この記事をまとめると
■eスポーツをきっかけにレーサーになった人がスーパーGTに出場している
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■路面の違いや空間の違いがあるので、ゲームと実車で似ているのは60%ほどの範囲だ
■実車の場合、チームスタッフとのコミニュケーションも大切だと語る
eスポーツ出身のGTドライバーに実車とゲームの違いを聞いてみた
2020年のコロナ禍をきっかけに、日本でも盛り上がりをみせてきたeスポーツ。
近年のモータースポーツフィールドでは、レーシングシミュレーターをドライバーの育成やレース前のトレーニングに活用するほか、eスポーツ出身のドライバーたちが実際のレース競技で活躍している。果たして、レースシーンにおいてeスポーツとリアルスポーツはどれくらい共通している部分があるのだろうか? 同時にどの部分が異なっているのか?
ここでは、日本最大級の人気を誇るスーパーGTに参戦中のeスポーツ出身ドライバーをクローズアップ。第4戦の富士の会場で、バーチャルとリアルスポーツの共通点・相違点を直撃した。
まず、eスポーツ出身のドライバーとして話をうかがったのが、TEAM MACHの5号車「マッハ車検エアバスターMC86マッハ号(トヨタ86MC)」でGT300クラスに挑む冨林勇佑選手で、冨林選手は2016年のFIAグランツーリスモチャンピオンシップにおいて、マニュファクチャラーカップで優勝。2018年からはeスポーツと並行してリアルスポーツにもチャレンジしており、ロードスターパーティレースや86/BRZレースで活躍するほか、2020年にはスーパー耐久シリーズのST3クラスでタイトルを獲得するなど、eスポーツとリアルスポーツで豊富な実績を持つ。
その冨林選手は、eスポーツとリアルスポーツの共通点について、「いまはリアルスポーツがメインになっていますが、eスポーツもやっています。息抜きもありますが、レース感だったり、感性を磨くためにトレーニングとしてeスポーツもやっています」としたうえで、次のように語っている。
「免許証をとってクルマに乗り始めた頃は、eスポーツと100%同じだな……と思いました。どうやったら速く走れるのか、そういった考え方はeスポーツとまったく同じなんですが、いろんなレースを経験するようになってから、90%、80%、70%と共通点が減ってきて、“ここが違うな”というところが気づけてきた。いまはeスポーツとリアルスポーツの共通点は60%だと思っています」とのこと。
そのうえで、共通点について冨林選手は「ライン取りやコントロールの仕方はeスポーツもリアルスポーツも同じです。それにアンダーステアの場合は、コーナーの入り口で無理に曲げずに、立ち上がりを大切にするとか、そういった速く走らせるためのアプローチの仕方も変わらない」と語る。
一方、eスポーツとリアルスポーツの相違点としては環境の変化で「eスポーツは朝だろうが、夜だろうが、同じコンディションで1000kmでも1万kmでも走れるんですけど、本物のレースでは同じ環境はなく、気温や路温、ラバーの乗り方が変化していきます。同じ5月のレースでも初旬の比較的に涼しい時期と下旬の暑い時期ではタイヤのエア圧がまったく違うので、環境の変化に対するセッティングやドライビングが必要になることが違いますね」と富林選手。
さらに、「スーパーGTなど速いクルマに乗るようになってからは身体への負荷、たとえば横Gとかがきつくなってくるんですけど、それもeスポーツにはない感覚です。それにeスポーツはエアコンの効いた部屋でドライビングできるけれど、僕たちが乗っているトヨタ86MCはエアコンがなくて暑いので、その部分もまったく違います。eスポーツは安定した環境なので、速く走る環境に集中できますが、リアルスポーツは横Gとか暑さとかの弊害があるのでフィジカル的にもきつい。リアルスポーツをやるようになってから、トレーニングを行うようになりました」と付け加える。
ちなみにダウンフォースについてはeスポーツでも感じられるようだが、「eスポーツは路面の凹凸がないせいか、ずっとダウンフォースが効いた状態なんですけど、実車のほうはちょっとした動き方や風の流れでダウンフォースが抜けたりするのでシビアですね」と解説する。
