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【試乗】氷上でも雪上でも進化が止まらない! ヨコハマのスタッドレス「アイスガード7」の底力を北の大地で体感

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【試乗】氷上でも雪上でも進化が止まらない! ヨコハマのスタッドレス「アイスガード7」の底力を北の大地で体感

 この記事をまとめると

■ヨコハマタイヤが「北海道タイヤテストセンター」を2023年1月より稼働させた

「スリップサイン」とは違う「プラットフォーム」って何? 昨年も使ったスタッドレスタイヤを今年も履くなら「確認必須」のポイントだった

■国内最大の屋内氷盤旋回試験場を有しており、最先端技術でタイヤ開発が行える

■屋内外のテストコースと一般道でヨコハマタイヤのアイスガード7と試作タイヤを試乗した

 最先端かつ国内最大級の氷上テストコースに潜入!

 横浜ゴムの北海道旭川市にあるテストコース「北海道タイヤテストセンター」に国内最大の屋内氷盤旋回試験場が完成。2023年1月5日より稼働が始まった。

 冬用タイヤの氷上性能は雪上性能とともに重視されている。とくに現在では氷上性能のさらなるレベルアップが開発の課題になっている。現在指標とされているのは氷上制動性能で、各タイヤメーカーとも屋内氷盤試験場を作って、天候に左右されにくい安定した状態で制動テストが行われている。

 横浜ゴムでも2018年1月に屋内氷盤試験場を開設。この施設はトラックのテストもできる大規模なものであり、また氷の路面の表面温度を0~-10℃までコントロールできる国内最大級の冷媒装置を備えて、氷温の変化によるグリップの変化、あるいは安定した制動性能を発揮させるためのテストをできるように作られている。

 屋内氷盤旋回試験場は、氷上制動性能の次に重視される氷上旋回性能のさらなる向上を目指して開設された施設。氷上制動テストを行う屋内氷盤試験場は縦長のコースを持つ施設だったが、屋内氷盤試験場は全長54m×全幅54mの正方形をしており、室内高は最高部で12.3m、氷盤面積は1960平方メートルあって、旋回半径は10~22mまでの試験が可能となっている。

 試乗会のテストカリキュラムのひとつとして氷盤旋回コースを走らせてもらうことができたが、直射日光、雪のちらつきや風の有無、気温の変化といったものがなく、何度走っても安定した氷の状態でテストできるのが大きな特長になっている。

 アイスガード7のインプレッションでも触れるが、今回は、氷盤旋回路でアイスガード7とアイスガード7のコンパウンドを使った溝なしタイヤ(スリックタイヤ)、それに同じくアイスガード7のコンパウンドを使い、トレッドデザインを氷上性能だけを重視した氷上特化タイヤの3つで走り比べることができた。

 スリックタイヤは接地面が広くグリップが高いという先入観があったのだが、いざ走らせてみると、グリップの絶対値自体想像より高くなく、滑り出しも唐突でコントロールが難しかった。逆に氷上グリップ特化型はハンドルを切り足していってもグリップ感が高く持続し、滑り出しの予見性が良く、また滑り出してからも路面にエッジが立っているような引っかかり感が残っており、減速によるグリップの回復も容易で走り易かった印象がある。

 アイスガード7は、グリップピークはスリックタイヤと同じくらいのグリップレベルだが、タイヤが微妙に滑り出す手前あたりから路面にエッジを立ててグリップしているような感触があって、滑り要素が増えてくるにしたがって氷の路面をひっかいているような感覚が増えてくる。そのため、タイヤの滑り出しがわかりやすく、またコントロール性が良かった。

 もちろん、従来から屋外のスキッドパットでも同様のテストはできるが、屋内施設を作ることでより安定した環境でテストできるため、天候に左右されず計画どおりに精度の高い有効なテストが可能になったということが最大のメリットだろう。

 横浜ゴムでは、冬用タイヤテストコースとしてこの旭川の北海道タイヤテストセンター(Tire Test Center of Hokkaido=TTCH)のほかにスウェーデンにYOKOHAMA TEST CENTER of SWEDEN=YTCSを設置している。位置づけとしては、TTCHで世界で販売するすべての冬用タイヤの試験をおこない、YTCSでは主に欧州向けの法品の確認評価を行っている。新たな氷上試験路の設置によって横浜ゴム冬用タイヤのさらなる性能向上が期待される。

 雪上でも氷上でも文句なしの安心感!

 アイスガード7は、先代アイスガード6と比べ、より幅広い温度域の氷雪上路面で安定して強いグリップ性能を発揮してくれるようになった、そんな印象を持っている。もともとバランスのいい氷雪上性能を持っており、またインフォメーション性に優れているのが特長だ。

 アイスガード7の特長は“氷に効く・長く効く・雪に効く”というキャッチコピーどおり、氷上グリップ性能と、雪上グリップ性能、それにロングライフ性を高めているところ。

 なかでも氷上性能は、氷上制動を14%、氷上加速性能を15%、氷上旋回(ラップタイム)を7%向上と、大幅な性能アップを達成している。

 技術的なトピックスとしては、新素材を採用した“ウルトラ吸水ゴム”の効果が挙げられる。ウルトラ吸水ゴムは、従来から採用されている新マイクロ吸水バルーン(殻付き気泡)、シリカ、オレンジオイルSに加えて吸水効果を高める「吸水スーパーゲル」、引掻き効果を発揮する「マイクロエッジスティック」、シリカの分散性を高める「ホワイトポリマーII」を配合することで、氷上グリップ性能を高めている。

