Touring AERO 3
トゥーリング AERO 3
次世代高級車のインテリア素材はゴミから生まれる? ジャガー ランドローバーが開発する次世代の内装材とは
サロン・プリヴェで公開後、限定15台を製造
イタリア・ミラノを拠点とするカロッツェリア「トゥーリング・スーパーレッジェーラ(Touring Superleggera)」が、2020年9月23~26日に英国・ブレナム宮殿で開催されたサロン・プリヴェ(Salon Prive)において、フェラーリ F12 ベルリネッタをベースにした最新作「AERO 3」を公開した。6.2リッターV型12気筒エンジンを搭載するAERO 3は、ミラノのファクトリーにおいて限定15台がハンドメイドで製造される。
購入者が求めるカスタマイズに応じた価格となり、ドナー車(フェラーリ F12 ベルリネッタ)のファクトリー入庫後、6ヵ月以内に完成。厳格なクオリティテスト後にデリバリーされる。AERO 3には、走行距離無制限で2年間の保証が適用され、トゥーリング・スーパーレッジェーラが製造または改造したパーツの交換に関しては生涯保証される。
名車たちが纏ってきた“流線型”へのリスペクト
その佇まいは、「重量は敵であり、空気抵抗は障害である(Weight is the enemy, Air resistance the obstacle)」という、創業者のカルロ・フェリーチェ・ビアンキ・アンデルローニの理念を完璧に反映したものとなっている。
徹底した軽量化が進められ、高いエアロダイナミクスレベルが与えられた独自のフォルムが実現。トゥーリングらしい美しい流線型ボディを纏ったAERO 3は、空力効率、スピード、スタイルを兼ね備えたスーパースポーツとして、サロン・プリヴェでも高い評価を得ている。
AERO 3には、1930年代のアルファロメオ6C 2500、8C 2900 B、1950年代のディスコヴォランテによって刻まれた、歴史へのリスペクトが込められている。かつてコーチビルダーが採用した初期の風洞施設から生まれた前衛的な“流線型(ストリームライン)”からインスパイアされており、1939年にミッレ・ミリアで優勝したBMW 328ツーリング・ベルリネッタなどからも、ボディラインを踏襲している。
トゥーリング・スーパーレッジェーラのジェネラルマネージャーを務めるサルヴァトーレ・ストランチは、AERO 3の発表について以下のようにコメントした。
「非常に困難なスタートとなった2020年でしたが、このようなAERO 3のワールドプレミアを実現してくれた、トゥーリングのすべての仲間たちによる献身に心から感謝しています」
ディスコヴォランテ・シリーズ3番目のモデル
1930年代に流行した、流線型スタイルの現代的な解釈の代表格と言えるのが、トゥーリング・スーパーレッジェーラが2012年に発表した「ディスコヴォランテ(Disco Volante)」だろう。この“空飛ぶ円盤”は、アルファロメオとカロッツェリア・トゥーリングが共同開発した「1900 C52 ディスコヴォランテ」へのオマージュとして開発された。
2012年のクーペに続き、2016年には「ディスコヴォランテ スパイダー」がデビュー。今回、サロン・プリヴェで公開されたAERO 3は、そのDNAを引き継ぐシリーズ3番目という位置づけだ。
また、1938年のル・マン24時間レースに参戦した「アルファロメオ 8C 2900 B LMクーペ ベルリネッタ アエロディナミカ」へのオマージュも込められており、当時と同じレースナンバー“19”が配されている。
「トゥーリング AERO 3は、組織としての回復力、忍耐力、成功への意欲を示すものです。トゥーリング・スーパーレッジェーラの自動車部門全体に厳しい負担をかけた、数ヵ月間にも及んだ2020年の困難へのご褒美とも言える存在です。ワールドプレミアを終え、すでに3台がすでに販売されたことを心から誇りに思います」と、ストランチは付け加えている。
トゥーリングの伝統に則った流麗なフォルム
トゥーリングは、かつてのアルファロメオ C52 ディスコヴォランテから、昨年発表されたマセラティ・ベースの「シャーディペルシャ(Sciadipersia)」に至るまで、パフォーマンスとテクノロジーの最先端をいくクルマは時代を超えて優雅で洗練された存在になると証明してきた。そして、今回公開されたAERO 3もまた、その伝統を受け継いでいる。