そのほか、eスポーツとリアルスポーツの相違点について、「eスポーツは個人戦が多いけど、スーパーGTは2名のドライバーがいるし、スーパー耐久なら3名とか4名で戦いますよね。それにメカニックやエンジニアなど大勢の人が関わって1台のクルマを走らせるので、リアルスポーツは団体戦としてチームワークも必要ですね」と富林選手は説明してくれた。
実車ではタイヤの性能が露骨に出る
次に話をうかがったのが、ANEST IWATA Racing with Arnageで50号車「ANEST IWATA Racing RC F GT3(レクサスRC F GT3)」を駆るイゴール・オオムラ・フラガ選手。フラガ選手は幼少期からeスポーツで活動を開始しており、2018年にはFIAグランツーリスモチャンピオンシップのネイションズカップで初代チャンピオンに輝くほか、2019年および2020年にはマニュファクチャラーシリーズで2連覇を達成。
一方、リアルスポーツにおいても2003年から日本でレーシングカートを始めたほか、母国ブラジルに帰国してからは四輪レースにも参戦しており、2017年にブラジルF3アカデミークラスでチャンピオンに輝くほか、2020年にはトヨタレーシングシリーズでチャンオピオンに輝くなど豊富な実績を持つ。
そのフラガ選手にeスポーツとリアルスポーツの共通点を尋ねてみると、「eスポーツはいろんなコースやいろんなクルマに乗れるし、大会では1日で3コースを使ったり、3回とも車種が変わったりするので、それぞれのスタイルに合わせなければならないので応用力が求められると思います」としたうえで、次のように語っている。
「eスポーツはかなり進化していてクルマの動きがリアルになってきました。100%同じではないけれど、コントロールの仕方は似ていると思います」とフラガ選手。
一方、eスポーツとリアルスポーツの相違点については、「リアルではタイヤのパフォーマンスの影響が大きいですよね。eスポーツではそこまで再現できていないので、タイヤの表面グリップなんかはリアルスポーツでしか体験できない。eスポーツは100%を超えるとグリップが一気に下がるけれど、リアルスポーツは100%を超えてもグリップの落ち幅が低いので、そのあたりのタイヤの使い方がリアルスポーツは違います」と語る。
さらに「eスポーツは個人戦で、セッティングを含めて自分で行いますが、リアルスポーツはチーム戦なのでメカニックやエンジニアと組んでセッティングを行うところが違います。eスポーツではセッティングやレース戦略を学ぶことができますが、リアルスポーツではチームとのコミュニケーション能力が重要になってきます」と付け加える。
そのほか、フィジカル面やメンタル面でも大きな違いがあるようで「リアルスポーツは振動とかさまざまなインフォメーションがあるので、クルマの動きを感じ取ることができるんですけど、その一方で横Gがかかってくるのでトレーニングをしないと疲れがきてしまう。リアルスポーツをやりだしてからトレーニングをしていますが、第3戦の鈴鹿では50ラップ以上も走っていたので疲れました。それに、リアルスポーツではクラッシュをしたら怪我をするリスクもあるので、バーチャルなeスポーツより恐怖心は強い。リアルスポーツならではの緊張感がありますね」と付け加える。
現在もeスポーツとリアルスポーツを並行してチャレンジするフラガ選手は「リアルスポーツではクルマでトレーニングする時間が限られている。とくにスーパーGTはテスト走行の時間が少なく、タイヤの種類も多いですからね。そのために、eスポーツを活用して、レース前にイメージトレーニングしたり、バーチャルで試して良かったことをリアルスポーツでトライししています」とのこと。
このようにeスポーツとリアルスポーツは、クロスオーバーしながらも“似て非なる世界”となっており、バーチャルの経験をリアルレースで活かすためには、それぞれの特徴を把握することがポイントとなっている。
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みんなのコメント
Gが無いからな
極端な話、ゲームとしてならマリカーとかの方がリアルさ求めてないぶん純粋にゲームとして楽しめる。
リアルが売りのゲームで高級スポーツカー運転するよりも、激安の中古軽自動車でも運転してた方がよっぽどGやら路面からの情報やら伝わってきて楽しいと思うけどな。