ポルシェ911ターボを超える記録を樹立していた!
来年、デビュー30周年を迎える日本の至宝、日産スカイラインGT-R(R32)。グループAレースに勝つために生まれ、そのグループAで世界の強豪を相手に、29戦29勝無敗を記録した。その印象が強いのかもしれないが、本当に凄かったのはむしろ市販車。
「R32・R33・R34」第二世代のスカイラインGT-Rはどれが一番楽しいのか?
スカイラインをはじめとする国産スポーツカーの目標は、いまもむかしもポルシェ。とくにスカイラインは、1964年の第二回日本グランプリのポルシェ904GTSとスカイラインGT(S54-B)の対決以来の因縁のライバルだ。
その最強のポルシェ911ターボを真っ向勝負で打ち負かしたのが、ほかならぬR32GT-Rだったからだ。R32GT-Rは、ポルシェのホームグランド、ニュルブルクリンクの北コースで、911ターボのレコードを破る、8分22秒の量産車最速タイムを樹立。
それまで自動車メーカーやタイヤメーカーのテストコース的な存在だったニュルというステージで、ここでの量産車最速=世界最速のスポーツカーという価値観を、多くの人が共有するようになった大きなきっかけが、R32GT-Rのニューレコードだったといえるだろう。この他、0-400m加速でも、R32GT-R(13秒4)はポルシェ911ターボ(13秒7)を上まわる。
最高速だけは、911ターボに敵わなかったが、それでもリミッターカットだけで250km/hに達したのは当時の大事件。GT-Rより速かったのは、空力に勝るフェアレディZ32ぐらいだった。筑波サーキットのタイムでも、1分10秒が最速の目安と言われた時代に、1分8秒台を記録し圧倒的な速さを証明。筑波のラップタイム、ゼロヨン、最高速の3ステージで、それまでの記録を大幅に更新してみせた。
いまでは不思議ではないかもしれないが、サーキット=コーナリング性能、ゼロヨン=加速性能、最高速=エンジンパワーの三要素が鼎立しているクルマは意外に少なく、直線番長系とハンドリング系が両立しているクルマはじつは稀だった。
スペック的にはご存じの通り、ポルシェ959が先陣を切ったトルクスプリット4WDを、本当の意味で量産化し、4WDなのにサーキットでも速い最初のクルマとなり、600馬力級のポテンシャルのあるRB26DETTは、ほとんどレーシングエンジンのような設計だったが、パワーバンドが4000~8000回転と幅広く、こんなユニットはほかにはなかった。
長年、日本のスポーツカーの弱点であり、もっとも遅れている部分といわれたブレーキもアルミ製4ポッドキャリパーをいち早く採用。Vスペックには世界のトップブランド、ブレンボのブレーキも用意された。四輪マルチリンクサスペンションも最先端のサスペンション。さらにアルミ製ボンネットやフロントフェンダーも先進的だ。
なにより国産スポーツカーのなかで、はじめて満足できるボディ剛性を備えていた点は非常に大きい。これも開発時にニュルの洗礼を受けた成果だろう。これらの素姓の良さは、グループAよりもはるかに改造範囲が狭く、ほぼ市販車状態で戦うN1耐久レース(現在のスーパー耐久レースの前身)で、29戦28勝したことでも証明されている。
ちなみにR32GT-Rに唯一の黒星をつけたのは、なんと三菱のギャランVR-4! R32GT-Rは、じつはレースで無敗ではなかった。いずれにせよ、デビューした1989年から一時とはいえ、R32GT-Rは世界最高のスポーツモデルだったことは間違いない。
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