マツダが東京モーターショー2019で初公開したEV(電気自動車)は大きなサプライズだった。その名は「MX-30」。さきごろ日本でも販売開始されたSUV「CX-30」のクーペ版のようなスタイルである。
黒を背景にしたマツダのブースでベールをかぶっていたので当初はデザインスタディかな? と、思っていたが、じつはコンパクトEVで、しかも欧州では10月24日から予約受注が開始されるというのも、大きな驚きだった。
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ボディは、全長 × 全幅 × 全高:4395mm × 1795mm × 1570mm。MX-30は、スタイルがおもしろい。ひとつはフロント・グリルだ。
これまでのマツダ車は、大きなグリルでバンパーレスのフロントマスクを特徴としてきたが、今回はグリルの上下幅がうんと細くなり、エアダム一体型の大型バンパーに変わった。
もうひとつはドアだ。4枚あるにはあるが、後席用のドアは観音開きの小ぶりなもので、マツダはこれを“フリースタイル・ドア”と名付けている。マツダ「RX-8」(2003年)も同様のドアだったことを思い出した。
フリースタイル・ドアを開けた状態。ルーフの前後長も短めだ。そして、ルーフ・サイドにはボディカラーと異なるガーニッシュがつく。それによって、クーペ的なラインが強調されている。
ショーに展示された車両のボディカラーは、マツダのテーマカラーともいえる「ソウルレッド」でなく、ホワイト系だったのも意外だった。従来モデルとのちがいを明確化するためのようだ。
タイヤサイズは215/55 R18。こだわったデザインターンテーブルの上に乗ったクルマを、各国のプレスが入れ替わり立ち替わり、細部にいたるまで入念に撮影していたのが印象的だった。
東京モーターショーには、マツダとホンダがコンパクトEV(どちらも2020年日本販売開始予定)を出展したのだから、話題になって当然である。
インテリアには、コルクや再生材からできた生地を使う。車名の“MX”は「アクティブさを表現しているものです」と、マツダの広報では説明してくれた。かつてマツダが作っていたV6クーペ「MX-6」(1992年)を想起させるネーミングともいえる。ちなみに、MX-6の“MX”は、マツダの「M」と、未知数・スポーツを表す「X」を組み合わせたものだった。
後席用のドアは“フリースタイル・ドア”と呼ばれ、後ろヒンジで開く。前と後ろのドアを開いたときの開放感の大きさも、セリングポイントにしたいようだ。
MX-30は、全長4390mm、全高1570mm。「マツダ3」や「CX-30」と、基本プラットフォームを共用するものの、だいぶ印象は異なる。開発を指揮した竹内都美子氏(商品主査)は、「もっともこだわったのはデザイン。人間らしい雰囲気のデザインにしたかった」と、述べる。
運転席は電動調整式。リアシートは3人掛け。センターコンソール付き。それでも、MX-30は鬼子ではない。マツダのラインナップに連なるモデルである。同社による“新世代商品”の第3弾として登場し、ボディは「魂動(こどう)」をテーマに、デザインされている。
面のカーブは、ルーフ部分のガーニッシュと、前・後フェンダーとボディ下部の黒い合成樹脂のクラディングにより、マツダ3やCX-30ほど目立たなくなっているきらいはあるものの、それでも入念な作りこみが各所にあり、全体として躍動感が強いのは、さすがマツダ・デザインだ。
インテリアのデザイン・テーマも、マツダ3やCX-30の2台とはだいぶ異なるし、ほかのマツダ車とも異なる。メーターナセルとダッシュボードの関係性や、センターコンソールの造形も、おそらくあえて、ほかのモデルと一線を画したのだろう。
セレクターレバーもほかのマツダ車とは異なるデザイン。航続距離は約200km。パワープラントは「e-SKYACTIV(イースカイアクティブ)」と名付けられた。電気モーターと総電力量(バッテリー容量)35.5kWのリチウムイオン電池を搭載する。最高出力や最大トルクは非公表。航続距離は約200kmという。
竹内氏は「このクルマは自分らしさを取り戻すために乗ってほしいと思いながら開発しました。ちょっとした買い物など、日常的に使いこなすなかで、気持ちのよいクルマと思って欲しいです」と、述べた。
ステアリング・ホイールは、マツダ3とほぼおなじデザイン。メーターパネルはEV専用デザイン。とりわけプロファイル(ボディ側面)でみると、イタリアで作ったの? と、思うような小さなキャビンと大きなフェンダー、存在感の強いタイヤによる独特のプロポーションが魅力的だ。
ショー会場で見ていて、本音を述べると、このデザインでスポーティなガソリン・エンジンを搭載したら、かなり食指が動きそうだった。それも期待したい。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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