の1台に躍進した。
プリウスはハイブリッド車のパイオニアという面で「熟考のうえ、やると決めたことは時間を掛けてでも、必ずモノにする」というトヨタの素晴らしいDNAを象徴するモデルでもある。
【3位~1位】プリウスを抑え平成で最も売れた車は?
■3位:トヨタ クラウン(1955年1月~)/261万7150台
クラウンは初の純国産車であり、日本車を代表する1台でもある。平成に販売されたクラウンは、1987年登場の8代目モデル以降。8代目はバブル経済の絶頂期に販売されていたこともあり、平均300万円はするであろう高額車にも関わらず、マークIIに肉薄する年間20万台規模で売れていた。
1991年登場の9代目モデル以降も、“ゼロクラウン”と呼ばれた12代目モデルを筆頭に堅調に売れていたが、2008年登場の13代目モデル以降はユーザーの高齢化などが影響し、2014年登場の14代目モデルも含め「登場した年は好調なのだけど……」という状態が続いた。
だが、2018年登場の現行型モデルは、さまざま面で覚悟を決めた若返りを実施。今では数少ない“日本人のための車”であるクラウンが、いつまでも存続することを強く願う。
■2位:ホンダ フィット(2001年6月~)/275万7508台
フィットは、燃料タンクを車体中央に置く独創的な「センタータンクレイアウト」を核に、広さを含め「これ1台で何でもできるコンパクトカー」というコンセプトで登場。
コンセプトの新しさに加え、いい意味で万人向けのスタイルや他社のコンパクトカーもフィットに合わせざるを得ないほどの価格の安さも追い風となり大ヒット車に。登場翌年の2002年には、33年続いたカローラの年間販売台数ナンバー1を阻止。モビリオ、フィットアリア、エアウェイブといった派生車も誕生し、ホンダの基幹車種の1台に成長した。
2007年登場の2代目モデル、2013年登場の3代目(現行型)ともに、初代からのキープコンセプトで十分売れているのだが、さすがにここ何年かは人気に陰りが感じられるのも否めなくなってきた。それだけに2019年登場予定の4代目モデルがどう変化するのか、大いに気になるところだ。
■1位:トヨタ カローラ(1966年10月~)/511万1389台
平成で最も売れた車は、1990年の30万8台をはじめ、年間販売台数20万台越えを11回記録したカローラであった。
日本のポピュラーカーであるカローラは、3代目プリウスの登場以来、年間販売台数が10万台を切る年も見られるようになったが、堅実に売れ続けている。3代目プリウス登場以前の莫大な販売台数を考えれば、カローラにはどんな車も敵わない。これはトヨタの素晴らしいDNAである「継続は力なり」の賜物だろう。
現在、日本向けのカローラは、5ナンバーセダンの「アクシオ」とワゴンの「フィールダー」、3ナンバーハッチバックの「カローラスポーツ」という構成。2019年はセダンとワゴンもフルモデルチェンジ予定で、5ナンバーボディの行く末など、カローラにとっては大きな変革の年となりそうだ。カローラが日本で復権できるかにも注目が集まる。
◆ ◆ ◆
平成に売れた車はカローラ以外、高級車、コンパクトカー、ミニバン、ハイブリッド車とドンドン変わり、元号と同じく激動であった。
新しい元号の時代も当面はハイブリッド車、コンパクトカー、ミニバンが幅を利かせるにせよ、SUVや電気自動車の台頭も考えられる。どんな車が登場し、売れるのかを楽しみにしたい。
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