20世紀を代表する傑作大衆車
「ビートル」や「ケーファー」「カブトムシ」の愛称で知られるフォルクスワーゲン「タイプ1」は、フェルディナンド・ポルシェ博士の手により1938年にプロトタイプが完成してから2003年に製造を終了するまで、実に65年もの長きにわたって生産が続けられました。
【水平対向かよ!?】これが名車「ビートル」のエンジンです(画像)
累計生産台数は2152万9464台に達しますが、これはフォード「モデルT」の1500万7033台をしのぐ記録です。単一ブランドの生産記録としてはトヨタ「カローラ」の5333万9000台(2023年9月末現在)に抜かれましたが、モデルチェンジによらない単一モデルの生産記録としては四輪乗用車の最多生産記録を保持し続けています。輸送用機器全体で見ても、累計生産台数1億1000万台(2024年6月現在)のホンダ「スーパーカブ」に次ぐ台数です。
後継車の「ゴルフ」が1974年に登場したことにより、「タイプ1」は1978年にドイツ本国での生産は終えています。日本でも当時の正規ディーラーであったヤナセでは1970年代末に新車販売を終了していますが、2003年にメキシコ工場で生産を終了するまで、中南米で製造された車体が並行輸入車として国内販売されていました。
「タイプ1」は設計が古いこともあり、先進国の安全基準や排ガス基準を満たしていません。また、現在の基準で見るとキャビン、トランクともに狭いなど、スペース効率は悪く、2ドア車ということで使い勝手も良くありません。加えて、静粛性や乗り心地などの快適性でも劣っているほか、ハイブリッド車の普及により自慢の経済性も陳腐化しています。
しかし、今日でも世界的に人気が高く、多くの車両が愛好家の手で大切に維持されています。これは日本も同様で、外国製の旧車の中では、市井で見かけることが多いクルマです。最終モデルですら、ラインオフから20年以上が経過している「タイプ1」が、なぜいまだに人気を保っていられるのでしょうか。
フォルクスワーゲン「ビートル」人気の4つの理由
「タイプ1」がいまだ人気の理由にはいくつかありますが、そのひとつめとして挙げられるのが、魅力的で愛らしいデザインでしょう。実のところ開発を担当したポルシェ博士は、このクルマの設計をする際には、実用性と耐久性、安全性、経済性、生産性しか頭になかったといわれています。
彼は、製造コストの低減と生産性向上のために、鋼板の使用を最小限に留めつつ必要な強度を確保し、空気抵抗を小さくするために丸みの強いシンプルなデザインを採用しました。ただ、それにより、まるで子どもがお絵書きで描いたクルマのようなかわいらしいルックスとなり、独特のキャラクター性が生まれたのです。おそらくは「タイプ1」を愛する人たちは、そんな個性的なデザインに惹かれたのではないでしょうか。
人気の理由の2つめは、冷却水のいらない空冷エンジンをリアに配置した、丈夫でシンプルな構造です。1930年代にドイツの独裁者ヒトラーが公約として掲げた「国民車構想」に基づいて開発された「タイプ1」に課せられた開発要件は、「頑丈で長期間修繕を必要とせず、維持費が低廉であること」「大人4人の乗車が可能であること」「連続巡航速度100km/h以上」「14.3km/L以上の燃費性能」「販売価格は1000マルク以下(現在の邦貨換算で110万円ほど)」と非常に厳しいものでした。
これらを実現するために、ポルシェ博士は「タイプ1」を極めて合理的で簡素な設計としたのです。これは、新車時はもちろんのこと、製造から時間が経過した際に輝き出す長所でもあります。エンジンおよびギアボックスは4本のボルトを抜くだけで簡単に脱着でき、多くの整備作業はマニュアルさえあれば素人でもできるほど簡素です。
また、プロに整備や修理を依頼する場合でも、全世界どこの整備工場でも「タイプ1」なら入庫を断られる心配はまずありませんし、整備性の良さから工賃も安く抑えられるというメリットもあります。
古いといってもATあります
人気の理由の3つめは、走行性と運転のしやすさです。「タイプ1」は最高出力こそ60馬力ほどと控えめですが、軽い車体と相まって今日の交通環境でも必要十分な動力性能を備えています。また、パワステがなくともハンドルは軽く、後期モデルには「スポルトマチック」と呼ばれるセミATの設定がありますので、現代のクルマに慣れている人でも、少し練習すれば自在に運転ができます。
人気の理由の4つめは、パーツの入手性の良さとカスタムパーツの豊富さです。2000万台以上が生産された世界的なベストセラーだけに、現在でも「タイプ1」の部品は作り続けられており、古いクルマでありがちなパーツ欠品の心配がありません。
加えて価格自体も安価なことから、前述した整備性の良さと相まって維持費を安く抑えることができます。また、カスタムパーツも豊富で、年式が異なっても部品に互換性があることから、好みに応じてレトロ・ヨーロピアンな「ビンテージスタイル」にも、西海岸風の「キャルルック」にも、スピードパーツを用いて「レーシングスタイル」にも変幻自在に変化させることができます。
こうしたさまざまな長所を持つことから「タイプ1」は、現在でも多くのユーザーに愛され続けているのです。
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みんなのコメント
この記事を書く資格がない記者だね。
こんな者に記事を書かせるなよ、メディア・ヴァーグ!