20世紀半ばのイタリア・コーチビルディングの黄金時代にインスパイアされたAERO 3は、流れるような流線型の美しいラインが、エアロダイナミクスへのあくなき追求を続けてきたトゥーリングの個性を体現していると言えるだろう。
トゥーリングの伝統に則り、AERO 3では、角張った重苦しいデザイン要素を避け、緩やかで調和のとれた、しかし同時にはっきりとした輪郭を描く曲線を採用した。彫刻のようなボディサイドは、全体のフォルムにダイナミズムを与え、力強さを示唆。大きく筋肉質なボンネットは見る者にモータースポーツへの憧憬を掻き立て、爽快なパフォーマンスを予感させる。そして、全体ではトゥーリングの特徴である、プロポーションのバランスとタッチの軽妙さにも重点が置かれた。
リヤに設置されたレーシーなシャークフィン
エクステリアで最も特徴的なのは、F1マシンや耐久レースのプロトタイプレーシングカーですっかりお馴染みになった“シャークフィン”だろう。このバーティカルフィンは、1930~1950年代にサーキットで活躍したレーシングカーにも採用されているが、AERO 3でもトゥーリングのデザイン的な特徴を損なわず、その血統をより強く引き立てている。
トゥーリングのデザイン部門トップを務める、ルイス・デ・ファブリベッカースは、シャークフィンについて以下のように説明する。
「シャークフィンのアイデアは、ある意味、ちょっとした思いつきにより生まれました。しかし、キャビンのティアドロップ形状から自然に導き出されたように見えるはずです。そして、流線型の本質を最も純粋に表現しています。AERO 3では、このフィン自体に空力的な機能はありませんが、1930年代以降のエアロダイナミクスの伝統を思い起こすものです」
ファブリベッカースの言葉通り、トゥーリング・スーパーレッジェーラの個性は形式的なデザイン言語に囚われず、インスピレーションを重視する。その結果、ダイナミズムとエレガンスの間にある“妥協”とを超えて、エアロダイナミクスの概念を湛えたフォルムが完成した。
フェラーリ F12のコンポーネントをベースに開発
サロン・プリヴェで公開されたショーモデルは、ディスコヴォランテの1号車に倣い、エクステリアカラーに鮮やかなストラトスフィア・レッドを採用した。
コクピットは、ブラックのソフトファニッシングに加え、ポリッシュ・アルミニウム、ブラックマット・アルミニウム、マット・カーボンファイバーなどの異なるマテリアルを組み合わせた。鮮やかなレッドのフォグリッツォ・レザーと、イタリアの職人による上質なハンドワークが、このクラスのスーパースポーツにふさわしい快適さと贅沢さを強調する。
AERO 3は、ベースとなったフェラーリ F12 ベルリネッタから、スペースフレームシャシー、最高出力740ps・最大トルク690Nmを発揮する6.3リッターV型12気筒エンジンなど、すべてのコンポーネントを引き継いだ。トゥーリング・スーパーレッジェーラのエンジニアと職人たちにより、1台につき、のべ5000時間以上もの時間をかけて製造される。
品質管理に関しては、公道での実走の前にファクトリー内での機能検査とテストコースでの走行検査を敢行。機能検査ではパネルのアライメント、塗装やポリッシュの品質、ステッチや内装の仕上げなど、高い基準に適合していることが求められる。また、機能検査は様々な気候条件を再現した室内で行われる。
テストコースにおけるダイナミックテストでは、動力性能やブレーキなどの機能面に加えて、気密性、水密性、ノイズ、振動、ハーシュネスの制御などをチェック。もちろんトップスピード、ウェットハンドリング、荒れた路面での挙動なども含まれている。
【SPECIFICATIONS】
トゥーリング AERO 3
ボディサイズ:全長4800 全幅1976 全高1274mm
ホイールベース:2720 mm
車両重量:1645kg
エンジン:65度V型12気筒
総排気量:6262cc
最高出力:545kW(740ps)/8250rpm
最大トルク:690Nm
トランスミッション:7速シーケンシャル+パドルシフト
駆動方式:RWD
タイヤサイズ:前255/35ZR20 後315/35ZR20
最高速度:340km/h
0-100km/h加速:3.1秒
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