この記事をまとめると
■SIMゲームがどこまで実車に迫っているかをレーシングドライバー中谷明彦さんが解説
レーシングドライバーでも操れない! 運転が難しすぎる市販車3選
■「グランツーリスモ」では細かい設定が可能でほとんど現実に近い状況を再現できる
■「F1」シリーズは年間シリーズが戦え、また1レースに特化したレースチャレンジも可能
もはやグラフィックはリアルかCGかを区別できないレベル
ドライビングシミュレータとも言えるような高度なSIMゲームがeスポーツとして確立されている。グランツーリスモに代表されるような高度なソフトが人気を博し、FIA(国際自動車連盟)も承認するなど、ゲームとは言えないほどレベルが向上しているのだ。
こうしたSIMゲームがどこまで実車に近い動きを再現できているのか。プロのレーシングドライバー目線で解説しよう。
SIMゲームのソフトにはさまざまな種類が登場している。前述のグランツーリスモは、国産~外車、旧車からF1マシンまでダウンロードでドライブでき、富士スピードウェイや鈴鹿サーキット、筑波サーキットなど国内のメジャーコースに加え、ル・マンのサルトサーキットやニュルブルクリンク北オールドコースなどが収録されている。また、実際には存在していない架空のコースを創造し展開しているのも特徴だ。
リアルサーキット収録に当たっては実際にサーキットを訪れ、コーナーのR(半径)はもちろん路面のアンジュレーションやカント(斜度)などを細かく計測しデータ化している。周辺の風景も現実そのままに再現。そのため信頼度が高く再現性に優れているのだ。
近年は自動車メーカーがメディアの取材に貸し出す広報車両でのサーキット全開アタックを制限していることが多く、僕自身グランツーリスモ上で最新モデルのサーキット走行フィールを確認することもある。グランツーリスモでは車両データを自動車メーカーと緊密に連携して作り込んでいるので、コースだけでなく車両の再現性も高いのだ。
グラフィックも綺麗でキャプチャー画面では本物かグランツーリスモか判別するのも難しいレベル。
グランツーリスモで惜しいのは、レース形式プログラムが現実と大きく異なる点だ。インストールされているレースプログラムでは予選がなく、いきなりレースが始まる。カテゴリーや年代の異なる車両が混在して走るケースが多く、「おいおい、お前そんな速いマシンじゃなかっただろ」と思わず笑ってしまうことも。
ただ、オンラインでレース構築する際には、車両やチューニング、タイヤ摩耗、ダメージなど細かく設定することで、ほとんど現実に近い状況を再現できるのだ。オンラインの場合は通信状況でタイムラグが発生してしまうことがあるのは今後5Gの拡がりなどで改善されて行くのだろう。
事前にコースを走っておくとリアルのF1観戦で親近感が湧く
レースを主体としたソフトとしてはコードマスターズ社が開発しEAスポーツから発売されている「F1」シリーズがある。この製品はF1の公式アイテムとして販売されていて、その年の各サーキット、マシンが収録される。
2020~2021年はコロナ禍の影響でリアルなF1イベントが開催されなかったり、場所が変更になったりして現実の再現性は難しかったが、同社はアップデートでできる限りの対応をしている。「F1 2021」では、シーズン後半になって急遽開催された「サウジアラビアGPジェッダストリートコース」がリアルイベント直前にアップデートで更新され、関係者を驚かせた。初開催のサーキットなだけに、この「F1 2021」で予習してきたF1、F2のドライバーもいたはずだ。
このSIMゲームの場合、プログラムで年間シリーズが戦えたり、また1レースに特化したレースチャレンジも可能。僕は2017年に初めて手に入れ、毎年更新している。当初はシリーズ全戦を実際のカレンダーに沿って参戦し楽しんだ。
現実では叶えられなかったモナコGPのコースをF1マシンで走ることができ、スパ・フランコルシャン、シルバーストーン、鈴鹿サーキットなど、実際に走った経験のあるコースでは再現性の高さに関心させられた。このSIMゲームでコースやマシン特性を試してからリアルのF1を観戦すると、ドライバーがミスしやすいブレーキポイントやライン取りの難しいコーナーがわかり、親近度がグッと高まるのだ。
現代のF1チームは各社シミュレータを開発し、使用している。SIMテスト専用に元F1ドライバーと契約してテスト走行しセットアップを煮詰めるなど本格的で、これらは「ゲーム」とは言えない領域だ。
「F1」シリーズを試すと気になるのは視点が動かないことだ。視野が狭く、通常のモニター画面にはサイドミラーが映らない。ヘアピンカーブなどで立ち上がり方向を見たくても、マシンが向く方向しか表示されない。
また、高速でアプローチするコーナーのクリッピングポイントなどを現認しにくい。画像の解像度が全画面同一なので、一見綺麗に再現されているが、ピンポイントで状況を確認し辛いのだ。レーシングドライバーの動体視力は非常に優れていて300km/hで走っていても路面に落ちている小さなボルトと石ころを判別できる。SIMゲームにはそうしたピンポイントの解像度が足りていない。
レースモードではレベルが選択できる。0から100のレベルで設定。0だと誰でも優勝でき、100にすると何をしても勝てない。スピンした時にダメージを最小限に収めすぐにコース復帰できるように対処操作しても、必ずガードレールに面してストップし進行方向と逆向きにしか復帰できないようなプログラムがされて難易度を高めている。
リアルなレースを経験してきたからわかるこうした意見をどれくらいSIMゲームに反映できるかが今後の課題だろう。
SIMゲームを行うためにドライビングSIM用コクピット製品も数多くある。簡単なシートとステアリング、ペダルユニットを組み合わせたものから、4軸、6軸で振動やGフォースを発生させるもの、大規模な敷地を縦横無尽に走らせ現実に近いGを発生できる自動車メーカー系のSIMなどだ。また、実車を使ってベンチ上で行うものもある。
これまでのレベルだとシートが「動く」コクピット製品はあまり具合が良くない。シートを前後、左右に動かし、地球の1Gの範囲でGを再現する場合、たとえば加速方向に1Gを再現しようとするとシートを天井に向け90度傾けることになる。理論上はそれで体がシートに1Gで抑えつけられるのだが、その過程でシートがピッチング方向に回転している。回転するようなピッチングモーメントは実車では発生しないので違和感が強い。横Gでは横方向に傾けることになる、そこでもロールモーメントが発生し実車と異なる。タイヤの転動するバイブレーションや上下動を再現する程度の方が現実的だ。
レーシングドライバーはさまざまなG変化や振動に晒されるが、じつはそれらを無視して重要なわずかな変化に特化して感じ取るように努力している。その重要部分がなく、無視していい部分だけを無理やり再現しようとしているのが現状SIMの問題点だろう。
また、レースモードでは競争相手のドライバーがいかなるアクションを起こすのかを予測し対処するがSIMゲームでは予測不能(現実離れした)な動きで難易度をあげている。AIが進歩することで、より現実的なレースモードに仕上げられることができるはずだ。
今後、SIMゲームの進化はさらに発展するに違いないし、期待している。
© 2017 Sony Interactive Entertainment Inc. Developed by Polyphony Digital Inc. “Gran Turismo” logos are registered trademarks or trademarks of Sony Interactive Entertainment Inc. ※「PlayStation」は株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標です。
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