 また、このウルトラ吸水ゴムのなかで、オレンジオイルSはゴムの劣化抑制効果を発揮。時間が経ってもゴムを硬くなりにくくする役割を果たしている。

 雪上性能については制動性能と発進性能がともに3%向上、雪上旋回(ラップタイム)同等として、相反すると言われる氷上性能の向上と雪上性能の向上を両立させている。

 これに大きく貢献しているのは、エッジ量を増したトレッドデザインとマイクロ吸水ゴムだ。なかでもマイクロエッジスティックは雪を噛むエッジ効果を発揮しているという。

 試乗は一般道とテストコース内での比較が行われた。

 一般道試乗は、旭市郊外から大雪山旭岳周辺の一般道及びワインディングロードが試乗ステージだった。一般道(圧雪路)でのアイスガード7の印象は、圧雪路面を踏みしめる感触があって安心してステアリングを握ることができる。

 ところどころ凍結した路面が顔をのぞかせる幹線道路でも、タイヤが路面をとらえている感触がステアリングやクルマの動きから感じ取れるので安心して走ることができた。もちろん路面次第でグリップレベルは変わるが、印象として氷の路面でもタイヤが路面をとらえグリップしている感覚と、それに伴う安心感がある。

 山岳区間のワインディングに行くと、アクセルを踏みこんで加速するときのトラクション感や、カーブでのグリップ感にエッジを効かせて路面をとらえているような安定感と安心感がある。

 とくに感心するのは、カーブに向けてハンドルを切り込んでいくときのハンドルの手応えにエッジ成分を感じるグリップの手応えがある点だ。その感触で滑りやすい路面なのか、グリップしてくれるのかの様子がつかみやすい。このインフォメーション性の良さは歴代のガーデックスシリーズから受け継がれているものだ。アイスガード7では、氷雪上でのグリップのレベルアップによるものだと思うのだが、凍結路面と圧雪路面が混在するリアルワールドで路面の様子がよりはっきりと感じ取れるようになっている。安心感と走りやすさがさらに2段階くらい上のレベルに進化したという印象を持った。

 一方、テストコースでは、アイスガード7とアイスガード7のコンパウンドを使ったスリックタイヤ(溝なしタイヤ)、それに同じコンパウンドを使った氷上特化型のトレッドパターンの3本を使って比較試乗を行った。試乗テーマは「トレッドデザインによってタイヤの性能はどのくらい差が出るのかの実験」といったもの。

 トレッドデザインの進化がはっきりと感じられる興味深いものだった。

 だいぶ昔の話になるが、スタッドレスタイヤのコンパウンドで作ったスリックタイヤを氷上で試したことがあるのだが、このときは接地面の広さ=グリップの強さだった。もちろん滑り出しが唐突でコントロールが難しいので実用性はないが、接地面積の広さはグリップの強さだった。だからこそ現在でも氷上特化型のスタッドレスタイヤは溝を細く少なくし、接地面積を広くする傾向にあるのだ。

 ところが今回の実験では、もっとも氷上ブレーキの制動距離長く、氷上旋回のタイムが悪かったのがスリックタイヤだった。

 氷上ブレーキではグリップピークを超えた瞬間ABSが作動してしまい、感覚的にはスポッとグリップが抜けたように滑走してしまう。

 溝面積を最小限にして接地面を多く取り、サイプ量を増量した氷上特化タイヤは氷上制動性能でアイスガード7と比べてもより強力な制動力を発揮し、旋回でもわずかながら好タイムをマークした。

 この結果だけを見ると、「氷上特化型タイヤを製品化すればいいのでは?」と思えてくるが、圧雪路に持ち込むと俄然印象が悪くなる。氷上特化型タイヤは、じつを言うと圧雪路面でも案外よく走るのだ。とくにトラクション方向はサイプが効いているせいかアイスガード7ほどではないが強いトラクションを感じることもできた。

 ただ、旋回やスラロームといった横方向のグリップ成分が混じってくると、滑り出しの唐突さが顔を出し、コントロールの難しさが前に出てくる。インフォメーション性が悪く安心して走れないのだ。

 スリックタイヤはこの3種類のなかで1番ダメという結果にはなったのだが、まったくダメというわけではなく、溝がなくても案外走れてしまうのが驚きだった。圧雪路面でもゴムのグリップ性能がある適度機能しているのがよくわかる。ただし、縦方向も横方向も滑り出すと足もとを掬われたようにグリップ感が消失し、滑りが止まらない印象となるので、安心感はほとんどないといったところ。

 なお、今回はこの2パターンの試乗に加えて、会場の屋外ではトヨタのGRヤリスやGRカローラといったハイパフォーマンスマシンに、アイスガード7を装着して特設コースを走れるというエキサイティングな試乗もさせてもらった。スタッドレスタイヤではありながら、アイスガード7はハイパワーマシンのパワーを効率よく路面に伝えられるパフォーマンスも秘めてる点も印象的であった。

 改めてアイスガード7に試乗してみると、溝がトラクションや横方向のグリップを補強し駆る滑り出しの予見性や滑り出し手からもイッキにグリップがなくならずコントロールの幅を持たせてくれているのが感じ取れた。もはやスタッドレスタイヤのトレッドデザインは、ある意味でコンパウンド性能以上に重要で、溝とサイプをどんな割合で配置しデザインするかで氷雪上性能が大きく左右される要素となっているということがわかった。

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みんなのコメント

4件
  • lan********
    一番知りたいのは同じ条件で他社製スタッドレスタイヤと比較してどうなのか、という点ですよね。
    絶対にできないのでしょうが。
  • 秘密結社急便
    ブラックアイスバーン、ミラーアイスバーン
    水分含んだ雪、新雪が大量に降って
    踏み固められてない雪道
    北海道、新潟、北陸、福岡でも
    雪質は変わる。ドライバーの腕前も変わる。
    過信は禁物と思うね。絶対滑らないスタッドレスタイヤ
    など存在しません。絶対滑ると思った方がいい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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